個人的評価:■■■□□□ (最高:■■■■■■、最低:■□□□□□)
昨年「アヒルと鴨のコインロッカー」で、新人監督を対象にした映画制作者協会の賞「新藤兼人賞」の金賞を受賞した中村義洋監督の作品・・・・ということで期待して観に行った。原作は読んでいない。
推理ミステリーとか医療サスペンスを期待して観に行くと、ストーリーのあまりのつまらなさにがっかりする。
しかしこの映画は、そもそもストーリーを語ることなど目的にはしていないのかもしれない。もっと「どうでもいいこと」をネチネチと描くポップな作品にしたかったのだろう。それにしてもうまくいってるとは思えないが。
ストーリーはどうでもいい・・・と言いつつもストーリーに対する不満をネタバレでぐだぐだ書く。
要するにMRI調べたら犯人わかりました・・・・というだけの話なのに無駄に引っぱりすぎ。
マイアミでの調査とか、リーダーの外科医の視覚障害とか、チーム・バチスタ内の人間関係とか、全く事件と関係なし。
まるで・・・第1問から第9問までは正解者に10点で進めておきながら、最終問題は正解者に200点です!!ってじゃあ今までのクイズなんだったんだよ・・・みたいな
・・・何もかもチャラにする唐突な事件終結に腰砕け。
医療をネタにした意図も不明。
心臓外科に関してはド素人同然の竹内結子に「ま、君でもいいか・・・」と手術連続失敗に関する調査を依頼する院長(國村準)。このでだしから病院側はまともに手術失敗の調査などする気はなく、形式上の調査だけやって体面保とうとしているのが見え見えである。だから病院の腐敗を描くのかと思ったら、殺人事件だったとわかると病院は潔く記者会見を開き、全面的に責任を認めて謝罪する。そんな展開が面白いハズない。
俺が原作者か脚本家だったら・・・・病院は当然事件を隠蔽しようとして、役人の阿部寛も政治的思惑からそれを黙認しようとし、憤りを感じた竹内結子がクビ覚悟でマスコミに事件を暴露して、そこで初めて阿部寛があいつなかなかやるなと竹内を認める・・・・というような展開にする。
阿部寛のキャラの意図もわからん。
途中から阿部寛がしゃしゃり出て事なかれで終わるところだった事件をぐちゃぐちゃかき回し始め、竹内結子がオロオロする・・・というのは面白い。
しかし阿部寛が、「かき回すだけかき回して終わってみれば何の役にもたってない」というキャラにするならコメディとして面白くなるし、「阿部寛がぐちゃぐちゃかき回した結果、偶然竹内結子が事件の真相に行き着く」とするならヒロインとしての存在感も上がるのだが・・・・
この映画は、結局阿部寛がかき回すだけでなく事件の解決までしてしまう。スーパーヒーローである。おまけにヒロイン竹内結子は結局何もしていない。
権力もあり頭脳明晰な阿部寛の上から目線は、最後まで変わることなく、ヒロインはひたすらにバカで役立たず。庶民としては楽しめる要素なしで、役人の上から改革を讃え媚び売ってるような物語に思える。
*******
と、ボロクソ言ってはみたものの、最初にも言ったように、ストーリーを語りたい映画ではないと思う。
軽妙な語り口に、その場その場の思いつきギャグをまぶして、軽く軽く、なるべく頭使わせないように映画は進む。
反復される竹内結子vs阿部寛のソフトボール対決とか、それにおけるナイター照明の爆発とか、患者の屋外プチライブとか、容疑者たちを動物に例えてイラスト付きの調書を書くとか、そんな本筋とは関係ない「どうでもいい」ところに愛情を注いで撮っているような印象がある。
阿部と竹内の演技も、いつも通りといえばそれまでだが、軽すぎるくらい軽くてテンポ良く、観てて楽しい。
骨格となるストーリーはヘボでクズだが、むしろ贅肉部分を楽しんで造形しているような映画。
どうでもいい無駄なものの寄せ集め。それ単体ではしょうもないガラクタを寄せ集めて映画という形にしてしまう。
つまりポップなんだよね。
ただ、ちょいと遠慮気味というか、不完全燃焼な印象は拭えない。
どうせやるなら、もっともっと派手に。
たとえばソフトボール対決でのホームランボールがナイター照明を壊すところなんか、照明一個が火花噴くだけじゃ爽快感がない。
バリー・レビンソン監督、ロバート・レッドフォード主演の『ナチュラル』という映画がある。
