なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

水疱性類天疱瘡

2024年11月21日 | 皮膚疾患

 11月14日(金)、全身に皮疹のある50歳代前半の男性が皮膚科入院となった。紅斑と水泡があり、薬疹・多型滲出性紅斑・天疱瘡などが疑わるそうだ。

 尋常性天疱瘡のマーカーである抗デスモグレイン1抗体・抗デスモグレイン3抗体と、類天疱瘡のマーカーである抗BP180抗体が提出された。結果は抗BP180抗体が陽性で、水疱性類天疱瘡と診断された。プレドニン30mg/日で治療開始となっていた。

 この患者さんは糖尿病で市内のクリニックに通院している。処方はエクメット配合錠HD2錠分2で、HbA1c6.3%と血糖コントロールは良好だった。

 プレドニン開始で食前血糖が250mg/dl~400mg/dlと上昇して、単なるヒューマリンRのスケール対応では間に合わないため、内科に血糖コントロールの依頼が来た。

 エクメットはDPP4阻害薬エクアとメトホルミンの合剤で、DPP4阻害薬は類天疱瘡の原因になる可能性があり、中止された。(メトホルミン単剤にして継続)皮膚科的にはDPP4阻害薬による天疱瘡は特徴があり、この患者さんは違うそうだが、それで処方継続とはならない。

 初期量(30mg/日)はどのくらい継続されてから漸減が始まるかと訊くと、「勢いが治まるまで」ということだった。漸減中止になることもあるが、維持量継続になることもあり、経過をみないとわからない。

 インスリン強化療法を初期量(ヒューマログはスケール、トレシーバは固定)で開始して、血糖をみて漸増とした。年齢的にはインスリン注射は習得できるだろう。

 病室にその旨を伝えに行ったが、急性期の皮疹が広がってまだ痛々しかった。皮疹を避けてのインスリン注射になる。

 

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帯状疱疹

2024年10月09日 | 皮膚疾患

 今月感染管理の院内勉強会があり、院外講師を呼ぶと費用がかかるので、今回も自前で済ますことになる。今回は帯状疱疹ワクチン「シングリックス」を導入したことから、「ヘルペスの話」をすることにした。

 帯状疱疹は英語ではshinglesという。Herpes zosterは学術用語(医学用語)なので一般の人はそうはいわない。東北では、特に高齢者は帯状疱疹のことは「つづらご」という。

 

  wikipediaによると、

  帯状疱疹は身近な病気であり、日本各地に固有の方言名が存在する。

 東北・北関東地方では「つづらご」「はくじゃ」、南関東では「ひっつらご」、中部地方では「つづらご」「おびくさ」、関西地方では「胴まき」「たすき」「おび」、中国四国地方では「胴まき」「けさ」「けさがけ」「けさよう」、九州地方では「胴巻き」「たづ」「へびたん」「たん」等という。

 「つづらご」の由来はつづらご(ヒヨドリジョウゴ)という植物で、「つづらごの実のなり方が帯状疱疹に似ていることから」、「つづらごの実を漬けたものが帯状疱疹の民間療法として使われていたことから」などの諸説があるそうだ。

画像:ヒヨドリジョウゴ(つづらご)の実の写真。見た目が似ている帯状疱疹を「つづらご」と呼ぶ地方がある。

 

 帯状疱疹のサブユニットワクチンShingrixは、帯状疱疹shingles(シングルス)とワクチンを製造しているグラクソスミスクラインの工場がベルギーのRixensart(リクサンサール)にあることからきているそうだ。

 

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蜂窩織炎

2024年08月22日 | 皮膚疾患

 8月19日(月)に60歳代女性が内科外来を受診した。8月17日(土)の早朝に発熱で救急外来を受診して、当直医(16日の)に週明けに内科外来を受診するようにといわれていた。

 

 16日(金)の午前7時半ごろに嘔気とふらつきがあった。体温は36.6℃だった。夕方午後6時ごろに高熱(39.8℃)が生じた。17日(土)の午前2時に当院の救急外来を受診した。

 呼吸器症状はなく、診察で右状背部に叩打痛があった。簡易尿検査で白血球反応があり、尿路感染症と判断していた。急性期病棟が満床状態だったので、外来治療となった。抗菌薬内服(セフジニル)とアセトアミノフェンが処方された。 

