なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

腹水貯留

2025年03月14日 | 消化器疾患

 3月3日(月)に40歳代後半の男性が腹部膨満を訴えて内科新患を受診した。下肢の浮腫はなかった。

 2月から心窩部痛があったが、それが消失して、その後から腹部膨満が始まったという。発熱や腹痛はなかった。食事もとれるが、食べると腹部膨満が増すので食べる量をセーブしている。

 診察すると確かに腹部は膨満していた。触診では緊満感はあるが、圧痛はなかった。腹水が貯留しているのだった。

 仕事の悩みがあり、ストレスだという。アルコールはビールと焼酎で、申告通りだと日本酒3合相当になる。

 昨年に心窩部痛で内科医院を受診した。そこは消化器内科医だが、地域の基幹病院消化器内科に紹介された。上部消化管内視鏡検査で胃炎といわれて、ピロリ菌の除菌をした。下部消化管内視鏡検査で小ポリープを指摘されたが、切除するほどではないといわれた。

 腹部造影CT検査も受けたそうだが、異常は指摘されなかったという(本人の話)。アルコール性肝障害はその時もあったはずで、腹部エコー・腹部造影CTを行ったのではないか。

 

 先方の病院では検査に時間がかかることと、対応が気に入らなかったらしく、今回は病院を替えて当院を受診したという経緯だった。資料がないので、最初からの検査になってしまう。

 白血球4000・Hb11.5・血小板6,1万と血小板減少の目立つ汎血球減少症傾向という値だった。肝機能はAST 232・ALT 96・LDH 450・ALP 96・γ-GTP 715・総ビリルビン3.2とアルコール性肝障害のパターンだった。血清カリウムが3.2と低カリウム血症があり、ループ利尿薬が使用し難い。

 腹部エコーでは脂肪肝だった。肝表面の凹凸は指摘されない。脾臓も脾腫というほどではないが、大きめではある。そして腹水が貯留していた。

 造影CTを行うと、少なくとも腹部悪性腫瘍は指摘できなかった。胸水は主に右肺にある。やはり肝表面の凹凸は指摘できないが、左葉が腫大傾向にある。

 ちょうどその頃から入院ベットの確保が難しく、満床の日が続いていた。本人は入院するつもりだったらしいが、外来治療となった。(禁酒で3日くらい経過しないと入院は難しいとも話した)

 スピロノラクトンとトルバプタンを使用して、少し腹水は軽減した。血清カリウムが正常化したので、フロセミドも追加できた。腹部悪性腫瘍・癌性腹膜炎の可能性も否定はできないが、アルコール性肝硬変(非代償性)ではないか。

 

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