soramove

読書と旅行と柴犬のブログ
目標は留学生に日商簿記3級合格を!
ヤプログから引っ越してきました。

「春、バーニーズで」(吉田修一)を、どう読むか

2004-12-24 18:11:12 | 読書の時間
156ページで1200円、
買い易い値段である。

しかしこの居心地というか、
読み心地の悪さは何だろう。
言葉は選びぬかれているようで、
どこか投げやりな部分もあり、
このあたりは最近の村上春樹のようだ。

読み心地が悪いと書いたが、サラリとしすぎてどうも、
引っ掛かりがなく、それが「何だ、これは」と
感じさせているのかもしれない。

だいたい「バーニーズ」であり、
「スーペリアルーム」を利用する
妻のいる男でたぶん30前後の主人公の、その言動が
どうも20代前半のようにしか感じられないのだ。
腹が出てきたという状況を知らせても、
そんな直接的なことじゃなく、文章の中で、
その人の年齢を感じたいのに、記号で示すことで
その作業を放棄している。

しかし悪くない短編集である。
何が良いって、わずか1時間足らずで読めることと、
その中にはちゃんと小説世界があること。
だから厳しいことを言いたくなる。

作品ごとに全く違う表情を見せてくれる、
作家性の強いこの小説家が、次に何を見せてくれるか
また新作を待つことにする。

@@@
是非チェックしたい吉田修一作品
「パレード」「パークライフ」「長崎乱楽坂」
とりあえずこのあたりを読んでおきたい。