 

 19日(月)の外来受診時は、解熱していた。普通に診察室に入って、落ち着いた会話ができた。胸部X線と血液・尿検査を行った。肺炎像はなく、炎症反応が白血球11200・CRP26.0と予想外に高値だった。

 尿所見(沈査)は赤血球20-29/HPF・白血球5-9/HPF・細菌(ー)で、尿路感染症だとすれば軽快している所見になる。抗菌薬内服で経過をみることになるかと思われた。

 膝までの長さの白色調のストッキングをはいていた。右下腿に茶色にみえる。脱いでもらってどうしたのかと訊くと、2月に蜂窩織炎で治療していた。色素沈着が残ったようだが、もともと体格がよくうっ滞性皮膚炎があるようだ。

 左のストッキングも脱いでもらうと、左下腿全体が発赤していた。白色調のストッキング越しだと、案外わかりにくい。一部小水疱(実際は膿疱)が散在している。比較的には違和感程度で痛みというほどではないそうだ。今回は下腿の蜂窩織炎だった。

 17日の受診時にも左下腿の違和感があった(発赤もあったのだろう)。高熱で具合が悪くてそれどころではなかったという。

 2月の時も病棟が満床で、皮膚科外来で抗菌薬点滴静注に通院して軽快治癒した。すでに昼過ぎになっていて、皮膚科医はその日午後は不在だった。2月と同様に外来でセフトリアキソンを点滴静注して、翌日皮膚科外来で診てもらうことにした。

 20日(火)は急性期病棟の患者さんを地域包括ケア病棟に移動させて、入院可能だった。外来で点滴に通院するのは面倒ということで、今回は入院となった。

 

 この患者さんは、関節リウマチで大学病院に通院して、プレドニン(6mg/日)を内服している。軽度のステロイド糖尿病でメトホルミンも投与されていた。

 

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成人の水痘

2024年05月31日 | 皮膚疾患

 5月27日(月)に発熱・発疹の29歳男性が受診した。水痘らしい。

 5月25日(土)から発熱(38℃)があり、頭痛・倦怠感もあった。患者さん本人が発疹(紅斑散在くらいか)に気づいていた。

 26日(日)当番医を受診して、新型コロナの迅速検査が行われて陰性だった。患者さんが発疹の話をしなかったのか、発熱があるので迅速検査だけ行って解熱薬を処方したのかもしれない。

 27日は当院でもまず発熱外来扱いになるので、新型コロナとインフルエンザの迅速検査から始まった。両者陰性で内科外来受診になったが、発疹があるので皮膚科外来に回された。

 顔・体幹・四肢に紅暈を伴う小水疱が散在していて、水痘と判断された。血液検査では白血球は正常域でCRP2,0と軽度に上昇していたが、肝機能・腎機能は正常だった。

 水痘・帯状疱疹ウイルスvaricella-zoster virus(VZV)のIgMとIgGの外注検査を提出して、ファムシクロビルが処方された。(最近皮膚科医はアメナメビルを処方しているようだが)

 

 皮膚科医に成人の水痘がいたそうですね、と訊いた。VZV迅速検査(デルマクイックVZV)が出ているが、院内に入れていないということだった。

 また白癬菌の抗原キットも出ているが、さすがに白癬菌は鏡検でしょう、ともいっていた。

 

 マルホから、水痘・帯状疱疹ウイルス抗原キット(デルマクイックVZV)単純ヘルペスウイルスキット(デルマクイックHSV)白癬菌抗原キット(デルマクイック爪白癬)が出ている。「デルマクイック」というのはうまいネーミングだと思う。

 

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浮腫の下腿蜂窩織炎

2024年05月23日 | 皮膚疾患

 5月2日に記載した完全房室ブロックの95歳女性のその後。5月21日に入所している施設から、左下肢の浮腫がひどいので診てほしいと依頼が内科外来に入った。

 うっ血性心不全で両下肢の浮腫はあるはずだが、左下肢だけというのは何だろうか。心不全の増悪ではなく、深部静脈血栓症か。

 施設で救急要請して、救急隊から37.4℃の発熱の発熱があると報告があった。微熱では何ともいえない。

 搬入されると、すぐに左下腿の蜂窩織炎と分かった。一部が自壊して膿が出ていた。下腿前面が中心だが、発赤はほぼ全周性だった。中心の7~8cmがぷよぷよして、膿瘍があるかと思われた(もっと液体っぽかったが)。

