なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

外で倒れていた

2017年05月31日 | Weblog

 内科外来(再来)を診ていると、救急当番の神経内科医から連絡がきた。60歳代後半の男性が、自宅(アパート)の外で倒れているのを市の職員が発見して、救急搬入されたそうだ。いつから、どのくらいの時間倒れていたかはわからない。筋原性酵素が上昇していて(CK9000)、炎症反応も上昇している。肺炎などの感染症らしさははっきりしない。血小板減少と軽度の貧血(大球性)もあった。長く倒れていたことによる筋肉の障害か、炎症性疾患があるのかわからないという。大至急ではないというので、外来が終わる昼前に診に行くことにした。

 もともと精神遅滞のある方だった。10数年前に事故で外傷性くも膜下出血をきたして、脳外科で手術を受けた既往もあった。点滴しているうちに意識も改善していた。頭部CT・MRIと検査されていたが、陳旧性脳梗塞のみだった。簡単な会話はできるようだ。痛いか痛くないかという、2択の質問を繰り返すような会話になる。

 当院の皮膚科に尋常性乾癬で通院していて、確かに全身に皮疹がある。皮膚科医も診に来たが、いつもと同じということだった。入院で点滴して経過をみることにしたが、外注検査(抗核抗体・抗ARS抗体)も追加した。

 市の職員の話では、兄弟姉妹はいるらしいが、かかわるのを拒否しているので、全面的に市でお世話しているそうだ。生活保護を受けているが、そのお金を義理の兄弟が使い込んだこともあったという。入所できる施設を探しているが、まだ決まっていない。病棟の看護師さんからは、まずシャワーいいですかと訊かれた。失禁していたものあるし、シャンプーしたくなる髪だった。皮疹と多発した擦過傷が混ざって、すごい外観になっている。

 昨日またまたMRさんに、社内向けに糖尿病の話をしてほしいと頼まれた。これで3社目になる。前は、「糖尿病専門医に頼んだらいいんじゃないですか」、と断っていた。以前に頼んで、受けてくれた専門医もいて、忙しくてできないと断った専門医もいたそうだ。

 「糖尿病も診るという立場なので学術的な話はできない」、と答えたが、一般医の考えを話してくれればいいという。学位論文の中に膵島の分布の研究もあったが、単なる組織構築で病気の研究ではなかった。まあ膵臓を扱っていたので、消化管の先生方よりは糖尿病になじみはあるが。2か月の猶予をもらって、引き受けることにした。

 

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胃癌と肝癌

2017年05月30日 | Weblog

 先月始めに、地域の基幹病腫瘍内科から70歳代前半の男性が紹介されてきた。胃癌術後再発・多発性肝転移・癌性腹膜炎で、緩和ケアをよろしくという依頼だった。体力・食欲が低下してきていた。

 それでも、まだ元気がありそうに見えた。患者さんも入院する気はなく、まずこちらの先生に挨拶に来ましたと言う。実際、紹介先の腫瘍内科の(最後の)外来予約が入っていた。

 一昨年、その病院の外科で進行胃癌と診断されて、胃全摘術を受けた。昨年春に多発性肝転移と腹水(癌性腹膜炎)と診断された。抗癌剤治療は無理と言われたそうだが、患者さんが強く希望して、抗癌剤治療を受けたそうだ。1年以上もちこたえたので、効果があったのだろう。

 今月初めに外来に来て、CT検査をした。胸水と腹水の増加を認めた。利尿薬を増加して、ステロイドも追加していた。次回は入院かなと予想した。

 先週患者さんの奥さんから、地域医療相談室に相談があった。以前から対応に困っていたそうだが、患者さんが自宅で物を投げつけたりしているという。しだいに体力が低下しているのが自分でわかるのでイライラしているようだ。患者さんに入院する気があれば、入院でみますと答えてたが、予約日まで様子をみると言ってきたそうだ。

 今日は、患者さんから入院したいと希望があったので、そのまま入院とした。かなり理屈っぽい方で、病棟の看護師さんが対応に困るかもしれない。奥さんは、親戚も含めてここ2年間腫れ物にさわるように対応してきて、疲れ果てたと言っていた。ここまで気を使ってもらって幸せなのではとも言う。当院入院では本格的なホスピスのような対応はとてもできないが、預かってもらうだけでいいという感じだった。

