なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

若い男性の筋肉痛

2019年09月30日 | Weblog

 内科新患を診ていた先生から、全身筋肉痛の24歳男性の診察を依頼された。内科再来の診察が終わってからになった。

 痛みのために足を引きづるようにして診察室に入ってきた。先週の金曜日(3日前)に、まず両側下腿の痛みを自覚した。次の日には両側上肢・下肢それに体幹部、つまり全身の筋肉痛になった。

 土曜日に外科系の救急外来を受診した。38℃台の発熱もあったが、体温測定して始めたわかったもので、患者さん自身は発熱を自覚していなかった。アセトアミノフェンの処方を受けていた。

 鼻汁・咽頭痛・咳はない。嘔気・腹痛・下痢はない。明らかな表在リンパ節腫脹はない。上肢・下肢・肩・肩甲部の把握痛があり。それに、なぜか鼠径部の陰茎の両脇にも圧痛があった。

 白血球6100(好中球66.1%)・CRP2.9と軽度の炎症反応上昇を認めた。肝機能は正常域だった。CKが111と正常域にあるのが、むしろ奇異な感じだった。何故上がらないのか。

 何らかのウイルス感染によるのだろか。心雑音も敗血症性血栓もないが、念のため血液培養2セットを提出した。

 食欲は良好だった(あり過ぎるくらいと)。入院しても経過観察になるとお話すると、自宅静養で様子をみるという。NSAID(ロキソニン)内服で3日後に再度受診とした。

 

 昨日は布施明さんのコンサートに行ってきた。ご本人はニューアルバムの曲を聴かせたいようだが、ファンとしては昔の定番ヒット曲が聴きたい。当方は、「カルチェラタンの雪」・「めぐり逢い紡いで」が聴けて満足。12月で72歳になるというが、声量はものすごい。

 

(後日記)

 予約を入れていた3日後の木曜日に再受診した。もう診察室に入ってくる様子が違っていた。まったく普通に歩いている。月曜日に筋肉痛でそろそろと歩いていたのとは全然違う。検査ではCRPが0.7と低下していた。CKはやはり正常域だった。

 やはり何らかのウイルス感染でいいのではないか。根拠はないが。患者さんはさらに経過をみて受診するほどではないというので、これで終診にして、気になる症状がある時に受診とした。

 それにしても四肢の筋肉痛と把握痛もあるのに、なぜCKが上昇しないのだろうか。草むしりやスポーツをした翌日の採血でもCKが上昇しているのをよく見かけるので、敏感な検査だと思うが。

 

 

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疲れる日直

2019年09月29日 | Weblog

  昨日は内科日直だった。内科入院は4名。地域の基幹病院が満床ということで、ふだんあまり来ない地域からの救急要請もあった。

 76歳男性は認知症・寝たきりで施設(当地から3つ目の町)に入所していた。高熱・血圧低下で救急搬入された。酸素飽和度低下と痰のからみから誤嚥性肺炎かと思ったが、肺気腫はあるが肺炎像はなかった。

 膀胱襞が厚く、両側尿管が拡張して両側水腎症を呈している。前立腺肥大もあるが、膀胱機能が低下しているようだ。尿路結石はなかった。尿が混濁というか、膿そのものだった。血圧は80mmHg台で心拍数120/分とショックバイタルだった。尿路感染症からの敗血症性ショックだ。

 尿培養・血液培養2セットを提出して、抗菌薬を開始した。急速補駅に反応しないので、ノルアドレナリン点滴静注も開始した。今朝は開眼してこちらを見るようにはなった。血圧は90mmHg台でまだ低い。

 

 72歳男性が70mmHg台の血圧低下で救急搬入された。地域の基幹病院神経内科に脳梗塞後遺症で通院している。消化管出血による貧血も考えたが、貧血はまったくなかった(搬入時、結膜は貧血?だった)。

 胸痛はないが、心電図がV2-6で陰性T波が目立つ。Ⅱ・Ⅲ・aVFでST上昇様の形をしている。昨年腎癌の手術を大学病院で受けた。その際循環器内科で術前の精査がされたそうだが、心臓カテーテル検査まではしてないようだ。2年前に当院で心電図検査が行われていて、その時からある変化ではあったが、ちょっと目立つ。

