那須太社 錦輔 の日記

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成瀬は天下を取りにいく

2024-12-28 12:16:25 | 読書感想文

子供のころ、この小説の舞台である膳所に短期間住んでいたことがある。

幼い頃のことで割とすぐ引っ越してしまったため膳所の事はほとんど覚えていないが、引っ越し先が結構近かったので西武大津店がオープンした際には親に連れられて行ったおぼえがある。

西武百貨店の創業者である堤さんが滋賀県出身だから大津にお店を出さはったんやで、みたいなことを親が言っていた。今検索すると西武百貨店大津店が開業したのは1976年の6月のことで、2020年8月31日に閉店しているからもう50年近く前の記憶だ。

この本は実家の最寄り駅の駅前書店で平積みされていて、表紙の少女のイラストがキリッとしていて良いなと思って買おうかと思ったのだが、最近本を読めなくなっている事と、だから軽い小説なら良いだろうと「怪物の木こり」という文庫本を買ったらかなりつまらなくてライトノベルを買うのは止めようと思い図書館で借りた。

人気があるので順番待ちになりやっと最近貸し出してもらえた。

本を読むことが出来なくなっているので正月休み中に読めたら良いなと思っていたのだが、この本は割と楽にすぐ読みとおすことができた。

それほど劇的なストーリー展開があるわけではなく膳所の地元ローカル色濃厚な6つのエピソードからなるオムニバス形式で最後にうまく複数の物語が収斂されている。漫才のM1とか「いろはかるた」とかの流行り?が取り入れられている。破綻がなく作者はかなり頭の良い人なんだろうなと思った。

成瀬という主人公の造形が面白く、普通だったら男がやりそうなことを女がやっているのが面白い。

細かなところではびっくりドンキーで子供のころから同じメニューしか頼んだことがない、という設定が可笑しかった。

ただ、レッツゴーミシガンというエピソードで成瀬に一目ぼれする男子高校生が出て来るのだが、フワフワしていてなんか恋する少女っぽくて、そんな男子高校生いるか?やっぱり女性作家だから男の子を書いても中身は女の子になるな、と感じてこのエピソードだけはなんか違和感があった。

成瀬が女の子っぽくないさばさばしたキャラなのでストーリーも恋愛要素が入らず進んでいたところに、男子高校生目線で恋愛エピソードを挿入したのは、成瀬のそのさばさばしたところを描写したかったのではないかと思うが、男子高校生の友人が恋愛応援する筋立ても含めて嘘っぽいというか女の子っぽくて、このエピソードだけ読むのが少し苦痛だった。

続編も出版されているのでまたお借りして読んでみたい。

 

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蜜蜂と遠雷 恩田陸

2024-01-07 12:08:31 | 読書感想文

少女漫画を小説にしたような内容。

あるいはテレビドラマ的、とも思った。

といってもライトノベルのように軽くはない、と思う(ライトノベルをあまり読んだことがないけど)。

直木賞と本屋大賞をW受賞したそうで、書き込みの密度とかそれなりにあるのだが重厚感はない。

男性の登場人物が皆、汗のにおいのしない薄っぺらな設定。

途中まではそこそこ面白かったが、中盤以降から音楽論、芸術論が長々と続き読み飛ばしてしまった。

やはり女流作家の作品は自分には合わないと思った。

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3千円の使い方 原田ひ香

2023-09-24 08:46:18 | 読書感想文

結構話題の本らしいので読んでみた。

二つほど疑問点があった。

一つは、主人公の母親の父(つまり祖父)が、陸軍士官学校出身だったのでやろうと思えば料理などの家事をこなせる人だった、という設定。

この母親はバブル景気のころに学生時代を過ごした、と言う設定なのでその父親が陸軍士官学校を出ているというのはかなり無理があり違和感をおぼえた。

もう一つは、主人公の父が永年努めている職場で課長にもなれず次長と言うあいまいな職位に甘んじている、と言う設定だが次長というのは通常は部長の下、課長の上の役職なので、やはり違和感がある。

父の職場でのそういう立ち位置をあらわすなら、担当課長とか主査とか主幹等にしておけばいいのではないか。

疑問点はこの二点。

ちょっと調べればわかる事なのだが、たぶん作者は感性の人で、そういう細部の設定にこだわっていないのだろうと思う。そういった事より人の感情の移り変わりとか人間的成長みたいな心理的なところを描きたいのだろう。

 

それから、ネタバレになるが主人公の恋人が実は奨学金で大学を出ており、500万円の借金を背負っている、という事が分かり主人公の家族がこれを大問題とうけとめて結婚を認めていいのか議論となる。しかし、5000万円ならいざしらず500万円がそれほど問題になる金額なのだろうか?もちろん大きな金額だが自動車を新車で1台ローンで買えば2,300万円はかかるし、共働きならそこまで大きな負担にはならないのではと思うが。

借金の多寡だけでなく、その恋人の家族がかなり無責任な人達で、そういう人達と家族になれるのか、という点も大問題になった原因ではあるが。

 

