先週土曜日にmedical Tribune主催の糖尿病の講演会に行ってきた。申し込んでいなかったが、前に講演会に出席しているので、参加者が少ないと参加鉦が送られてくる。テーマは「グルコース変動によるリスクとその治療」で講師は東北大学病院腎・高血圧・内分泌科准教授の小川晋先生だった。
HbA1cは「持続的高血糖の指標」で、「血糖値の高さ」×「高かった時間」で決まる。グルコーススパイク(GS=食後高血糖)があっても、すぐに低下するとHbA1cは高値にはならない。
食後高血糖をきたさないためには、理想的にはHbA1c7%に相当する食後血糖180mg/dl未満にしたいが、現実的には20mg/dl未満と言われた。(他の先生の著書ではグルコーススパイクは食後血糖140~150mg/dl以上が相当するらしいが)
細小血管障害(網膜症、神経障害)はHbA1cが上昇すると(指数関数的に)増加するが、大血管障害はHbA1cとあまり関係していない。すなわち、HbA1cだけを低下させても予防効果は見込めない。
正常血糖・IFGと比較して、IGT・糖尿病では大血管障害が増加する。(IFGは空腹時血糖110~125mg/dlで2時間値は140mg/dl未満、IGTは空腹時血糖110mg/dl未満で2時間値は140~199mg/dl)
持続的高血糖(HbA1cと関連する病態)は細小血管障害(網膜症、神経障害)をきたし、グルコーススパイク(=食後高血糖、HbA1cと関連しない病態)は大血管障害をきたす。腎症は前者による間質虚血と後者による間質障害によって起きる。
グルコーススパイクは最も血管内皮細胞を障害(アポトーシス)して、その障害を引き起こす物質のひとつがメチルグリオキサール(MG)である。グルコーススパイクが高く尖っているほどMGが蓄積する。血中MG高値の糖尿病では腎血管障害の進行が5年経過すると顕在化する。(このあたりが演者の論文)
グルコーススパイク(GS)による臓器障害の治療には、1)GS抑制治療、2)MG抑制治療(産生低下と分解促進)がある。MGは血圧を上昇させるが、ARBは糸球体硬化を抑える作用がある。
ビグアナイドは血糖低下作用ば弱いが、MG増大を抑制することで心血管イベントを低下させる。グリニドとα-GIでグルコーススパイクを下げることができる。グリニドは内因性インスリン分泌(第1相)を促進して、グルカゴン分泌を低下させる(インスリンと同時に分泌されるZnがグルカゴンを抑制する)。
レパグリニドはグリニドの中では作用時間が長く、ミチグリニドとグリクラジドの中間の動き方をする。ビグアナイドとグリニドはMGを低下させる。グリニドは毎食直前1日3回とアドヒアランスが悪いが1日1回や1日2回でもHbA1cをある程度下げることができる。
共催は大日本住友製薬なので、販売しているレパグリニド(シュアポスト)・メトホルミン(メトグルコ)・グリクラジド(グリミクロン)をきっちり宣伝していた。
要はHbA1cだけ下げるのではなく、グルコースパイク(食後高血糖)も治療する必要があるということ。グルコーススパイクは糖質制限によりdrug freeで充分達成できると思うが、糖尿病学会の食事療法はカロリー制限のみで変わらない。