ホームランボールがナイター照明に当たって照明が壊れるという、同じシチュエーションがあるのだが、『ナチュラル』では一個の灯体が破損しただけなのに何故だか知らんが球場の全ての照明が一斉に爆発し、レッドフォードが土砂降りの火花を浴びながらダイヤモンドを一周するのだ。意味不明だが派手で美しい。やりすぎパワーの前には有り得へんという理性など無意味でただ美しさに圧倒されてしまう。
それくらい「やりすぎちゃいました」なオーバーヒートしたポップ演出にしてくれたら傑作になったかもしれない。
まあそんなわけで無理矢理面白さを見出すこともできなくはないが1800円払ってまで見る価値は無い。
面白い日本映画が観たいなあ・・・
********
↓面白かったらクリックしてね
人気blogランキング
自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
昨年「アヒルと鴨のコインロッカー」で、新人監督を対象にした映画制作者協会の賞「新藤兼人賞」の金賞を受賞した中村義洋監督の作品・・・・ということで期待して観に行った。原作は読んでいない。
推理ミステリーとか医療サスペンスを期待して観に行くと、ストーリーのあまりのつまらなさにがっかりする。
しかしこの映画は、そもそもストーリーを語ることなど目的にはしていないのかもしれない。もっと「どうでもいいこと」をネチネチと描くポップな作品にしたかったのだろう。それにしてもうまくいってるとは思えないが。
ストーリーはどうでもいい・・・と言いつつもストーリーに対する不満をネタバレでぐだぐだ書く。
要するにMRI調べたら犯人わかりました・・・・というだけの話なのに無駄に引っぱりすぎ。
マイアミでの調査とか、リーダーの外科医の視覚障害とか、チーム・バチスタ内の人間関係とか、全く事件と関係なし。
まるで・・・第1問から第9問までは正解者に10点で進めておきながら、最終問題は正解者に200点です!!ってじゃあ今までのクイズなんだったんだよ・・・みたいな
・・・何もかもチャラにする唐突な事件終結に腰砕け。
医療をネタにした意図も不明。
心臓外科に関してはド素人同然の竹内結子に「ま、君でもいいか・・・」と手術連続失敗に関する調査を依頼する院長(國村準)。このでだしから病院側はまともに手術失敗の調査などする気はなく、形式上の調査だけやって体面保とうとしているのが見え見えである。だから病院の腐敗を描くのかと思ったら、殺人事件だったとわかると病院は潔く記者会見を開き、全面的に責任を認めて謝罪する。そんな展開が面白いハズない。
俺が原作者か脚本家だったら・・・・病院は当然事件を隠蔽しようとして、役人の阿部寛も政治的思惑からそれを黙認しようとし、憤りを感じた竹内結子がクビ覚悟でマスコミに事件を暴露して、そこで初めて阿部寛があいつなかなかやるなと竹内を認める・・・・というような展開にする。
阿部寛のキャラの意図もわからん。
途中から阿部寛がしゃしゃり出て事なかれで終わるところだった事件をぐちゃぐちゃかき回し始め、竹内結子がオロオロする・・・というのは面白い。
しかし阿部寛が、「かき回すだけかき回して終わってみれば何の役にもたってない」というキャラにするならコメディとして面白くなるし、「阿部寛がぐちゃぐちゃかき回した結果、偶然竹内結子が事件の真相に行き着く」とするならヒロインとしての存在感も上がるのだが・・・・
この映画は、結局阿部寛がかき回すだけでなく事件の解決までしてしまう。スーパーヒーローである。おまけにヒロイン竹内結子は結局何もしていない。
権力もあり頭脳明晰な阿部寛の上から目線は、最後まで変わることなく、ヒロインはひたすらにバカで役立たず。庶民としては楽しめる要素なしで、役人の上から改革を讃え媚び売ってるような物語に思える。
*******
と、ボロクソ言ってはみたものの、最初にも言ったように、ストーリーを語りたい映画ではないと思う。
軽妙な語り口に、その場その場の思いつきギャグをまぶして、軽く軽く、なるべく頭使わせないように映画は進む。
反復される竹内結子vs阿部寛のソフトボール対決とか、それにおけるナイター照明の爆発とか、患者の屋外プチライブとか、容疑者たちを動物に例えてイラスト付きの調書を書くとか、そんな本筋とは関係ない「どうでもいい」ところに愛情を注いで撮っているような印象がある。
阿部と竹内の演技も、いつも通りといえばそれまでだが、軽すぎるくらい軽くてテンポ良く、観てて楽しい。
骨格となるストーリーはヘボでクズだが、むしろ贅肉部分を楽しんで造形しているような映画。
