なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

乳酸アシドーシス

2018年11月02日 | Weblog

 昨日の夕方は医局会に出ていた。報告事項を聴いていると、内科の若い先生(地域医療で来ている専攻医)から慌てた様子の連絡が来た。わからない患者さんが来ているという。救急室に行ってみると、患者さんは18歳男性だった。

 その方は、今年の3月の夜間に救急外来を受診したことがあった。昨年発症の統合失調症で他県の精神科病院に通院していた。処方は非定型抗精神薬のジプレキサと安定剤・睡眠薬が処方されていた。その日は首と手足を奇異に曲げた姿勢をとり、その姿勢を維持していた。時間が経つと、また別の奇異な姿勢をとり続けた。緊張病性の行動なのだろうか。当直の外科医は、通院している精神科病院に連絡して、そちらを受診してもらっていた。

 昨日は倦怠感があり(その日からというが)、同居している祖父におんぶされて病院に来た。外傷ではないので、こういう場合全部内科に回される。名前と生年月日は何とかは言えるが、半眼状態で頻呼吸を呈していた。血圧は正常だが、130/分の(洞性)頻脈だった。すぐにストレッチャーに寝かせて救急室に運び込んだ。

 血液検査と頭部CT・胸腹部CTが施行されていた。単純CTだが、画像上明らかな異常は指摘できない。問題は血液検査だった。血液ガスは、PH 6.942・PaO2 137・PaCO2 10.6・HCO3 2.2・BE -35.5・Anion gap 32.1と著明なAG増加型代謝性アシドーシスだった。

 1型糖尿病による糖尿病性ケトアシドーシスかと思ったが、血糖228mg/dl・HbA1c5.5%と血糖は軽度上昇しているが、糖尿病性ではないようだ。尿中ケトン体は陰性だった。血液ガスの血中尿酸値がレポート可能上限値以上の値ということで、記載されていない。確認すると、尿酸値270mg/dl以上だった。

 RBC 631万・Hb 18.8・Ht 59.3、TP 10.0・血清アルブミン6.7と血液濃縮を呈していた。WBC 31700・CRP 0.3と炎症反応の初期像の可能性があるが、感染症だとしても感染源は不明だった。BUN 21.4・血清クレアチニン1.75も血液濃縮のためか。生理食塩水を全開で落とすと、尿排出は良好だった。

 病態は乳酸アシドーシスだが、原因不明だった。元に精神疾患もあり、これは大学病院にお願いするしかないと判断した。若い先生が大学病院救急部に連絡すると、幸い受け入れてもらえた。「僕が乗っていきます」と救急車に同乗して搬送となった(生食500ml2本と救急用薬品をバックに詰め込んだ)。

 

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1 コメント

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Unknown (あかり)
2025-01-21 22:50:34
初めてコメントさせて頂きます!私は今から1年半前の2023年12月に自宅で突然体調不良に陥りかかりつけの病院へ救急搬送されました。診断は「嘔吐症、乳酸アシドーシス」でしたが根本的な原因がわからなかったため3日間入院、かかった費用は62000円でした。救急車を呼んでくれた妹には感謝しても仕切れないです。
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