 降圧薬が2剤処方されていて、普段の血圧は120くらいだそうだ。トロポニンが若干上昇しているが、決め手に欠ける印象だった。搬入後に点滴をしても血圧が90~100くらいでなかなか上がってくない(臥位)。エコーを当ててみたが、心筋が厚く左室腔が狭いような印象があったが、動きは均一に思える。よくわからない。

 基幹病院に診てもらえるか訊いたところ、満床ですと言われた。救急搬入は全部断っていますという。そのまま当院で経過をみるのもためらわれて、心臓血管センターのある専門病院に連絡してみた。幸い引き受けてもらえて、救急搬送した(結果はずれの症例でもまず紹介して下さいとい方針の病院で、助かる)。

 搬送中の救急隊から連絡が入って、点滴速度を速めても血圧が90弱くらいだという。当院からの点滴がなくなったので、救急車内の点滴(ラクテック)をつないでもらった。

 今朝循環器科医が日直で来ていたので、訊いてみた。肥大型心筋症でしょうという。閉塞性かどうかはわからない。冠動脈の評価も必要だから、搬送でよかったのではということだった。

 今日も内科当番だが、内科入院があれば明日までの指示は出しておきますと言ってくれた。

 

(後日記)

 搬送した心臓血管センターのある専門病院から返事が来ていた。緊急で心臓カテーテル検査を行って、右冠動脈遠位部に高度狭窄病変を認めて、同部位に薬剤溶出性ステントを留意したそうだ。経過は順調で、退院後は通院している当地域の基幹病院循環器内科の外来に回されていた。結果的に「はずれ症例」ではなかったので、搬送してよかった。

 

 

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腹壁膿瘍

2019年09月28日 | Weblog

 昨日施設から紹介された肺炎の99歳女性が紹介されて、救急室で入院の入力をしていた。救急当番でもない循環器科医が救急室にいて、外科医に患者さんを紹介していた。どうしたのかと、救急室の看護師さんに訊いてみた。

 心不全の増悪で入院している母親(84歳女性)の介護調査のために、息子さん(56歳男性)が病棟に来ていた。ふらいて顔面蒼白だったので、急遽救急室に降ろして母親の担当医が診察したという経緯だった。ここ1週間は水だけ飲むような生活だったらしい。

 右腹部に発赤・膨隆があり、腹部造影CTで見ると、かなりの大きさの腹壁膿瘍が形成されていた。半年前の2月に自分で気づいていたが、そのまま放置しているうちに増大したそうだ。

 白血球11700・CRP 23.0と上昇している。呼ばれた外科医が切開・排膿して、外科病棟に入院となった。

 

 これは糖尿病かなと思って画面で確認すると、血糖172mg/dl(ほとんど空腹時)・HbA1c10.9%と確かに糖尿病があった。治療はしていない。こちらは内科で担当しましょう。

 

 

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当直お疲れ様です

2019年09月27日 | Weblog

 昨夜の当直は外科医だった。受診数は11名とそう多くないが、準夜帯・深夜帯にずっと救急搬入・受診があった。地域の基幹病院循環器内科に通院している患者さんが自宅で心肺停止になっての搬入も含まれていた(死亡確認、検死になった)。

 うまくいくと水曜日の外科医の時のように、準夜帯に3名で深夜帯受診ゼロのような日もあるので(まれだが、その日内科当番だった当方も助かった)、当直3回分くらい働いたのかもしれない。さらに外科に入院させた患者さんの治療が続く。当直明けの休みもとれず、午後から手術に入るそうだ。

 病院に来る途中に、ラジオで昨夜車同士の衝突事故があり、1名が死亡して2名が入院になったというニュースを聴いた。当院には何名搬入されたのだろうかと思いながら病院に来た。

 3名の患者さんは3か所の病院に救急搬送になっていた。地域の基幹病院に搬入された方が骨盤骨折(出血性ショック)で亡くなった。県境での事故なので、1名は他県の基幹病院(600床の大病院)に搬入された。当院に搬入されたのは乗用車の助手席に乗っていた50歳女性で、腹痛を訴えていた。