 肝癌で緩和ケアの70歳代後半の女性も今日が予約日だった。今月初めに大学病院腫瘍内科から転院してきたが、自宅退院の希望が強く、退院にしていた(最後のチャンス)。入院時にはなかった黄疸が見られて(検査値が全体に悪い)入院を勧めたが、点滴してもらって今日は帰るという。2週間後の予約は入れたが、家族にはそこまでもたない可能性が高いので、状態が悪く入院する気になったらその前に受診するよう伝えた。

 

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貧血~大腸癌

2017年05月29日 | Weblog

 昨年夏に、80歳代後半の男性が倦怠感で内科クリニックから紹介された。血液検査では貧血があった。腹部CTで盲腸の腫瘍が左側に進展してS状結腸に浸潤していた(逆の可能性もあるが)。

 診断を確定しようと、大腸内視鏡を勧めたが、拒否された。当院での治療も、かんセンターへの紹介も拒否した。息子さんと相談したが、本人がそう言うならそれでいいという。幸いに慢性的な腫瘍からの出血による鉄欠乏性貧血は鉄剤投与で少しずつ改善している。外来で経過をみることにした。

 その後鉄剤を継続して、Hb8g/dlくらいで経過していた。外来は1か月おきに来ていた。変わりがないので2か月おきにして、調子が悪い時は随時受診としていた。

 先月に外来を受診しなかったが。こちらも忙しく、呼び出しまではしていなかった。まあ連れてくる息子さんの都合が悪かったので、別の日に来るだろうと思った。

 1か月以上鉄剤内服が中断されて、食欲不振・倦怠感が出現して、先週受診した。息子さんの話では、前回は息子さんの都合が悪く、ひとりで受診するように伝えていたそうだ。受診したものと思っていたそうで、薬も本人の管理なので中断しているのをは知らなかったという。Hb3.6g/dlと低下して、顔色は蒼白ではなくて薄い黄白色だった(黄疸はない)。

 そのまま入院して、濃厚赤血球4単位を輸血して、Hb5g/dlになった。さらに4単位を追加してHb8g/dlになった。倦怠感は消失して元気になった。鉄剤だけで貧血が進行しないか、少し経過をみてから退院を決めたいというと、もう帰るという。そういう人なので、2週間後に外来でみることにした。前回のCTでは肺転移がパラパラと見られたが、あとどのくらいもつだろうか。

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急性膵炎

2017年05月28日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ている。天気が良いせいか、受診は少なかった。救急搬入は1台だけ。80歳代初めの男性が、腹痛で動けなくなったという。

 腹部は硬くなっていて、反跳痛やデファンスとはとれない。表現するとすれば板状硬になるが、そこまで硬くないという変な言い方になる。定期的な通院はしていなくて、介護保険の主治医意見書を内科クリニックで書いてもらっているらしい。要介護3なので認知症ありとと判断されているようだ。

 付き添ってきたのは息子さんだった。救急隊員の話では、息子さんは飲酒していて、状況を聴取しようとすると、痛がっているんだから早く運べと怒られたそうだ。何とか聞きだすと。患者さんはふだんは外出はしないが、自宅内は歩行できるらしい。親子関係が悪くて話もしないらしいが、今日は自分に腹痛を訴えたので相当痛いんだろうという。

 痛いかと聞くと、押さなければ痛くないという。表情からは重症感はあまり伝わってこない。これは検査で決めるしかない。血液検査を提出して(迅速での血清クレアチニンは正常域)、さっそく腹部造影CTを行った。胃腸の穿孔はなかった。膵臓周囲に浸出液が貯留していた。もともと膵自体は萎縮しているのだろうが、膵頭部は腫脹している。

 血清アミラーゼが1900と上昇していた。急性膵炎とわかると、判断しかねた腹部所見に納得がいった。飲酒の有無を聞くと、これがよくわからない。以前は3合程度の飲酒があったらしい。最近はと聞いても要領を得ない。息子さんに聞くと、ここ数年は飲んでいないのではという。

 総胆管は軽度に拡張しているようでもあるが、胆道系酵素の上昇はほとんどなく、黄疸もない。トランスアミナーゼはAST>ALTで中等度に上昇していた。総胆管結石は画像上指摘できなかった。とにかく原因ほ保留だが、急性膵炎で入院とした。明日可能ならMRCPをやってみるが、動いてできないかもしれない。

 息子さんが、救急室から病棟に上がる前に帰ろうとするので、病棟まではいっしょに行ってもらった。病棟看護師さんにいろいろ聞かれて、同じ話を何回聞くんだと怒って帰った。10年くらい前に、アルコール性急性膵炎で他の先生が担当したことがある。慢性膵炎・糖尿病もあるが、今どこの病院に通院しているのか聞けなかった。

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リウマチ性多発筋痛症~CareNeTV

2017年05月27日 | Weblog
 今日はCareNeTVを見ていた。先週末からプレドニン15mg/日で治療を開始したPMRの患者さん(70歳代後半の女性)は症状改善して、歩行可能になっている。金城光代先生は誠実な話ぶりだが、冗談は言わない。
 
リウマチ膠原病セニナー 第29回
「リウマチ性多発筋痛症」
  沖縄県立中部病院内科 金城光代先生
 
PMRの診断
2段階で行う
1)初めの評価
 典型的はな診療所見があるか
2)その後の評価
 ステロイドへの反応性はどうか
当てはまらないときは、鑑別疾患を見逃していないか、もう一度考え直す
臨床症状
・年齢 50歳以上
・発症は急性・亜急性
・体幹から近位筋の痛み・こわばり
  肩
  頸。股関節
  片側から発症し、数日で両側の  痛みとなる
・朝のこわばり 45分以上
・全身症状
  倦怠感、体重減少、微熱、うつ  症状
・関節可動域制限
(首、肩、股関節)
 関節周囲炎
  滑液包炎や腱鞘炎
・RS3PE
 Remitting Seronegative
 Symmetrical Synovitis with
 Pitting Edema
 手背の圧痕性浮腫
 指伸筋腱鞘炎
・末梢性関節炎(膝、手首)
超音波、MRI
 両側の肩の滑液包炎
 PMRの診断の感度・特異度90%以上
検査所見
・血沈40mm/時以上またはCRP上昇(7-20%は正常)
・anemia of chronic desease 50%
・肝機能障害(特にALP上昇)30%
・白血球数 増加や左方移動は通常認めない
・血小板増加
治療
 プレドニゾロン10-20mg/日で開始
 数日以内に症状の改善を認める
PMR新分類基準
 50歳以上、両側肩の痛み、血沈またはCRPの上昇がある患者
 
超音波なし
・朝のこわばり45分以上 2点
・股関節痛または可動域制限 1点
・RFまたは抗CCP抗体正常 2点
・他の関節痛なし 1点
 4点以上でPMR
 感度72%、特異度65%
超音波あり
 超音波なしの点数に加えて
 片側の滑液包炎があれば1点
 両側の滑液包炎があればさらに1点 5点以上でPMR
 感度71%、特異度70% 
PMRとの鑑別
 高齢発症の関節リウマチ
(Late onset RA)
・高齢発症RA
 首から肩にかけてのこわばり、手足のむくみで発症する(PMR like)
 一般のRAの4倍
・PMR
 25%で末梢関節炎あり
 (RA like)
 PMRと診断された症例の約20%がその後1年間でRAと診断される
(鑑別法)
 診断時:RAはステロイド反応性は緩徐
 フォロー時:PMRに伴う関節炎はDMARDなし(ステロイドのみ)でコントロール可能
 骨びらんをRAの一部で認める
 
