おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
いろいろ活動してます
そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

太陽の降る村・序章

2017年11月12日 08時24分57秒 | SUKYSH CLOUD
 お母さん。
 呼びかけた。
 なにも応えは無い。
 それでも信じている。私は魂の存在を。
 私がこんなになっても、母は私を見詰めてくれている。見捨てないでいてくれる。
 私が動けなくなっても。話せなくなっても。食べる事もできず、ただ植物と同じ光合成で栄養を得て、根から水分を得て、人としての機能を完全に失っても。
 あなたのひ孫は元気です。彼女は村を出ていった。私を見捨てて出ていった。
 けれどそれは私の望んだ事。仕方のないこと。運命には逆らえない。ひとりの人生が流れる力には、何ものも抗えることは出来ない。
 貴女のひ孫は生きる力を得ました。本来の人生を歩き始めた。
 私が引き留めて、とどめていた彼女の人生の流れが、本来の姿を取り戻して、輝き始めた。
 村に立ち寄った旅の少年。彼に導かれて、彼女は輝きを取り戻した。彼は、あなたのひ孫の人生になくてはならなかった人物に違いない。そして今、彼女は彼に出逢った。
 彼女の人生が、いま再び走り出した。

サキシュクラウド(1)

2012年11月16日 13時45分14秒 | SUKYSH CLOUD
サキシュクラウド 第1部 七色の糸Ⅰ 第1章 旅達

『腕試し(1)』

 ライタは焦っていた。
 こんなハズじゃない。
 俺の力は、もっとあるはずだ。こんな打たれ強い奴、出会ったことがない。

 ライタの試合相手、王者・ソルトは絶望の淵にいた。
 私はこの、世界で一番強い者を競う武闘会の、テン・タイムズ・チャンピオンだ。10回優勝をしたのだ。
 驕ることはしない主義だが、今年の大会も、並み居る強い者達を事もなく退け、今、決勝戦まで勝ち進んできた。
 目の前にいる私の相手、ライタといったか、彼は、今回が初参加であり、見た感じも幼い。身体も出来上がっていない。
 最初にあいまみえた時は、なぜこんな子供が、この伝統ある世界大会の決勝の場に勝ち進んできたのか、その理由が思い浮かばなかった。彼には失礼だが、よほどのラッキーが重なった結果であろう、と自分の中で推測し、それでようやく納得したほどだ。
 しかし私は今、彼にかなりの苦戦を強いられている。はっきり言ってしまえば、私は彼に歯が立たないといっていい。
 それほどの実力差だ。
 なぜ彼は今まで埋もれていたのか。
 今まで、どこで何をし、どんな訓練を積んできたのか。
 この試合が終わったなら、彼に問うてみたい。彼と語ってみたい。そんな穏やかな、諦めの境地まで、この試合中に浮かんできているほどであった。
 王者ソルトは、このライタという少年に、敗北の悔しさを通り越して、尊敬の念まで覚えていた。
 そのような状態であった。

 ライタの試合内容はこうだ。
 この大会に出場する大部分の者は、皆何らかの装備を整えていた。
 ツルギや、槍、棍棒等の武器を構え、防具もみな重装備。大抵は、フルプレート、といった全身を覆う甲冑に身を包み、盾を装備する者も多い。
 しかしライタはその事情に反し、信じられないほどの軽装であった。
 まず武器は拳であった。
 一応アイアンナックルというような、拳を保護し、また拳が当たった時の衝撃度を上げるものは装着しているが、この大会で、自分の拳を武器に相手を倒そうなどということを考える者は、他に一人としてなかった。
 そして防具と呼べるものはレザーベストのみ。ほぼ、普段着同様である。もちろん盾など持ってくることを考えすらしていないのではないか。
 こんなふざけた構えで大会に参加する者は、この大会の全歴史をひも解いても、今大会のライタくらいだと思われた。
 そんな者が、今、大会のチャンピオンになろうとしていた。

ゆめをみるかね(3)