 搬入時の腹部造影CTでは異常がなかった。腹膜刺激症状はなく、貧血もない。外科入院で経過観察となったが、入院後も腹痛が続いていた。

 再度腹部CTを行うと、腹腔内~骨盤腔内に液体貯留(出血?)を認めた。末梢血で貧血はないという。午後から腹腔鏡下の手術を行って、観察結果で治療を決めることにしたそうだ。お疲れ様です

 

 内科はこれといった重大なことはなく、当方の担当患者さんは今日5名が退院する。集中しているので大安かと思ったが、赤口だった。単に週末だから選んだだけ?。

 

 先週末から、杉山裕章先生の「熱血講義!心電図」(医学書院)を読んでいた。narrow QRS tachycardiaとwide QRS tachycardiaが詳しく記載されているが、後者は難しい。8割はventricular tachycaidia(VT)として、そこに種々のVTらしさを加えてVTの確率を上げていくというが、できそうもない。

 熱血講義! 心電図:匠が教える実践的判読法

 

 

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地味に終末期をみる

2019年09月26日 | Weblog

 地域の基幹病院外科から転院した93歳女性は、右内頚静脈から点滴が入っていた。てっきりCVカテーテルと思ったが、違っていた。

 普通の末梢血管様のサーフロー針を刺しただけだった。末梢用の点滴だけしか入れられない。というか、これは何日くらいもつのか。いつ亡くなってもおかしくありませんといわれていたそうなので、これで充分ということなのだろう。

 心肺停止の患者さんが救急搬入された時に、血管確保として末梢血管用のべニューラ針に生食入りの注射器をつけて、大腿静脈に刺すことはあるが、それ以外で末梢血管用の針をCVラインで使用する血管に刺したことはなかった。

 家族と相談の上、高カロリー輸液まではすることにしていた。家族の希望もあるが、ラインがそのまあ使えると思ってしまったのもある。今日CVカテーテルに入れ替えた。

 末梢用の点滴で少量で経過をみて、お看取りするのが適切なのかもしれないが。

 

 また今日も基幹病院呼吸器内科から、小細胞肺癌・多発性骨転移の75歳男性が転院してきた。これ以上の癌治療はできず、緩和ケアのみの方針となっていた。体調がよければ自宅退院ということだったっが、娘さんの話では一人暮らしであり、自宅退院はない。

 同院の緩和ケア病棟に申し込んでありますとも言われたが、そもそもそちらは、オピオイドの調整で2週間の入院しかできない。地域医療連携室にどうなっているか問い合わせたところ、基本的にはベットが混んでいるので、特に対応に困ってなければ入棟はありません、という返事だった(特に困ってはいない)。

 家族(娘さん)はとにかく入院を継続できればいいということだった。さすがに当院もある程度の期限はあるが、転院後の食事摂取量の少なさと痩せ細った身体をみると、当院で最期までになりそうだ(一応療養型へは申し込むが)。

 

 いずれも当院向きの患者さんであり、最期までみる、あるいは療養型病床のある病院に行くまでの繋ぎという役割になる。当方の年齢的にも、そういう診療がちょうど合っている。地味すぎて、若い先生には勧められない。

 

 札幌徳洲会病院救急科の増井伸高先生が、「心電図ハンター」に続いて、「骨折ハンター」(中外医学社)を出されたので早速購入した。骨折を直接診る機会はなくなっているが、著者のファンなので著書は収集することにしているから。この先生はどこまで伸びていかれるのだろうか。

 骨折ハンター レントゲン×非整形外科医

 

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ウイルス感染とは思ったのですが・・・

2019年09月25日 | Weblog

 先週の金曜日に内科医院から高熱の17歳男性が紹介されて、内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が対応した。その日は帰宅して連休明けに再受診予定としていた。

 発熱・食欲不振が続いて、土曜日に救急外来を受診した。日直の先生(バイトの外部医師)が診察して、家族の希望もあり、入院となった。ちょうど内科当番の若い先生が担当になった。

