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すずりんの日記

動物好き&読書好き集まれ~!

小説「龍の目(まなざし)」②

2005年05月09日 | 小説・短編、他
 半年を過ぎた頃だったでしょうか。その「目」を彫ったのは。・・・なぜ、そうしたか、って?それは、刑事さん、無性にそうしたいという衝動に駆られてしまったから、と言うより、言いようがありません。私はその時から、その龍を、いえ、その「目(まなざし)」を直視することができなくなったのです。・・・いいえ、あるいは、彼自体に、何か親愛を超えた感情と、それを後ろめたいと思う気持ちを抱くようになっていたのかもしれません。
 しかし、彼のうなじ、彼の肩、彼の腕、彼の背筋、・・・よりももっと魅力的で、しかも私を捉えて放さないものが、あの龍、そして、あの、龍の目だったのです。

 こう言うと、自画自賛をしているだけだろうと思われるでしょう。あるいは、私のことを傲慢な男だと・・・。しかし、それは全くの誤解です。私はあの「目(まなざし)」に、確かに惹かれてはいました。と同時に、恐怖心を抱いてもいたのです。

最初は、あの「目(まなざし)」が私を見ているような気がする、という程度でした。その後、何度か、その「目(まなざし)」を見返すようになり、私は、その度に、そこから目を逸らせなくなっている自分に気づくのでした。そのくせ、やっとのことで、我に返って目を逸らすともう絶対その「目(まなざし)」を見るまいと思うのに、次の日彼が私の元に来ると、彼の背中を、彼の背中のあの龍を、あの龍の「目(まなざし)」を、見たくて見たくて全身が興奮しているんです。

 恥ずかしい話ですが、恍惚となって、仕事が手につかなくなり、具合が悪くなったと言って、彼を早く帰した後、自慰に耽ったことも、何度かありました。


(つづく)
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