soramove

読書と旅行と柴犬のブログ
目標は留学生に日商簿記3級合格を!
ヤプログから引っ越してきました。

「春の雪」心に雪は積もらない

2005-10-31 01:00:52 | 邦画
「春の雪」★★★☆
妻夫木聡、竹内結子 主演

仰向けに小船に寝そべる
主人公の恍惚にも似た
表情が画面を横切る

そして幼なじみの聡子が
あでやかな着物で登場、
彼女の顔を今度は下から
ゆっくりとカメラは横切っていく。


どのシーンもひとつの絵のように完結している。

同じ景色の輝く光に包まれた夏の日、
やがて同じ窓から、雪の降る光景が見える。

小説に書いてしまえば
一瞬のことも
視覚で表現するのは
難しいことと実感する。


主人公、清顕は
己の美意識から
自分の心のうちをうまく伝えられず
それが悲劇的な結末を導いてしまう。

こんなに有名な作家の作品を映像化するのは
困難な作業と思うが
作品世界は見事に映されていたと感じた。

しかしそれぞれのシーンを、あまりに
文章から想像した視覚的な展開にこだわるあまり
大事な「人の心」の描写が希薄になったのが
残念だ。


一枚の絵に収まった主人公たちは
動き、言葉を発していても
それが、見ているこちらには届かない、
それは完璧な一枚の絵にしか見えないから。


ただ、小説世界も
本心をありのままに伝えるのが不作法な時代に、
美意識にがんじがらめにされた
主人公の心の内はやはり、
何かに囚われていたのだとすると、
この映画は小説世界を
描ききったといえるかもしれないが
映画的な伝える何かを、
その一番大切な「何か」を
唯一描けていないのかもしれない。


美しい映画、主役も輝くほど美しい。
でも足らない、そこには伝える何かが決定的に欠落している。
残念。

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「残念」とまで書いているが、評価は★3つ半なので上々。
期待しすぎなので、見ても損ナシ。

絶賛した「蝉しぐれ」が出来が良すぎたので、肩透かしを
食ってしまったが、よく出来た作品だった。
ただ「蝉しぐれ」が、同じように美しい景色を描きながらも
ちゃんと絵の中から主人公の「心の声」が聞こえていたところが
決定的に違っている。

でもこの調子で、このレベルの作品を作り続けてほしい。
そのうちに唸るほどいい作品にめぐり合えそうだ。


「単騎、千里を走る。」高倉健さん、走る走る。

2005-10-30 09:05:11 | 邦画
「単騎、千里を走る。」★★★☆
高倉健主演、チャン・イーモウ監督作品
2006年1月公開予定、東京国際映画祭にて