 先週の月曜日からの発熱になる。初日は37℃台だが、2日目からは39℃台になった。発熱以外の特異的な症状はなく、食事摂取量は低下している。

 咽頭の症状・所見はなかった。白血球2400・血小板12.8万と白血球減少・血小板減少があり、CRPは4.4の軽度上昇、軽度の肝機能障害(AST 61・ALT 43・ALP 244・γ-GTP 40・LDHv405・総ビリルビン1.3)を認めた。リンパ球の比率は21%で異形リンパ球0%だった。腹部CTで肝脾腫がある。

 伝染性単核球症を考えたくなる症例ではある。昨日相談された。訊かれたのは、抗菌薬を入れてしまったのですが、まずかったでしょうかというものだった。

 ウイルス感染症だろうとは思ったそうだ。入院後も翌日も40℃の発熱だったので、感染巣は確定していないが抗菌薬を開始していた。血液培養2セットは提出していたので、その点は良かった。

 敗血症性塞栓もないが、心内膜炎の疑いもないとはいえないので、培養提出後ならば許容されるのではないか。むしろ3連休中だったことが大きいかもしれない。月曜日の入院だったら、他の先生方にも相談できるし、1日1日いっしょに経過をみていける。

 

 昨日(発症後1週間)には解熱傾向があり、食事摂取も改善していた。白血球3700・血小板16.7万と軽快して、2日後に6.4まで上がったCRPも3.5になっていた。異型リンパ球5%だった。肝機能はほぼ同程度だった。臨床的には明らかに改善している。

 HBV抗原・HCV抗体は陰性で、IgM-HBc抗体・IgM-HAV抗体・IgA-HEV抗体、EBV・CMV感染のマーカーは外注なので、まだわからない。咽頭所見に乏しいが、年齢的にはEBVだが、全部陰性で「名もなき夏風邪ウイルス」になるかもしれない。

 感染症の先生から聞いた話では、「まったく分からない時は血液培養2セットなど培養検査を提出したうえで、セフトリアキソンで経過をみる」、というのがある。

 緒事情をかんがみて、抗菌薬使用は絶対ダメだったとはいえない、と答えた。ただ、EBV感染だからABPC/SBTの使用はまずい。幸い発疹は全く出ていないが。

 さて正解は何だろう。

(後日記)

 EBV-IgM抗体偽陽性(±)・EBV-IgG抗体陰性・EBNA陰性で、微妙だがEBV感染のようだ(再検しないと確定できない)。CMVは未感染で、肝炎のマーカーはいずれも陰性。 

 

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beak sign

2019年09月24日 | Weblog

 三連休は珍しく病院から連絡がなかった。誤嚥性肺炎で入院していた96歳女性は今日の早朝から血圧低下があり、指示の点滴を開始していて、ちょうど病院に来た時に連絡が来た(なんとか復活)。

 日曜日に日直だった内科の別の先生は、3名の入院を入れていた(2名は肺炎で1名は腎盂腎炎)。腸閉塞だった66歳女性は外科に回して緊急手術になった。

 子宮筋腫の手術既往があり、腹部CTで中等量以上の腹水を認めた。単純CTなので、造影不良域やwhirl signはわかりにくいが、beak sign(鳥のくちばし状の腸管の急峻な閉塞)を認めた。

 

 

 今日は地域の基幹病院外科から、93歳女性が転院してきた。先週外科医から連絡が来た時に聞いたところでは、お看取りでいいということだったが、家族と話をするとそうでもなかった。

 もともとは閉鎖孔ヘルニアで手術をしている。その後癒着性腸閉塞をきたして、入退院を繰り返していた。今回も同様の入院だったが、経口摂取は難しくなり、末梢用の点滴で継続して最終的にはDNARです、という話だった。

 長女さんの話では、できるだけ生きていてほしいという。2か月後に長男の孫が結婚するので、できればそれまで生きていてほしいと具体的な目標も出た。

 基幹病院は救急病院であり、長くは入院できないのはわかっているというが、当院でしばらく過ごしたらできれば戻りたい(住所的には近い)そうだ。それは難しいと思いますと伝えた(不可能です)。