PMR Management Guideline
1.PMRの診断はstepwiseに行う
(inclusion&exclusion criteria)
Inclusion criteria
1)年齢50歳以上
2)有症期間2週間以上
3)両側肩かつ/または骨盤領域の痛み
4)朝のこわばり45分以上
5)血沈またはCRP上昇
Exclusion criteria
 悪性腫瘍
 感染症
 炎症性疾患
 甲状腺疾患
 肩や股関節の局所疾患
 スタチン内服
 パーキンソン病
2。ステロイド治療開始前にチェック必要な項目
 血算、肝機能検査、BUN/血清クレアチニン、RF/抗CCP抗体、血沈
 CPK、甲状腺機能検査
(必要があれば胸部X線、抗核抗体)
3.少量ステロイド(プレドニン15mg/日)を開始し、1週間後に反応をみて、PMRの診断を再評価する
 患者global response
 70%以上改善 PMRらしい
 50~70%改善 プレドニン20mg/日への増量
 50%以下 診断が正しいか再考
PMRの治療
(ステロイド漸減法)
Recommendation
 典型的なPMRでは少量ステロイドから開始し、ゆっくり漸減する
・プレドニゾロン15mg/日を3~4週間
・12.5mg/日で3~4週間
・10mg/日で4~6週間
・1mgずつ4~8週ごとに漸減
(フォローのタイミングとチェック項目)
Recommendation
 治療反応誠意と疾患活動性のモニターを行う
フォロー毎に確認すること
 近位筋の痛み、朝のこわばり、倦怠感、血算、CRP/血沈、BUN/血清クレアチニン、電解質、血糖
PMRのステロイド中止率・再燃率
・ステロイド中止率
 2年後で50%、3年後で70%、11年後で90%
・PMR再燃率
 急激な減量で再発率上昇
 初めの1年で1/3が再発
 女性の方が再発率、ステロイド累積使用量、ステロイド合併症が多い
 
Recommendation
 PMR症状が再燃したら(炎症反応の上昇だけでなく)
・巨細胞動脈炎の発症があれば、その治療をする
・前回のステロイドに戻す
(初期量まで戻さなくてよい)
・2回以上PMRの再燃を認めたらDMARDの使用を考慮する
ステロイド漸減とMTXの併用
1.MTX併用すべきは
1)プレドニゾロン7.5mg/日以上で再燃する場合
2)再燃を2回以上繰り返す場合
3)ステロイドの副作用が重篤になりえる場合
MTX10mg/週以上を用いる
2.MTXをやめるのは。
ステロイドoffの6~12か月後
 
PMRにおけるTNF製剤
1.Infliximab(IFX)
(プレドニゾロン15mg+IFX)
ステロイド使用量・再燃率の差なし
2.Etanercept(プレドニゾロン、NSAIDなし)
14日後、PMR疾患活動性はコントロール群と差なし
 
PMRにおけるNSAID
1.ステロイド+NSAIDはステロイド単独に比べ
1)ステロイド累積使用量は変わらない
2)副作用は多い
2.NSAID単独治療で緩解になることあり
 
症例
 PMRの治療で改善しない
 両側鎖骨下動脈の狭窄
 プレドニゾロンをGCAの治療量にして改善
 PMR+Extracranial GCA
 
Steroid refractory PMRで何を考える?
1.悪性腫瘍によるPMR symptom
(paraneoplastic)
2.Giant cell arteritis
 Extracranial GCA
 
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身体症状症

2017年05月26日 | Weblog

 5月24日のNHK総合診療医ドクターGは洛和会音羽病院の神谷亨先生。症例は30歳代女性の「右胸が痛い」。

 1~2年前から上下肢の痛みがあり、物が二重に見える感じがする、飲み込みにくいという症状もあった。自分でインターネットで調べて、多発性硬化症に違いないと思い込んでいた。整形外科や神経内科を受診して、異常なしとされたのに納得がいかず、いわゆるドクターショッピングをして、最後に評判を聞きつけて音羽病院を受診したという経緯だった。

 途中から身体症状としてはおかしいのではなにか、という雰囲気になった。身体表現性障害なんだろうなと思って見ていたが、研修医が「身体症状症」の病名を上げた。「身体症状症」が最初わからなかった。

 診断は「身体症状症」で、患者さんの症状に寄り添って、少しずつ心配ないことを自覚するように治療していくのが大切ということだった。それは身体表現性障害では?。

 「状況別に学ぶ 内科医・外科医のための精神疾患の診かた」加藤温著(中山書店)によると、DSM-5で、「身体表現性障害」が「身体症状症および関連症群」に改められたそうだ。

 「身体表現性障害」というと、精神的な問題が身体症状として表現されるという病因論的な意味合いがあり、その考え方をはずしたそうだ。また、身体症状は身体疾患によるものではないことが前提になっているが、身体疾患が完全にないとすることも限界があるからという。