どうでもいい無駄なものの寄せ集め。それ単体ではしょうもないガラクタを寄せ集めて映画という形にしてしまう。
つまりポップなんだよね。
ただ、ちょいと遠慮気味というか、不完全燃焼な印象は拭えない。
どうせやるなら、もっともっと派手に。
たとえばソフトボール対決でのホームランボールがナイター照明を壊すところなんか、照明一個が火花噴くだけじゃ爽快感がない。
バリー・レビンソン監督、ロバート・レッドフォード主演の『ナチュラル』という映画がある。
ホームランボールがナイター照明に当たって照明が壊れるという、同じシチュエーションがあるのだが、『ナチュラル』では一個の灯体が破損しただけなのに何故だか知らんが球場の全ての照明が一斉に爆発し、レッドフォードが土砂降りの火花を浴びながらダイヤモンドを一周するのだ。意味不明だが派手で美しい。やりすぎパワーの前には有り得へんという理性など無意味でただ美しさに圧倒されてしまう。
それくらい「やりすぎちゃいました」なオーバーヒートしたポップ演出にしてくれたら傑作になったかもしれない。
まあそんなわけで無理矢理面白さを見出すこともできなくはないが1800円払ってまで見る価値は無い。
面白い日本映画が観たいなあ・・・
********
↓面白かったらクリックしてね
人気blogランキング
自主映画撮ってます。松本自主映画製作工房 スタジオゆんふぁのHP
あれは『ナチュラル』をやりたかったんだ。
この『ナチュラル』、
ぼくが観た唯一のドライブイン・シアターでの作品。
いま、懐かしく思い出しました。
えーー、それよりも予告で見たチャン・イーモウの新作にぶっ飛んでしまいました。
ユンファ登場でしたよ。
あれ?題名なんだっけ?
楽しめそうですよ。
あのコメント、そう使いましたか・・。
さすがです。
ドライブインシアターってのがなんとも時代を感じますです
それがいっぱいあったころはボクははな垂れのガキだったので、「ドラキュリアン」でドライブインシアターの映画を画面だけ観てるガキとかうらやましかったです
>sakurai さま
ユンファは契約の問題か何かでもめたらしくチャン・イーモウはあいつは二度と使わないとか激怒したとか何とか
チャン・イーモウの映画で懲りたのか、せっかくのジョン・ウーとのコラボ復活「レッドクリフ」も北京語で作品と聞くやさっさと降板
あげく、ギャラにつられたのか亀仙人役のオファー受けるとか、最近残念なニュースばかりのユンファです
もうもう
バカユンファ
ばかばか
あのユンファは、昔なつかしのかっこええユンファでした。
亀仙人ですかあ・・・。でへ、見たいわ。
ユンファの亀仙人演技が見えるようです。
「男たちのバッカやろう」とか「フルブラッド」とかの「あいやー」とか言いながらおどけたり、ニカニカしながらちょっとエッチなことしたりして、女の子にぶっ叩かれたりするんでしょう・・・
ああいうユンファも好きだけどさ・・・
あんなことするためにハリウッド行ったのかよおまえは・・・
ウーと組んで周瑜だか孔明だかやったらどんなに様になったことか
しかもレッドクリフ、ユンファの代わりに金城武ってジョン・ウーのキャスティングもヤケクソとしか思えまへん
昔懐かしのかっこええユンファをもっと観たいわん
「挽歌」の韓国リメイクも気になるけど
原作読んで面白いと思ってたんですが、映画は面白い所をザックリ切り取ってた印象です。
内部調査を拝命した田口医師にも意味があり、命じた院長にも思惑があった訳ですが、出てきません。
探偵白鳥も色々過去に傷あり、現場を混乱させるのも意図してやってた、と、アクティブフェーズなるテクニックも興味深い物がありました
映画は上っ面だけで終わってしまって、余計な映像も機能してなかったという
そんな印象でした
余計な映像を楽しみたかったけど、うまくいかなかった・・・そんな感じでしたね。
ただベストセラーを無視して映像遊びを許したプロデューサの姿勢は、小説より映画が好きな(メディアとして)、私にはいい印象に写ります。
面白くなきゃ意味ないですが・・・
「ナチュラル」オマージュのシーンはCGでしたね~。ロバート・レッドフォードはほんまにホームランを打ったと言いますが、阿部ちゃんも打ったんでしょうか?
そういうの読むと「アヒルと鴨~」が観たくなりますね~
面白そう
>aq99さま
阿部寛キャラは面白かったですけどね
話がダメだとキャラが立ってても
ホームラン、まさか打ってないでしょうが、打つ瞬間に「あたぁ」とか叫んでくれたら良かったのに