 ということは、高カロリー輸液で維持するしかない。幸いに、末梢のラインがとれなくて挿入したらしい右内頚静脈からCVカテーテルがあるので、そのまま使用できる。高カロリー輸液で安定すれば、療養型病床のある病院と交渉して転院待ちとする。

 外科から転院は珍しい、というか初めてかもしれない。地域医療連携室から「看取り係り」として当方への紹介を勧められたのだろう。

 

 三連休を休ませてもらったが(1日は東京のPOCUSセミナー)、今週はセミナー・医師会の会議があり、週末の金土日と内科当番なので、忙しくなりそうだ。

 

 

 

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血糖高値だけのはずが

2019年09月23日 | Weblog

 土曜日に医学書院本社で開かれたPOCUSのセミナーに行ってきた。呼吸器・腹部・循環器の各分野のレクチャーとハンズオンで、計5時間のなかなか充実した内容だった。エコーはポケットエコー活用セミナーなので、GEヘルスケアVscanだけを使用した。(WiFiで大きな画面に表示されたが、途中から不具合でVscanの画面だけを見るようになった)

 病院では内科用のエコーがなく、使用する時は救急外来か外科病棟から借りて来るしかなかった。院長が不憫に思ったのか(?)、内科用にVscanを買ってくれたのでちょうどよかった。聴診器のように使いこなせるようにしたい。セミナー代は8000円と安かったが、Vscanの宣伝を兼ねるからだろう。 

 医学書院本社は文京区本郷で水道橋駅から歩いて10分くらい。東京駅から中央線で行けるので便利だ。立派なビルで、たぶんこれまで医学書院の本は100万円以上購入しているので、感慨深く見てきた。

 

 水曜日に隣町の町立病院から血糖高値の90歳女性が紹介されてきて、内科の若い先生が診察していた。

 そちらの病院に糖尿病・高血圧症で通院していて、今年の4月まではHbA1cが6%台だった。6月にHbA1c7.8%まで上昇したが、ジュースなど甘いものは控えましょうというくらいの食事療法でみていたそうだ。

 今回は食後血糖618mg/dlまで上昇して、HbA1c9.5%だった。口渇・多飲・多尿はあるが、意識清明で食事摂取もちゃんとできている。尿ケトン体は陰性。高浸透圧高血糖症候群とも言い難い。

 画像では膵癌は指摘できなかった。CEAは正常域・CA19-9が軽度上昇で、膵癌は今のところ否定的だった(要再検)。血中Cペプチドと抗GAD抗体の外注検査を提出した(緩徐性進行Ⅰ型糖尿病のチェック)。

 眼科(当方の同級生)に通院していて網膜症の問題はなかった。入院してインスリン強化療法が初期量から開始された(計1日12単位)。DPP4阻害薬も併用する。あとはインスリン量を調整して、年齢を考慮して適切な範囲に調整する。

 実は、この患者さんは7月末から9月初めまで、胸椎圧迫骨折で当院整形外科に入院していた。入院時検査ではHbA1c9.2%だったが特に内科に相談はなかった。かかりつけの病院から糖尿病薬が処方されていなかったので、気にしなかったのだろうか(内科で軽度の骨折を見逃すのといっしょ?)。

 

 入院後、血糖コントロールだけのはずが、翌日に心窩部痛を訴えた。炎症反応上昇と肝機能障害を認め、腹部エコー・CTで胆嚢結石・胆嚢炎と診断された。次の日には腹痛が軽快したが、肝機能障害が悪化した(胆道系酵素上昇が目立つ)。総胆管結石が疑われたが、MRCPでは胆道系に異常はなかった。

 手術を考慮して外科に転科になったが、十二指腸の傍乳頭憩室があり、Lemmel症候群と判断された。胆道系の内視鏡治療ができる地域基幹病院消化器内科に依頼して、連休明けに転院予定となっていた。

 

 

 

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絞扼性腸閉塞(腸捻転)