 一通り検査して、心不全の悪化や肺炎・尿路感染症など他の感染症は否定的だった。蜂窩織炎でいいようだ。ただし、液体貯留は膿?。皮膚科医が注射器に針を付けて穿刺すると、軽度に膿性のさらさらした液体だった。膿瘍形成というよりは、浮腫のある下腿なのでこんな形になったらしい。

 動いてしまうのでMRIは撮れない。CTで診て筋層への進展はなく、ガス発生などもなかった。

 穿刺液と血液培養2セット(静脈が細すぎて、2セットとも動脈から採取)と提出して、抗菌薬を開始した。壊死性皮膚軟部組織感染症になると困るが、翌日の様子では大丈夫のようだ。

 

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いわゆる中毒疹

2024年05月12日 | 皮膚疾患

 5月8日に皮膚科医に全身に皮疹のある患者さんのことで相談された。相談されても、あまり参考になる意見も出ない。

 患者さんは51歳女性で、夫といっしょに受診していた(中国出身らしい)。全身に紅斑があり、一部は紅皮症様になっている。

 3日前に焼肉を食べて、嘔吐・下痢があったそうだが、それは受診時には治まっていた。翌日から紅斑が出始めて、受診日には全身に及んでいた。38℃の発熱があり、倦怠感を訴えていた。発熱以外のバイタルは問題ない。見るとけっこうびっくりするが、皮膚科としては粘膜疹がないので、重症とは思っていないようだ。

 白血球7000・CRP10.2と炎症反応が上昇していた(4年前産婦人科受診時には白血球4500なので、少し上昇)。AST 29・ALT 55と若干肝機能が上昇しているが、たぶん脂肪肝だろう。

 咽頭痛というか、のどの違和感を訴えたが、口腔内は所見がない。念のため耳鼻咽喉科でも診てもらったが、咽頭喉頭は問題なかった。内科というか内臓疾患に関連したものとは言い難い。

 ツツガムシ病としては刺されるような活動はなく、皮膚科医が診ても刺し口はなかった。そもそも皮疹が違うらしい。特に薬も使用もなく薬疹ではない。嘔吐・下痢したことと関連しているのかもしれない。

 内科としては念のため血液培養を提出しておくくらいでしょうか、とお伝えした。(血管が見づらく、提出はされなかった)

 食欲が低下しているので、痒みがあるので抗アレルギー薬は出すが、あとは点滴をするくらいで経過をみるそうだ。診断名は全身性中毒疹となっていた。

 中毒疹というのは、内因外因さまざまな原因(薬疹、細菌・ウイルス感染、食物その他)で誘発される反応性の皮疹の総称ということだ。正式な病名ではないそうだが、便利なのだろう。

 入院したが、翌々日には解熱して食事摂取も良好となり、退院となっていた。

 

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うっ滞性皮膚炎に感染

2024年04月05日 | 皮膚疾患

 4月1日新患担当の先生(外部の先生)が病院に遅れて来ることになり、再来担当の当方に回ってきた。

 左下腿の熱感・腫脹を訴える55歳男性だった。2023年2月に下腿の蜂窩織炎で半年入院治療を受けた。2023年10月半ばに下肢の蜂窩織炎で受診した時は外来治療だった。今回が3回目になる。

 蜂窩織炎といっても、桃色っぽい発赤・浮腫状の腫脹が境界不明瞭に広がるあの蜂窩織炎ではなかった。両下腿は黒褐色のざらざらとした盛り上がった湿疹局面を形成している。左下腿は前面の8割、右下腿は前面の5割がそうなっている。

 右下腿の中心部は自壊して膿が出ていた(絆創膏が貼ってある)。本人の訴えとしては、悪いのは左下腿で、確かに左下腿の方が体積が増加していて熱感を感じる。

 最初の入院の時は白血球18900・CRP27.7から、2回目の外来治療の時は白血球20100・CRP8.4からの治療開始だった。

 2回目の時は希望での外来治療だったようだ。今回も入院する気はなく、外来で点滴をしてほしいという希望だった。2回とも抗菌薬の点滴静注としてはセフトリアキソンを使用している。

