子供のころ、この小説の舞台である膳所に短期間住んでいたことがある。
幼い頃のことで割とすぐ引っ越してしまったため膳所の事はほとんど覚えていないが、引っ越し先が結構近かったので西武大津店がオープンした際には親に連れられて行ったおぼえがある。
西武百貨店の創業者である堤さんが滋賀県出身だから大津にお店を出さはったんやで、みたいなことを親が言っていた。今検索すると西武百貨店大津店が開業したのは1976年の6月のことで、2020年8月31日に閉店しているからもう50年近く前の記憶だ。
この本は実家の最寄り駅の駅前書店で平積みされていて、表紙の少女のイラストがキリッとしていて良いなと思って買おうかと思ったのだが、最近本を読めなくなっている事と、だから軽い小説なら良いだろうと「怪物の木こり」という文庫本を買ったらかなりつまらなくてライトノベルを買うのは止めようと思い図書館で借りた。
人気があるので順番待ちになりやっと最近貸し出してもらえた。
本を読むことが出来なくなっているので正月休み中に読めたら良いなと思っていたのだが、この本は割と楽にすぐ読みとおすことができた。
それほど劇的なストーリー展開があるわけではなく膳所の地元ローカル色濃厚な6つのエピソードからなるオムニバス形式で最後にうまく複数の物語が収斂されている。漫才のM1とか「いろはかるた」とかの流行り?が取り入れられている。破綻がなく作者はかなり頭の良い人なんだろうなと思った。
成瀬という主人公の造形が面白く、普通だったら男がやりそうなことを女がやっているのが面白い。
細かなところではびっくりドンキーで子供のころから同じメニューしか頼んだことがない、という設定が可笑しかった。
ただ、レッツゴーミシガンというエピソードで成瀬に一目ぼれする男子高校生が出て来るのだが、フワフワしていてなんか恋する少女っぽくて、そんな男子高校生いるか?やっぱり女性作家だから男の子を書いても中身は女の子になるな、と感じてこのエピソードだけはなんか違和感があった。
成瀬が女の子っぽくないさばさばしたキャラなのでストーリーも恋愛要素が入らず進んでいたところに、男子高校生目線で恋愛エピソードを挿入したのは、成瀬のそのさばさばしたところを描写したかったのではないかと思うが、男子高校生の友人が恋愛応援する筋立ても含めて嘘っぽいというか女の子っぽくて、このエピソードだけ読むのが少し苦痛だった。
続編も出版されているのでまたお借りして読んでみたい。