那須太社 錦輔 の日記

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萩尾望都と竹宮恵子

2022-11-19 10:43:11 | 読書感想文

先日ふと、萩尾望都論を読みたいなと思って、長山靖生の「萩尾望都がいる」という本を読んだのだが、この本はなんか作者のおじさんが物凄い萩尾ファンで、自分としてはそこまで好きでもないし、僕は萩尾さんのことちゃんと理解できてる人間ですから、みたいなおかしな選民意識が感じられて共感できなかったのだが、その中に記述があったので興味がわいて「一度きりの大泉の話」と「扉はひらく いくたびも」の2冊を図書館で借りてきた。

年の近い妹が読んでいたので、自分もお二人の作品も若いころ読んでいたし、けっこう面白いと思っていた。

歳を取ってから何作か再読して、萩尾さんの「ポーの一族」、「来訪者」、竹宮さんの「地球(テラ)へ」、など傑作だと改めて思っていた。

そんなお二人が来し方を振り返った本で、どちらも語り下ろし的に作られた本。

なので、やや文章が生硬というかぶっきらぼうな感じがする。

お二人が若かりし頃、大泉学園で2年くらい同居しておられたころの話がやはり興味深い。

結果的に両雄並び立たなかったわけだが、どちらかというと萩尾さんがお気の毒な感じだ。

大泉学園、下井草で暮らしたあと萩尾さんが転居された埼玉の自然に囲まれた良いところってどこかな、と検索してたらブックログというサイトに萩尾さんの本のレビューが沢山載っていた。

全部読んでないが、本格的な書評が多くて読みごたえがある。いろんな立場の人がいるが、それぞれに「なるほどー」と思わされる深い分析や読み込みがある。

amazonとか自分がブログに上げてる感想文のようなのとはレベルが違う

https://booklog.jp/item/1/4309029620

このブックログに書評上げている人たちってレベルの高い人たちなのかな、と他の作者のレビューを読んだら大したことなくて、萩尾望都と竹宮恵子の読者のレベルが高い、と言う事なんだろうなと思った。

中でも美しいな、と思ったのがgonriさんという方の下記の一節。

以下引用

「大泉」の死によせて、竹宮惠子は壮麗な墓へ美しい花を手向けるように語るけれど、萩尾望都はいまだ埋葬も叶わぬその死体と暮らしていると悲痛に告げる。

引用終わり

 

あと竹宮さんの本を読んでると、やっぱり才能のある人は若いころから凄いんだな、と思ったのと、自分が不勉強なのかもしれないがお二人の傑作って初期の若いころに描かれたものが多いなと、才能って有限でいくらでもあふれてくるものではなく、出尽くしてしまうのかなとも思った。まあ、またそこから蓄積をすることで何度でも汲み上げられることもあるのだろうけど。

夢枕獏さんが「瑠璃の箱舟」で自分の胸の中の井戸にどれだけの深さがあって、どれだけの水が入っているのかは、水を汲んでみないと分からないんだ、と書いていたがやっぱり汲み尽くして涸れてしまう事があるのではないか。

あと、萩尾さんは少年愛に興味がない、と書いておられて、才能のある女性漫画作家はみんなそういうの好きなのかな、と思っていたのでそうじゃないと知ってホッとした。

竹宮さんは創作に見切りを付けて、大学教授に転身、最終的に学長にまで上り詰めて引退され今はマンガ原稿の保存などの仕事に取り組んでおられる。功成り名遂げて萩尾さんとも和解しゆったりと過去を振り返りたい所なのではないかと思うが、萩尾さんはとてもそんな気持ちになれなくて、逆に決別のために本を書かれた。
萩尾さんは、竹宮さんと増山さん(竹宮さんのブレーンだった方)との事は思い出したくない、と記憶を封印されているが、お三方だけじゃなく、そういった若くて才能と情熱をもって漫画と言う一つの仕事、というか夢に取り組んでいた少女達が全国から集まっていた大泉学園の2年間って、萩尾さんにとってもやはりかけがえのない黄金時代だったのだろうな、と思った。

萩尾さんが許さない限りどうにもならないだろうが、萩尾さんの本に書いてあるいきさつを知ると難しいかな、とも思うし、萩尾さんも頑なすぎるのでは、こんな本まで出さなくても、とも思うのだが、大泉学園の黄金時代が素晴らしすぎたから、逆に許すことができないのかもしれない。

竹宮さんの本のエピソードでは、上京したばかりの頃に下宿で来る日も来る日も漫画を書き続け、誰も知り合いがいないので、息抜きをかねて買い物かごを下げて外に出るのだが、一人で漫画を書くのは慣れてるから平気、と思っていた竹宮さんがふと通りがかった八百屋さんで店のおじさんに声をかけられて、泣き出してしまいそうになる話がよかった。でも竹宮さんは自分が寂しくて泣きそうになったのだとは思ってないらしく、ちょっと違った解釈しておられた。

そういえば、自分が子供の頃は夕方になると籐で編んだ買い物かご持っておばさん(子供の自分から見て)たちが商店街で買い物して、ところどころで集まっておしゃべりに興じてたものだ。今ではそんな光景を見ることはないけど。

もう一冊、竹宮さんの「少年の名はジルベール」という本もあるらしいが、そこまでは読む予定なし。

上記のレビューサイトの中でも書いてる方がいたが、萩尾さん、竹宮さん、お二人の知り合いで大泉の仲間だった城章子さんというしっかりとした芯の強い方がマネージャーとして萩尾さんのサポートをしておられるそうで、なんか火の粉が降りかかってきたときは萩尾さんの代わりに矢面に立って戦っておられるみたいで、ナイーブすぎる萩尾さんがそういった方の支えを得られて良かったな、と他人ごとながら思った。

城さんは萩尾さんの本のあとがきを書いておられるが、本の中でこのあとがきが一番理路整然としていた。

コメント
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