 つまり、「原因は精神的なもので、身体疾患がないのに身体症状が起きている」と言い切れないということらしい。「身体疾患ははっきりしないのに身体症状が出ていて、精神的な問題が大きいようだ」というぼやっとしたものにしたのだろう。

「身体症状症」の分類は、

 1)身体症状症 (従来の身体化障害) ひとつあるいは複数の身体症状がつらく、日常生活の妨げになっている。

 2)身体症状症(疼痛が主症状のもの) (従来の疼痛性障害) 身体症状のなかで疼痛症状がつらく、日常生活の妨げになっている

 3)病気不安症 (従来の心気症) 身体症状は存在しない、あってもごく軽度。症状へのとらわれが明らかに過剰か不適切で不安が強い。

 4)変換症/転換性障害 (従来のヒステリー) 演技的で未熟な性格。神経学的症状(失歩・失立・失声・心因性非てんかん性けいれん)として現れる。

 5)作為症/虚偽性障害 身体的・心理的な症状が捏造されたり、外傷や疾病の意図的な誘発がなされる。これも入れるのは?と。

  4)と5)も含めるのは違和感があるが、どうなんだろうか。それにしても「身体症状症」は本にある通り、病名らしくない。

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S状結腸穿孔ではない?

2017年05月25日 | Weblog

 昨日の昼前に消化器科医が、開業医している先生の父親が腹痛で紹介されてくると言っていた。以前当院に勤務していた先生なので、ちょっとプレッシャーを感じていたのかもしれない。その後昼に医局に戻ってきた時に、腹部X線でイレウス像を呈しているが、腹部手術の既往がないと報告?があった。血液検査の結果を見て、腹部造影CT検査をすることになった。大腸癌による腸閉塞が疑われた。

 夕方に画面でCT像を確認すると、大腸癌らしい腫瘍は指摘できない。S状結腸の一部が穿孔して、遊離ガスが出ているように見える。どうしたのか消化器科医に聞くと、外科と相談して腹腔鏡で手術になるという。ただ、腹部は圧痛があるが腹膜刺激症状はない。1週間前からの腹痛だが、炎症反応は白血球数正常域でCRPは1.6と低かった。周囲脂肪織に炎症像はない。何だか変なんですとは言っていた。放射線科の読影も、S状結腸穿孔疑いだった。

 今日担当した外科医に聞いてみると、S状結腸に穿孔は指摘できなかったそうだ。術中に大腸内視鏡検査で管腔内からも観察したが、穿孔は指摘できず、airの漏れもなかったそうだ。腹腔鏡なので、腸管を触って確認はできない。そのまま終了となった。

 ひょっとしたら、回腸末端にはは壁が厚く見えるようなところがあり、それによる一時的な腸閉塞かもしれないともいう。見返しても、ないとはいえないというくらいの所見で、その口側から腸管拡張しているようでもない。以前、腸アニサキス症で回腸末端の全周性壁肥厚を生じて、手術になったことはあった。結果的には、昨日の段階で経過観察もありだったかもしれないが、腹腔鏡で観察して判断するというのは悪くない判断だと思う。これは異論があるところだろうが。

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徳田先生の臨床推論

2017年05月24日 | Weblog

 今年の若手医師セミナーが始まった。初回は徳田安春先生で、臨床推論の話だった。「Dr.徳田の診断推論講座」日本医事新報社の総説と「症候別見逃してはならない疾患の除外ポイント The 診断エラー学」医学書院のバイアスの話だった。

 徳田先生の本は一般向けの本まで集めていて、今週は「ナースのための臨床推論」を購入した。これは医学生や研修医(まあ学生かな)にお勧めで、看護師さんがここまで理解したらすごいことだと思う。

 著者の講演を聴くと、本が読みやすくなるし、その分野を改めて復習するようになるので、きっかけとしてはとてもいい。来月は林寛之先生だ。

 今週、60歳代半ばの男性が、胸痛で救急外来を受診した。急性心筋梗塞で完全右脚ブロックをきたしていた。翌朝当直医に言われて、心電図を見た。一瞬あれっと思ったが、胸部誘導で異常Q波があり(rSR’のrがない)ST上昇もわかる。心電図の器械もちゃんと急性心筋梗塞と読んでいた。「循環器科・救急医のための心電図症例集」ベクトル・コアに乗っている心電図と同じだ。右脚ブロックはまだいいが、これが左脚ブロックだと自信がない。