2019年09月22日 | Weblog

 水曜日に救急室(点滴をする処置室の隣りにある)で急性腎盂腎炎の85歳女性の抗菌薬を入力していた。救急の診察室に消化器科医がいた。急性腹症で受診した26歳女性の指示を出していたのだった。

 4月から精神科クリニックに通院しているそうだ。自称「うつ病」ということだが、年齢的には違うのかもしれない。この既往歴で、精神的な要素が大きいのではという先入観が入ってしまう。

 4日前に腹部膨満感で地域の基幹病院を受診して、便秘として下剤が処方された。2日前にも同院を腹痛で受診して、内視鏡検査で逆流性食道炎と診断されている。(結果がわかってから言うと、おそらく軽度に発症し始めていたのだろう)

 消化器科医は最初七転八倒の様子だと表現したが、当初はヒステリーではないかという印象をもっていたようだ。動いてしまって画像検査もできない状態だったが、鎮痛薬(ソセゴン)や安定剤(アタラックスP、ミダゾラム)を使用して、やや落ち着いたところで、検査を行った。

 単純CTで腸管が引き伸ばされたように描出されて、造影CTが追加された。腸管が渦巻いていて、造影された腸間膜動脈がぐるぐるとwhirl signを呈している。絞扼性腸閉塞(腸捻転)だった。

 外科で緊急手術になった。 後で手術した外科医に訊くと、上行結腸が後腹膜に固定されておらず(ぶらぶらしていたと表現)、腸管が捻転していたという。整復だけで腸管切除には至らなかった。

 じっとうずくまるのではなく、動き回ったという表現の仕方にはキャラクターが反映された印象はあるが、これは確かに激痛だったはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

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薬剤熱

2019年09月21日 | Weblog

 水曜日に内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)に相談された。先週の土曜日に85歳女性が肺炎で入院していたが、入院後も熱が続いているという。

 両側肺の背側胸膜直下に間質性肺炎の像があるが、間質性肺炎の増悪ではなく、細菌性肺炎の併発として治療していた。喀痰培養で有意な菌は出なかった。抗酸菌塗抹は陰性。尿中の肺炎球菌とレジオネラの抗原は陰性だった。市中肺炎として、セフトリアキソンを開始していた。

 

 入院後も38~39℃の発熱が続いていた。肺炎特異的なマーカーとしての酸素飽和度や食事摂取状況なども同程度で変化はなかった。入院時と治療後の白血球数とCRPも横ばいだった。やはり痰は出ないそうだ。

 まずもう一度画像を評価することにした。胸部X線、さらにCTも撮り直してみた。悪化はしていないようだ。条件の違いはあるが、何だか少し軽減しているようにも見える。ここからどうするか。

 間質性肺炎としての悪化でもない。細菌性肺炎で、セフトリアキソンが効かない起炎菌の可能性はどうか。施設入所者でもないし、直近の入院歴もないが、細菌性肺炎として治療を強化するとすれば、ゾシンかカルバペネムになる。

 非定型肺炎でないとは言えないが、この年齢でマイコプラズマもない。クラミドフィラは単独での肺炎はないのではと言われているので、細菌性併発していて、その部分が治らないという可能性はある。尿中抗原で引っかかる血清型1型以外のレジオネラ肺炎の可能性もあるが、もっと重症だろう。呼吸器外症状・所見もない。

 木曜日に呼吸器外来に来てもらっている先生(大学病院からバイト)に相談した。すると、肺陰影として間質性陰影は変わりなく、浸潤影自体はむしろ軽減している診断された。

 高熱時の脈拍数の増加がみられないこと(比較的徐脈、まあ数は徐脈ではないが)、高熱の割に比較的患者さんが元気であること(比較的元気)、CRPが高熱にもかかわらず上昇しないこと(比較的低いCRP)、などからセフトリアキソンの薬剤熱では、と言われた。

 言われた瞬間、「あ~、なるほど」と納得した。それですべて説明できる。セフトリアキソンを中止して、βラクラム以外ということで、クラビット(レボフロキサシン)への変更を勧められた。

 次の日からあっさり解熱して、確かに薬剤熱だった。

 

 

 

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