なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

カテーテル関連血流感染症

2023年09月24日 | 感染症

 高カロリー輸液を施行していた91歳女性は発熱が続き、血液培養2セットとカテーテル先端の培養からメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が検出された。

 

 一人暮らしをしていたが、7月7日に転倒して右大腿骨転子部骨折を来した。当院に救急搬入されて、地域の基幹病院整形外科に搬送して手術(骨接合術)を受けた。

 術後すぐに当院の回復期リハビリ病棟に転院してきた。先方の病院で不穏がひどかったらしく、向精神薬が投与されていた。

 ロナセンテープ20mg貼付、ルーラン4mg2錠内服にロフラゼブ酸エチル1mg、デエビゴ5mgだった。覚醒が悪く、内服困難もあり、それらを中止した。

 それでも経口摂取はわずかで、継続した経口摂取は困難だった。整形外科医が担当していたが、内科に転科となった。

 家族と相談して高カロリー輸液で経過をみることになった。病棟看護師さんから、手は動かすので上から入れるのは(内経静脈や鎖骨下静脈)難しいので、下から(大腿静脈)お願いします、いわれた。

 手関節の偽痛風(関節炎)の発熱もあったりしてわかりにくかったが、上記の培養を提出して、MRSA検出、という経緯だった。

 提出翌日にグラム陽性球菌が検出されたと報告があり、CVカテーテルを抜去して末梢静脈から約1週間点滴してもらった。抜去前からバンコマイシンを始めていたので、継続している。

 末梢静脈からの点滴継続は厳しいので、上肢の動きも以前ほどではないので、(少しだけ看護師さんに抑えてもらって)内頚静脈からCVカテーテルを挿入した。

 

 今月療養型病床のある病院に転院した85歳女性は、高カロリー輸液をしていたが、首も上肢も動かしてしまうことから大腿静脈から穿刺していた。

 カテーテル関連血流感染を繰り返して、MRSA、MSSA、MRSEと次々に体表面の菌が検出された。その都度CVカテーテルを入れ替えていた。

 

 やはり大腿静脈からのアプローチは感染を来しやすい。一番感染しにくいのは鎖骨下静脈からだが、今どきは合併症の危険があるのでほとんど行われなくなった。

 内頚静脈は穿刺が容易で合併症は少ないが固定しにくいという問題と、患者さんが首を動かしてしまうという問題があり、大腿静脈ほどではないが、血流感染を起こす。

 

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MRSA、MSSA

2023年08月26日 | 感染症

 5月16日に交通外傷(胸椎骨折、右脛骨骨折)で整形外科に入院した86歳女性は、保存的治療を経過をみることなった。

 糖尿病があり、内科で診てほしいといわれて、入院当初からかかわっていた。入院後に食事摂取が進まず、胸部X線・CTで誤嚥性肺炎があるとわかり、内科で抗菌薬点滴静注を行った。

 1か月経過して骨折は安定したとして、6月17日に内科に転科となった。両上肢と首は自由に動かすため、右大腿静脈からCVカテーテルを挿入して、高カロリー輸液を開始した(インスリン混合あり)。そのまま安定すれば、療養型病床のある病院へ転院依頼することになっていた。

 7月14日から高熱・悪寒が出て、カテーテル関連血流感染症が疑われた。バンコマイシンと、尿路感染症疑いもあり、ファーストシン(CZOP)を開始して翌日にはきれいに解熱した。

 どちらかというと尿路感染症かもしれないと思われたが、血液培養2セットからMRSAが検出された。CVカテーテルを抜去したが、バンコマイシン投与後なので、カテーテル先端の培養は陰性だった。

 バンコマイシンは14日間投与したが、途中から軽度の肝機能障害を認めていた。(中止で軽減)左大腿静脈からCVカテーテルを入れ替えた。

 8月11日から高熱が出現して、再度同じ抗菌薬をカテーテルを開始した。連休の初日だったので、培養は提出できなかった。解熱傾向にはあったが、連休明けに確認すると、刺入部から血性浸出物が出ていた。これは明らかに感染を来しており、血液培養を提出して、すぐにカテーテルを抜去した。

 カテーテルから引いた血液は少量しかとれなかったので、一応それも培養に出したが、末梢静脈からも血液培養を2セット提出した(計3セット)。カテーテル先端も培養に提出した。

 カテーテル抜去後は解熱した。前回もバンコマイシン投与で肝機能障害があったが、今回は軽度ではなく高度になっていた。ファーストシンは継続した。まだ培養結果は出ていない。それで発熱が起きた時はMRSA用にテイコプラニンを開始するつもりでいた。幸い解熱したままだった。

 カテーテル先端の培養とカテーテルから引いた静脈血から、今度はMSSAが検出された。感受性は良好だった。ファーストシンも効いていたので、作用の異なる2種類の抗菌薬が入ったことになる。

 CVカテーテルはまた右大腿静脈から入れ替えている。穿刺部位として好ましくないので、次回は上肢と首を抑えてもらって、内頚静脈から入れるしかないかもしれない。

 

 

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カテーテル関連血流感染症

2023年08月18日 | 感染症

 現在、当院で提出される血液培養は月10件ちょっととかなり少ない。尿路感染症(急性腎盂腎炎)・胆道感染症・原因不明の発熱での提出もあるが、病棟からだとカテーテル関連血流感染症疑いでの提出になる。

 カテーテル関連血流感染症では基本的にはカテーテル抜去を要する。バイタルが安定していれば血液培養の結果で診断確定してから抜去することもあるが、バイタル不安定では直ちに抜去する。

 コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)以外の菌では原則、カテーテル抜去になる。CNSでは抗菌薬ロック療法でカテーテル温存を試みてもよいらしいが、行ったことはない。

 

 4月13日地域の基幹病院整形外科で大腿骨頸部骨折術後(人工骨頭)に80歳男性が、回復期リハビリ病棟に転院してきた。4月から赴任した整形外科医が担当になっていた。

 ところが4月25日から癒着性腸閉塞(虫垂炎術後)からの嘔吐で誤嚥性肺炎を来した。こうなると整形外科では診られない。一般病棟に転棟して、担当も内科(腎臓内科の若い先生)が担当になった。

 腸閉塞はNGチューブ挿入で保存的に軽快して、誤嚥性肺炎も抗菌薬投与で軽快した。結局経口摂取困難となって、末梢点滴からCVカテーテル挿入(右大腿静脈から)で高カロリー輸液になった。

 しばらく安定していたが、発熱が続き、7月⑪日提出の血液培養2セットからコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus caprae)が検出された。バンコマイシン投与で軽快していたが、CVカテーテルはそのままだったので治りきることはなかった。

 8月1日提出の血液培養2セットからまた同じ菌が検出された。CVカテーテルを抜去して、今度は右上腕の静脈からPICCが挿入された。

 腎臓内科の先生はPICCが得意だった。当院では以前に在籍した外科医がもっぱらPICCを行っていたが、どうも固定しにくいセットだったらしい。使いやすいキットを購入したいと周囲の先生方に訊いていたが、他に行う人はいないので、希望のキットを購入して下さいとお伝えした。

 

 PICCはやってみたいと思いながらまだ行ったことはない。認知症の高齢者だと首と上肢を動かしてしまうので、それを抑えて内頸静脈から挿入するのは難しい。上腕だったらなんとか(動くのを)抑えられるかもしれない。

 地域の基幹病院では血液培養の提出が月に100~200件らしい(県庁所在地の専門病院は300件と聞いた)。血液培養の提出件数が病院の診療レベルを表すとされるので、件数を増やす必要がある。

 

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