このところ夢中で読んでいるのが『落語・歌舞伎あわせ鏡』(三一書房)。
もともと歌舞伎は、人形浄瑠璃から発した、いわゆる”義太夫狂言”が大半ですが、落語、講談を基にしたものも少なくありません。
まあ歌舞伎と落語とは表裏一体になっているといえるでしょう。
ある落語ファンが「歌舞伎は楷書の芸で、落語は草書か行書の芸」だと言いました。
うまいこと言ったものです。
歌舞伎を知っていると、落語が数倍面白くなる、これも道理です。
今日まで繰り返し歌舞伎で上演されている『忠臣蔵』。
上演すれば必ず当たる芝居とされているだけに、落語、講談などの寄席芸にも、大きな影響を及ぼしたのは当然と言えましょう。
『落語忠臣蔵』と題したCD集も発売されているようです。
この『仮名手本忠臣蔵』というお芝居は全11段もある超大作です。
わかりやすくいうと、本でいえば1巻から11巻まであると思ってください。
大序から11段目までその殆どが落語化されています。
11段のなかでも人気があるのが『七段目』。
なぜ「七段目」がそれほど人気があるのでしょうか?
「忠臣蔵」の中でも、「七段目」は華やかな”茶屋場”が舞台で、まことに色っぽい場面なんです。
さらに言えば、舞台になっているのが京都祇園のお茶屋さん。
関東の方は、お茶屋さんといえば、お茶を売っているお店だと思われがちですが、芸妓さんと遊ぶ料亭のことです。
今も祇園にある『一力亭』という老舗の料亭が、『七段目』の舞台です。
さて落語『七段目』もかなり長~いお噺です。
ですが噺家が、役者の声色を使って一席やりますと歌舞伎好きにはたまりません。
そこで『七段目』のサゲのところをご紹介して、お後はお預かりとさせていただきます。
芝居好きの若旦那が二階で手代の定吉を相手に『七段目』の芝居の物まねを始めますが、夢中になった若旦那の平右衛門が腰に差した本身の刀を抜くので、定吉のお軽が逃げるはずみに階段から落ちて気絶してしまう。
店の旦那が定吉を助け起こしてー
「二階で馬鹿野郎と芝居の真似、てっぺんから落ちたか?」
「いいえ、七段目」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます