西穂高岳(西穂)山頂から奥穂高岳(奥穂)方面へはいきなり急な下りが続き、間ノ岳までは大小のピークが幾つか連続し、間ノ岳と天狗の頭の間には大下りと大登りがあり、その間の最低部は間天のコルと呼ばれる。コルとは鞍部(あんぶ)のことで、馬に人が乗るために置く鞍の中央部が低くなっていることに由来する。
また、尾根筋の両端は切れ落ち緊張感が続く。コース全般は平坦な部分が1mも無いところも多く、もし落ちたらあの辺りで止まるだろうな、下まで何百mも落ちるだろな、と少しは考える。しかし目の前の手足のホールドを探すことに神経を集中するため、そんな恐怖感はなくなって「いいね、快感!」と叫んだりする。全神経を集中して手足と体を動かすこと、最も原始的な作業を続けること、単純にそれが醍醐味かも知れない。
岩登り初心者の基本は、岩場では手と足のホールドを探し、常に手足の4点のうち1つしか移動せず、他の3点は岩場に確保する。いわゆる三点確保の基本を忠実に守って動かす。そんな作業の繰り返しだ。見かけは難しそうなルートでも手足のホールドは充分にあり、危険な箇所には最低限のクサリが設置されている。
間天のコルから天狗の頭に登る途中に有名な逆層スラブがあるが、意外に小さな割れ目(クラック)があり、補助のクサリを使って登ることができる。ただ、専門家はクサリは使わず、自分の手足と道具のみ信用しなさいという。また、雨や霧で岩の表面が濡れると、スラブに限らず靴の摩擦が効かず滑るので危険この上ない。やはり晴天で風の弱い日を選ぶことが安全につながる。 (続)
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