親獅子(三津五郎)、仔獅子(巳之助)の花道の出
昼の部は新歌舞伎である真山青果の「頼朝の死」、中幕は三津五郎三代追善の「蓮獅子」。
切狂言は黙阿弥の世話狂言「加賀鳶」と多彩である。
まず中幕の三津五郎、巳之助親子による「連獅子」。
三津五郎、巳之助親子ふたりは本公演初役だというからおどろいた。
「蓮獅子」は”石橋物”といいながら、厳しい獅子の子育てが描かれている。
それが歌舞伎の”芸”の伝承に励む親子の姿とオーバーラップする。
三津五郎の前半清涼山の描写がまことに丁寧かつ端正である。
「人のたしなみ・・・」で膝をついたまま上手を振り返る色気。さすがである。
あたりまえのことかもしれないが、扇子ひとつで山の険しさ、谷の深さをみごとに表現した。
仔獅子を蹴り落としてのハラに憂いを見せた。
対する仔獅子の巳之助はきびきびした動きと力強さがあって申し分がない。
しっかりして頼もしい。今後が楽しみである。
話は変わるが、今年の9月に国立劇場の「俳優祭」で、踊り」「春駒」を見た。
平成生まれの歌舞伎役者ばかりの出演で「曽我対面」をもじった舞踊劇だった。
その中で巳之助は曽我五郎を踊った。もちろん”むきみ隈”のかお(化粧)ではない。素顔の若者である。
素踊りとはいえ素晴らしい出来栄えだった。藤間流家元の振り付けである。
それと、もう一つ。
ことし2月に博多座で見た染五郎、亀治郎の清元「三社祭」もよかった。
わずか20分の所作事だが、いつもなら長く感じられる踊り。正直このときばかりは5~6分ぐらいにしか感じなかった。
テンポがよく、踊りの面白さを堪能した「三社祭」であった。
さてその成長株巳之助が「加賀鳶」の序幕「本郷木戸前勢揃い」に出る。
加賀藩お抱えの大名火消しと町火消しの諍いである。
巳之助は前髪でまさかりの鬘。若衆火消しである。
江戸時代に衆道の流行で禁止になった美少年による「若衆歌舞伎」を彷彿させる。
黙阿弥得意の流麗なツラネも、花道で旬の花形役者が揃い、名乗りをきかせる姿は壮観である。
江戸歌舞伎の洗練さと粋が感じられる舞台であった。
最後になったが真山青果の「頼朝の死」。
梅玉の頼家は初演からの持ち役。
さすが青果調の音吐朗々たるせりふはお家芸になってきた。
錦之助の畠山重保は、この出し物でいちばん”おいしい役”なのだが、あまりにも苦悩を見せようとして、逆に性根のない武士にみえてしまう。
錦之助のニンだけに惜しい。
頼朝の「死」というミステリアスな悲劇がもう少しリアリティが出ればいいのだが。
▼ こんな写真も撮りました ▼
幕間は地下にある食堂「あずま」で松花堂弁当の”篝火”(←7.000円}。
築地の魚河岸に近い劇場だけに、お刺身は最高!!お味は京風でした。
わたしの大好物「さざえのつぼ焼き」がありました。ほんとに美味しかったです。
ちなみにお料理「篝火」の名前は、夜の部「盛綱陣屋」で魁春(加賀屋)さんが演じたお役の名前から。
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