あと、出て来る男性キャラが少女漫画っぽい汗の臭いのしない草食系の男ばかりで、いかにも女性が好みそうなキャラでやや白けた。

 

小説の場合、作家の性別で色合いというか形が分かれるもんだなあ、とあらためて認識した。

この作品はかなり女性的で自分にはあまり向かないタイプの小説だった。

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失踪願望。 椎名誠

2023-06-21 22:31:26 | 読書感想文

クスッと笑えるところもあって面白かった。

2021年から2022年にかけての日記。

2021年6月の誕生日で椎名さんも77歳になったという。

なんとなくちょっと上の兄貴分くらいのイメージを持っていたが、むしろ自分の親父の世代に近い人だったんだな。

椎名さんもコロナ対策はしておられたらしいが、つい気が緩んで皆で集まって飲んでたら、その会のメンバーが次々コロナに感染していったそうである。

そして椎名さんも記憶を失うほどの急な高熱に襲われて入院されたらしい。

実際コロナになった人に体験って聞いたことが無く、自分の父もコロナから肺炎を併発して病院の方に危なかったです、と言われたが隔離されているので全く様子が分からなかったので、後からそうだったんだ、と思ったくらいで、そんなに激しい症状が出るとは知らなかった。

しかし、幸いその会の感染者の方々は皆、回復されたのだが、そのお一人についてのコメントが面白い。

以下引用

40代で罹って回復した友人がいるので電話してみると「やっぱり頭がシャープに動いてない実感はあります。味覚も戻ってない気がします。ヒラメとカレイがどっちか分かりません」と言っていた。
そもそも彼はシャープでもなんでもなく、モツ煮込みに唐辛子をドバドバかけて「これが世界でいちばんうまい」と断言するようなバカ舌の持ち主だった気もするが、貴重なコロナの先輩なのでしっかり礼を言った。

引用終わり

こういう文章が面白い。椎名さんって自分からすると無骨で短気な印象があるのだが、ユーモアというか皮肉のセンスも卓越していてクスッとしてしまう。

椎名さんと野田さんが飼っていた犬のガクの写真が何枚か挟み込まれていて、子犬のころ玄関だろうか草履と一緒に転がって眠っている写真がとても可愛い。またもっと成長したガクが野田さんとカヌーに乗っている写真は凄く猛々しくて雄々しい。椎名さんもこの写真気に入っておられるんだろうな。

その野田さんの晩年のことも、この間読んだ本、題名忘れたがあの本より細かく書いてあった。

野田さんはカリスマ性があるので、好むと好まざるとにかかわらず、河口堰を作るなとかそういった運動にかかわるとそのシンボル的な立場に祭り上げられてしまうのだ、みたいな書き方をされていた。

もう十年以上の前の事だが、たしか中野区に住んでいたころ椎名さんが共産党のビラに、「私は共産党を支持します」というコメントを出しておられたのでもっと積極的な政治的志向を持っていると思っていたがそうでもなく、政治的な運動体はイヤなようで巻き込まれたくないみたい。

あと、初期の「あやしい探検隊」シリーズでは長老と呼ばれ、「新橋烏森口青春編」や「銀座のカラス」では蛇の専務として描かれた(と思う)山森さんの事も、割と率直に悪口というわけではないのだが、たんたんと美化する事もなく書いてある。

また、八丈島で漁師をやっている親友を北海道の別荘に招待した、ということが書いてあって、椎名さん別荘なんか持ってたんだ、とちょっと驚いたがそりゃ別荘くらいあるよねと思い直した。

 

自分は椎名さんに愛憎相反する、とまでは行かないが好きな気持ちと嫌いな気持ちがあって、つい批判的な目で読んでしまうがこの本は結構おもしろかった。

 

ちょと気になったのは、椎名さんと奥さんとは確か同級生だったと思うが、椎名さんが日常では全面的に奥さんに頼っている描写が随所にあって、自分は結婚してないし自分の親は夫婦生活に失敗しているし、良いな、良かったなと思う反面、もう少し頑張って欲しいな、とも思った。

なぜなら、椎名さんは奥さんに受け入れてもらってると思ってるかもしれないが、奥さんからしたらそんなことなくて、ガマンしながら付き合ってくれている部分があるかもしれず、あまり依存しすぎるのは良くない、危なっかしいなと感じたから。

まあ、息子さんやお孫さんたちが近くに住んでいるということだし、娘さんも時々NYから帰って来ておられるし、余計な心配だとはおもうが。

 

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官僚たちの夏 城山三郎

2023-06-08 23:51:23 | 読書感想文

城山三郎の本は初めてかもしれない。

前半は戦後まもなくの我が国の高級官僚の仕事ぶりが描かれ引き込まれたが、後半失速して尻切れトンボに終わった感がある。

池田勇人や佐藤栄作が仮名で登場するが、池田勇人が通産大臣を務めた1959年位からの舞台設定。

高文=高等文官試験等、戦前の文化を引きついだ男たち。

だが、敗戦を引きずっているような人物は全く登場せず、少しくらいそういう描写があってもよかったのではと思った。

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