すずしろ日誌

介護をテーマにした詩集(じいとんばあ)と、天然な母を題材にしたエッセイ(うちのキヨちゃん)です。ひとりごとも・・・。

医者様のお言葉・・・・

2007-03-08 19:02:58 | ひとりごと
 父は病気のデパートなので、それはそれはいろいろな医者様にかかっている。医者様だって人間だ!と十分承知していながらも、やはり患者は医者様の言葉に一喜一憂する。
 ある医者様は、ある時吐血をした父にこういった。
 「たぶん、大丈夫と思いますけどね。レントゲンの結果は変わらないので。でも、安心しないでくださいね。血吐いて死んだ人は、私いっぱい見てますから!」
 内容が同じでも、他にいい方はないものか?別に父が不良患者であるわけでもなく、努力を怠っているわけでもなく、しかも、ナイーブなのに。
 医者様は「ベテラン」だから素晴らしいというわけでもない。若い医者様が返って正直者でしったかぶりをしない分信頼できる。また、頼りないなりにも「何とかしよう」といろいろ努力する。これが年寄りには大切なのだ。自分に「精一杯力を注いでくれている」と感じることなのだ。メンタルな面でかなり救われる。
 先日、ある若い医者様が血液検査の結果を見てこう言った。
 「貧血の数値がね、先月より1ポイントも良くなってますよ。ただね、鉄分が足りないんです。鉄分が足りなくて、貧血が良くなりつつあるってことは、鉄をちゃんと使ってるってことだとは思うんですよ。でもね、この量じゃ、すぐ材料がなくなっちゃうでしょ。だからしっかり食べて、材料補給しなきゃ。お野菜嫌いですか?青汁は飲めるの。何でもいいですよ。お肉好きならしっかり食べて、青汁も飲んで、とにかく鉄分増やしましょう。」
 良くなってると悪くなってる。この二つが話に混ざっているところが、ミソなのだ。悪いばかりじゃやる気は起きない。良いことばかりじゃ嘘だし、進展がない。でも、良くなってるんだから、もうちょっとがんばりましょう・・・ってところがいいじゃないか。しかも、説明がわかりやすい。
 医者様の言葉は、患者にとっては神の声だ。その一言で殺されすらする。だからこの励ましは、父には良かったようで、それから少しやる気になった。食は相変わらず細いのだが、ランダムに飲んでいた青汁を定期化した。豆乳も飲んでみる。ごはんもちょっぴり頑張ってみる。
 食べてみると、当然からだが少し楽になる。身体が楽だと、また少し食べられる。食べられると本人の自信につながる。
 いつまで続くかは分からないが、今は若い医者様さまさまだ!


にほんブログ村 介護ブログ 介護職へ←ここをクリックしてお立ち寄りください。
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

思い込み(バックナンバー)

2007-03-07 00:14:41 | うちのキヨちゃん
 物の名前を大きく思い違いすることの多いキヨちゃんだが、名前に限らず思い込みの多い人ではある。
 ある人が怪我をして入院したという話があり、その報告を親類から受けた時だった。
 「何でもな、あの人足の付け根を骨折したらしいんよ。」
 「まあ、大変じゃなあ。」
そんな会話をし、見舞いの段取りをしていた。戻ってからその報告を今度は父にしたのだが、その時にキヨちゃんはこう伝えていた。
 「あの人な、足首を骨折したんやって。」
おいおい、場所がずれているではないか。すかさず私が訂正すると
 「ほなけん(だから)足首と言いよるでえ。」
等という。
 私は思わず自分の足を持ち上げて
 「足首ってのは、ここよ。」
と指さしてしまった。これにはさすがのキヨちゃんも怒り
 「わかっとるわ、そんなこと。」
と言い放った。
 気まずいしばしの沈黙の後、静かにキヨちゃんは聞いた。
 「足の付け根・・・って、どこ?」
 どうやらキヨちゃんは、この日まで足の付け根は足首と思い込んでいたらしい。大地に近いから「根」と思っていたのだろうか?謎である。


ブログランキング・にほんブログ村へクリックしてお立ち寄りください。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

長寿

2007-03-05 20:55:28 | じいとんばあ
    長寿

姉ちゃん うっちゃ 早う死んだらええのに
何で お迎え来んのだろう

足が少し不自由だったあなたは
それでも まだまだ元気だったから
勤めて明るく励ました

人には生き分があるらしいけんね
まだまだ 良いことあるよ
どうせ 逝かないかんのじゃけん
慌てて 逝くことなかろうよ

私の言葉に笑ったあなた
やがて 自分の足で立てなくなった
自分で ご飯を食べられなくなった
口から物を 受け付けなくなった
身体の曲げ伸ばしも 辛くなった

体中腫れて
うめき声しか出せなくて
どんなに洗っても 薬を塗っても
どんどん 身体は傷ついた

あんなに 早う死にたいと言いよったのに
こんなになるまで 生きないかんの?
口にしてはならない 本音が
私たちの心を占める

あなたが 旅立った日
曲がった身体は しゃんと伸びてた
真っ黒な肌は 信じられないくらいきれいな肌になってた
そして顔は とてもとても穏やかだった

よく がんばったね
もう 痛うないけんね
もう 辛うないけんね

ほほに触れながら
私は がんばれと言った自分を責めた


にほんブログ村 ポエムブログへ

ここをクリックしてお立ち寄りください
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天然姉妹(バックナンバー)

2007-03-02 11:38:58 | うちのキヨちゃん
 キヨちゃんには、九州に姉妹がいる。そのほとんどが同じような明るい天然系である。彼女たちの笑い声と共に繰り出されるマシンガントークは、お国訛りも手伝って、大変ヒアリングが難しい。
 みんな焼酎が好きで、よく飲みよく笑い、よく食べる。そしてみんな涙もろく、情に厚く、わんわん泣きながら話すのである。
 ある日、一人の姉から電話が入った。何でもキヨちゃんの幼なじみの連絡先が分かったとかで、教えてくれるためにかけたらしい。若くして四国に来たキヨちゃんにとって、幼なじみは何より連絡したい相手に違いない。
 嬉しそうにメモを片手に、キヨちゃんは姉の言う電話番号を復唱していた。
 「ふんふん、08××―××―△△△△ 。」
ふと聞くともなしに耳に入ってきた聞き覚えのある番号に、私はメモをのぞき込んだ。そこには紛れもない我が家の番号が書かれていた。
 「これでいいんじゃな、〇〇ちゃんの番号は。」
何の疑問も持たず納得しようとしているキヨちゃんに、私は慌てて忠告した。
 「お母さん、それ家の番号。」
 「え?まあ!」
と初めて気づいたキヨちゃんは、姉にその事を指摘し電話を切った。そして姉を心配する。
 「困ったもんじゃ。ぼけたんかいな。」
 しかし思うのである。妹の家の番号を他人の番号と間違える姉も姉かもしれないが、そもそもどちらもよその電話である。間違えても仕方ないと思うのである。
 それならば、復唱しながら我が家の番号と気づかないキヨちゃんの方がひどいのではないか。
 「姉さん、しっかりしなよ。」
電話をかけ直し、そう注意するキヨちゃんに小声で
 「お前もな。」
と突っ込まずにはいられなかった。


にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ
ここをクリックして、お立ち寄りください。



コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする