すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

在宅介護

2010-10-26 21:38:54 | ひとりごと
 ある担当者様の話である。その方は齢95。奥様も同年代でご健在。ご長男夫婦と同居されている。
 お年がお歳なのである程度の認知症はあるが、お元気でデイサービスに背筋をぴんと伸ばして来られていた。
 それが、急に寝たきりになった。所謂老衰に入ったのである。お嫁さんは介護に献身的だが、奥様が高齢であるのに世話をする。私たちにも
 「私がしても恥ずかしがるから・・・。」
と話す。嫁姑の確執がないわけではない。しかしお互いにより良い介護をしたいと言う思いは同じである。
 奥様の着替えではどうしても上手くいかない。介入すると機嫌を損ねるので、任せているが時々手伝う。食事は栄養バランスを考え、お嫁さんが手作りする。出来るだけ自分で食べて欲しいお嫁さんと、手伝ってしまう奥様。お食事に出来るだけ
 「お父さん、これは卵ですよ。おいしい?」
と声をかけたいお嫁さん。静かに見守りたい奥様。
 認知症で
 「ここは我が家じゃない。」
 「今東京に行って来た。」
と話す。
 「そう、じゃあ後で一緒に帰りましょうね。」
 「あら、東京ですか。」
と話をあわせて笑うお嫁さん。逆らわないと決めている。
 奥様にはそれが出来ない。変わっていく「つれあい」に涙が出る。目の前に「自分の末路」が見えてしまう衝撃もある。
 私には二人ともが愛しく感じる。お二人とも一所懸命なのである。どちらもが精一杯の在宅介護を目指している。ただ、相容れないところがある。
 「箸は使えないからスプーンなのだけど、金属は冷たくて嫌。プラスチックは味気ない。知り合いに頼んで作ってもらった。」
とお嫁さんが竹で出来たスプーンを見せてくださった。
 これ一つ見ただけで、ご家族がどれほど愛情深いか分かるような気がする。




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コメント (4)
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