10年来、音信の途絶えた
息子がガンで入院したと聞き、
逢いに行くが、病室の前で
拒絶されてしまう。

息子の妻から
渡されたビデオで息子の仕事ぶりを
初めて知り、また中国で
遣り残している仕事があることも知った。

ではその遣り残した息子の仕事を
自分がやろうと、彼は中国行きを決意する。

荒波に向かって身じろぎもせずに
立つ主人公の姿に何かが重なる。

意思の疎通の難しい場所で苦労し、
日本とは違う風習に戸惑いながらも、
この撮影が出来たら
自分は息子に近づけるのではないかというよに、
周囲を巻き込んでいく。

中国の奥地で撮影された風景は
息を呑むという言葉通りの絶景で
その中を小さな点のようになって
主人公は走る。

言葉が分かり合えても
意思を通わすことは難しい。

日本から遠く離れた地にいながらも、
息子が何を感じ、何を考えていたかが
やっと分かったような気持ちになれたのは
皮肉なものだ。

でもきっと、そんなものなのだ。

近くにいても、言葉にしなければ分かり合えない、
分かり合えたと思えても、
100%同じ思い思いというありえない。

それでも人間は、せっかくめぐり合えた人と、
なんとかはかない望みを持ちながら
言葉を発するのだ。

村で知り合った少年が
主人公からもらった笛を吹くことで
伝えたい何かを伝えることができたのだから、
言葉や文字には希望がある。

きっと耳を澄ませば、彼の吹く笛の音が
雑踏のすきまでも風に乗って聞こえるだろう。

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このい映画、中国映画なのだが「邦画」カテゴリーとした。


「愛シテ、イマス1941」フィリピン映画、東京国際映画祭上映

2005-10-29 00:35:45 | 香港・アジア映画
「愛シテ、イマス1941」★★★
フィリピン・アカデミー受賞作

東京国際映画祭、
「アジアの風」部門での
上映作品。

インドネシアが
日米開戦の中、
日本に支配されていた時代、
自国は自分たちで守るという
ゲリラ戦が盛んに行われた。

日本人の将校に
気に入られた女性は
実は男性で、彼は住民に
頼まれてスパイとして
将校と付き合うことを承諾した、
何より子供のころから好きだった
幼なじみに頼まれたからだ。

どう見ても男なのを
ファンタジーとして見るのだが、
やはりそこは戦争という時代背景で
殺しあうシーンもあり、
中途半端は否めない。

ただかつて第二次大戦中の
日本軍が他国からどのように思われていたのか
知ることもでき、ちょっと
胸が痛かった。

今更ながら日本はこういうことを
ちゃんと償っているのか気になった。
作品の出来よりも、作品が伝えた真実が
胸に響いた。

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「私の頭の中の消しゴム」ソン・イェジンの存在で成立する映画

2005-10-28 18:22:35 | 韓国映画・アジア映画
「私の頭の中の消しゴム」★★★★
ソン・イェジン、チョン・ウソン 主演

すべての音を消して
彼女のこわれそうな
笑顔を見ていたい。

光に溢れ
何も恐れず、疑いもせず
輝く笑顔を繰り返し、繰り返し。

傷ついた心を抱えながらも
お互い無垢のような心で
相手を受け入れる二人。

魂の出会いがあるとしたら、
この映画でその稀有な場面を見てしまったのかも。

劇的なことが次々起こるような映画じゃなく、
ラスト30分までは、何気ない日常を描く、
仕事やお互いの過去や
幸せな気持ちや誰もが感じることが積み重ねられていく。

でもそれはやはりとても大切なこと。
誰かと向き合うこと、
そして自分の立つ現在の環境
すべては計画なんてなく、訪れるもの。

役者の持つ資質を熟知して
うまく作り上げた物語を
一本の映画として普通に楽しみたい、
韓流ブームとかでなく
ここにはスターの輝きを持つ二人の役者がいる。

大切なことは忘れない?
仕事上ワリと多くの人と出会うが
見事に名前を忘れてしまう。
それは自分にとってそのくらいの関係だったのか?

答えはこの映画の中にもある。
大切なことは忘れない。
それはきっと形を変え、
自分の心を豊かにしてくれているのだから。

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「スクラップ・ヘブン」にオダギリジョーが飛んだ

2005-10-28 00:26:33 | 邦画
「スクラップ・ヘブン」★★★
加瀬亮、オダギリジョー、栗山千明主演

バスジャックに偶然
居合わせた
男2人と女1人。

「腐った世界を潰す」

加瀬亮が演ずる警察官が
オダギリジョー演ずる
清掃会社で働く男に
巻き込まれていく。

「初めから計画していたのか、オレが警官だから」

それは分からない。

「世界を一瞬で消す方法が分かったよ」

これもよく分からない。

ただもし、この手の中に
ほんの少量で大きな爆発を起こすものが
あったら・・・、
もしくは、多くの人の命を左右するものが
あったなら、
人はあるイミ、開放される。

自分がもっと大きな神のような存在に感じられそうだから。

オダギリジョーはこの映画の中でも
オダギリジョーであり続け、
とらえどころのない人間を嬉々として演じている。

「オレ、今なら飛べそうな気がする」

一方、加瀬亮の方は、
心情を吐露する場面で泣きすぎで
ちょっとこの映画の乾いた感じにそぐわない。

変わった映画でストーリーを追っていく見方だと
ツライ。
どこかに少し「切なさ」が欲しかった。

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栗山千明は義眼という設定なので
あの大きく美しい瞳をサングラスで隠している、
彼女はあの後、どこへ行ったんだろう。