 この皮膚が黒褐色になっているのは、うっ滞性皮膚炎が皮膚血管のうっ血から出血を来して、組織内にヘモジデリンが沈着することで生じて来る(皮膚科の本)。

 

 うっ血性皮膚炎に根本的な治療があるのかわからないが、皮膚科で評価してもらう必要がある。(これまで皮膚科で診たことはなかった)皮膚科に紹介した。

 後で聞くと、うっ滞性皮膚炎を基盤にした細菌感染症(蜂窩織炎)で、その治療をした後に一度血管外科(他院)に紹介する予定、といわれた。

 身長174cm・体重100kg弱という巨漢で、その体重も影響しているが、トラックドライバーという職業も関連するともいっていた(長時間の座位)。

 血液検査は白血球7100・CRP3.7でこれまででは一番軽度の値だった。セフトリアキソンの点滴静注とその後は経口抗菌薬(セファレキシン=ケフレックス)を使用していた。

 再発を繰り返さない方策を考える必要があるが、減量はきっと有効だろう。長時間の座位の回避は難しいだろうが、意識して下肢挙上を行うことはできるか。明らかな静脈瘤はないが、血管外科としては何か処置があるのだろうか。

 

 ネット上にあった画像。これよりもっと広範で色調もきつかった。

下肢静脈瘤 | 市立池田病院

 

 

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腹壁(臍部)の蜂窩織炎

2023年09月10日 | 皮膚疾患

 木曜日の当直の時に、54歳男性の救急搬入依頼が来た。その日の午前中に当院の外科外来(大学病院外科から応援)を受診していた。臍部の皮膚軟部組織感染症で治療を受けたという。

 その部位の痛みがひどくて救急要請したという。統合失調症で精神科病院に通院しているという情報もあった。

 外科の常勤医は現在不在で外科処置を要する入院はとれない。日中に当院で診ているので、断れないが、診て見ないとわからない。局所麻酔下に小切開したが膿は出なかったと記載されている。

 

 救急搬入後にトイレに行きたいといって、歩いて行けたので、病状として悪化しているわけではなさそうだ。皮膚表面からは発赤・腫脹していて硬結に勝っているが、膿瘍はない。

 体温が37.4℃で、皮膚幹部組織感染症によるが、当直の看護師さんはコロナの検査を用意していた。(発熱患者は発熱外来扱いとなり、呼吸器症状がなくてもコロナの検査から入る)結果は陰性。

 点滴を入れて時間外でできる検査(試験紙使用の簡易検査)を行うと、白血球12500・CRP2.1と炎症反応は上昇している。内科医院に高血圧症・糖尿病・脂質異常症で通院している。それぞれ1剤ずつ内服していて、HbA1cは6.5%ということだった。

 化膿巣の広がりを見るためにCTを行った。表面から見るよりは現局していた。腹筋まで波及はしているようだ。

 外科外来では抗菌薬の内服(オグサワ=オーグメンチン+サワシリン)が処方されていたが、鎮痛薬の処方はなかった。アセリオ注を行うと痛みは軽快した。

 入院して抗菌薬投与を行うか訊いてみると、入院はしたくないという。帰宅になるので、抗菌薬点滴静注はセフトリアキソンにした。カロナール500mg錠3錠分3を処方した。

 外科外来では有事再来としていたが、翌朝の状態で症状が強い時は外科外来をその日に受診すること、症状が軽快しても翌週の外科外来(月曜はないので火曜日)に受診するよう伝えた。(火曜日は元当院常勤医)

 翌金曜日は受診していなかったので、痛みは自制可だったのだろうか。

 

 検査結果が出るまでの間に統合失調症のことを訊いた。市内の精神科病院に通院していた。当然だが若い時の発症で、何度か治療を中断して病状が悪化したという。今は一生ものの病気と認識していて、きちんと通院している。

 高血圧症も糖尿病も治して終わりではないので、一生もので同じことですと伝えると、妙に納得していた。

 

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