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また肺癌・脳転移

2017年05月23日 | Weblog

 また地域の基幹病院呼吸器科から、肺癌・脳転移の患者さん(80歳代後半の男性)が転院してきた。

 もともとは慢性閉塞性肺疾患・慢性呼吸不全で通院していて、昨年秋から在宅酸素療法が導入されていた。今月初めに意味不明の言動が続いて入院した。左後頭葉に腫瘍があった。右肺に結節状陰影があり、縦隔リンパ節腫脹がある。多発性肝転移もあった。明らかな原発性消化器癌はなかった。原発性肺癌の脳転移・肝転移・縦隔リンパ節転移と判断された。

 年齢的に気管支鏡の精査もしないことになり、癌に対しての治療も何もしないことになったそうだ(実際にはできない)。抗痙攣薬の投与で、その意味不明の言動も改善したと記載されていた。退院の話が出たが、家族は在宅でみるのは嫌がった。そういう経緯があって、先週当院に転院依頼の話が来た。向こうはベットがなくて困っている病院だから、引き受けるのに異存はない。

 癌がなくても、もともとやせて筋力のなさそうな患者さんだった。以前からトイレまで歩くと息切れがしていた。それでも、ベットとポータブルトイレがあれば、自宅でしばらく過ごせそうだった。家族には1~2週間当院で経過をみて、可能なら一時的に退院をという話をしたが、最期まで病院に置いてほしいという希望のようだ。在宅療養のキーパーソンであるお嫁さんは、孫の世話があってと盛んに繰り返す。患者さん自身もなんとしても退院という希望ではなかった。

 3か月くらいは大丈夫な気がする。紹介先の先生も、数か月持ちそうで(?)すみませんがと言っていた。最期まで預かるのは構わないが、長い入院になると経営的にまずという悲しい医療事情がある。

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嚥下はもう無理です

2017年05月22日 | Weblog

 他の内科の先生が100歳の患者さんを診ている。経口摂取できず、CVカテーテルを挿入して、高カロリー輸液をしていた。そのうち一人は先週から発熱が続いて、血液培養を2セット提出してる。中間報告では陰性だった。抗菌薬2剤を使用しているが、今日も高熱があり、悪寒戦慄もあった。

 担当医が午後は不在だった。当直明けに半日休めることになっているが、実際にはなかなか休めない。その分を別の日にとってもいいのが、忙しくてそれもとれていない。少し余裕がある時に休んでいいですよ、と先週伝えていた。昼過ぎに、午後休みますと申し訳なさそうに言っていた。

 病棟の看護師さんは、刺入部に発赤もあるので、抜いたほうがいいですよと言っていた。刺入部の発赤があってもなくても血流感染なので、関係ないのだが。末梢の血管から何とか短期間なら点滴できそうだった、手背から点滴が入ったところで、CVカテーテルを抜去した。

 電話で担当医に連絡してもよかったが、せっかく休んだところに電話を入れるのも気が引けるので、明日報告することにした。それで怒る人はないから(不在中何かあったらよろしくと言って帰った)。

 それにしても、経口摂取できない100歳の患者さんにCVカテーテルによる高カロリー輸液の適応がどうなんだろうか。自分ならしないと思うが、家族との相談になるから一概にはいえない。胃瘻造設も80歳代後半以降にはあまりしなくなったが、全国的にも胃瘻は反省期になっているはずだ。

 現在90歳前後で、感染症は治ったものの経口摂取できない患者さんが2人入院していて、いずれも末梢用の輸液のみで経過をみている(DNRの方針)。発語はなく、ほとんど閉眼しているひとたちだ、ゼリーなどの経口摂取は継続するが、ST(聴覚言語療法士)さんからもう無理ですと言われた段階でそれも中止している。

 今日は誤嚥性肺炎で入院して、肺炎自体は治った80歳代半ばの男性が、STさんから経口摂取はもう無理ですと言われた。認知症で在宅介護していた家族に伝えると、胃瘻はしないことにしていましたと言われた。自然な形でお願いしますと言われたが、末梢用の点滴だけで経過をみるのは一応自然なんだろうか。

 

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