soramove

読書と旅行と柴犬のブログ
目標は留学生に日商簿記3級合格を!
ヤプログから引っ越してきました。

フィナーレには程遠い

2005-02-09 21:37:39 | 読書の時間
「グランドフィナーレ」★★★
阿部和重著、200ページ、1400円

話題の芥川賞受賞作。
この人の作品は初めて読む。
これも芥川賞効果だ。

文章は新人の持つ緊張感はなく、
独特の世界があり、リズムがある。
ストーリーは今日的で、そういう切り込みは
時に普通じゃなさ過ぎる世界を書く
文学において、ちゃんと日常を書くのは
好感がもてる。

ただ内容はとても好感がもてない主人公が
うつむき加減に、後ろ向きに後ろ向きに
生きているお話。

ラストの物足りなさ加減は、作者の意図か。
好きな人にはこの余韻が楽しめるのかもしれない。

いつも本を読んだときに自分に聞く。
「ここに文学はあるのか」

すでに新人とはいえない作家の作品ながら、
この一作を読んだ限りでは、残念ながら
「文学」を感じられなかった。
「とんでもないもの」を読んでいるという
予感も緊張感も味わえなかったのが本音。

@@
書いた後で、ネットでしばらく情報を拾うと
ひとつの町、そしてトキという鳥のキーワードと
彼の本の読者は、この新作からも「大きな」物語の
断片を見つけることができるようで、
村上春樹のファンに似た、深読みの楽しみが
既にあるようだ、こうなるとホント新人?という
感じで、芥川賞は不向きじゃないかな。
本人的にはどうなんだろう。

他の彼の本も読みたいと思った。