2011年12月01日 00時00分00秒 | SUKYSH CLOUD
第三節 微笑むホタル


「もう動けねえ。一歩歩く体力もこのプールに吸われちまった」
「情けないなあ」
「仕方ない……」
 コバンがよっこらせと立ち上がろうとした時だった。
 コバンの周りを何かの虫が一匹飛んでいる。
「? うっとおしいな」
 立ち上がったコバンが追い払おうと手を動かすが、その虫はすり抜けつつコバンの周囲を回り続ける。不自然な様子の虫であった。
 しばらくして、その虫はコバンから離れて飛んでいった。そして、少し離れた所で虫はコバンを待っている。そして緑色の光を放っていた。
 そう、待っているとしか思えなかった。そこでコバンが歩み寄ると、ホタルは遠ざかる。コバンが歩みを止めるとホタルも止まって小さな範囲を飛び回っている。そしてコバンがホタルから遠ざかると、またコバンに寄ってきて周りを飛ぶのである。

 着替えて強化センターを出た。まだホタルはコバンを先導していた。
「気味の悪い夜になったな」
 コッチョルが呟くと、
「面白い事が始まるのかも」
 一方のコバンは胸を躍らせていた。
 二人はホタルを追った。そしてしばらく歩いて、十字路に差し掛かったところでコッチョルが叫んだ。
「コバン、逃げるぞ!」
「は?」
 目の前に、昼間コバンが犯したスリの被害者がいた。

 体力に劣るコバンは被害者に力ずくで抑え込まれ、結局盗んだものを全て返すことになった。
 コッチョルがどう説得したのかは分からないが、彼のお陰でポリスに突き出されることだけは避ける事ができた。
「ホタルさまさまだ」
 元被害者はそう言い残して去っていった。
「あんな奴の金は先生が使った方がいい」
 コバンは食事をしながら、かすれた声でコッチョルに嘆いた。
 コバンはスリを行うターゲットを適当に選んでいる訳ではなかった。充分に、人となりや社会的な立場を吟味して、要はコバンの思う嫌な奴を選んで仕事をしているのである。そして、金持ちしか狙わない、という事実も付け加えておくか。
「今晩はどうする?」
 空に浮かんだ星を見上げながらコッチョルが訊ねた。
「先生のところに泊めてもらっていいか?」
「城には帰らないのか?」
「帰るとまた兵器の開発を進めなくちゃならない。もう嫌なんだ」
 コッチョルは空を見上げたまま、
「そうか。お前も大変だな」
 誰か、今の生活をぶち壊してくれないだろうか。誰が悪なのか、もはやわからない。ただ、今が正しくない事だけは分かる。
 コバンは先生の顔を見た。この人はどうなんだろうか。自分はなぜこの男の人を「先生」と呼ぶようになったんだっけか。
「なんだ、コバン?」
「身体痛くなかったら逃げられたんだけどな」
 コバンは先生に顔を背けて言った。
「人のせいにすんな」
 コッチョルは苦笑いでそう答えた。
 二人が床につき、眠りにつく。
 コバンの上着のフードの中に、何か緑色に光る虫が、飛び込んだ。

ゆめをみるかね(2)

2011年11月29日 00時00分00秒 | SUKYSH CLOUD
第二節 ワークアンドアクシデント


 コバンは走っていた。しくじるはずがない。今まで仕事でしくじったことがない。自分は天才だと思っている。この仕事。
 それは往来の真ん中で他人の金品を盗み取る仕事。
 それはいわゆるスリという犯罪だ。
 コバンはショッピングモールの中に逃げ込んだ。そこは人で溢れ返っていて、入ってしまえば絶対に見付からない自信があった。
 自分はまだ子供である。もともと目立たないし、今盗んだお金で新しい服と帽子を買いそれを身に着けてしまえば完璧な変装であり、逃げ切れない方がおかしいと思われた。
 チョロイものである。
 コバンはトイレで新しい服装に着替えて、さっさとこのショッピングモールを出ようと考えていた。それまで着ていた服は、今着ている新しい物の入っていた紙袋の中に仕舞い込む。
 その時、脱いだ上着のフードの中に虫が入っているのに気付いた。手で払ってもよほど強力なカギ爪で引っ付いているらしく剥がれない。
 ホタル?
 恐らくは黄金虫か蛍である。潰してしまうのも可愛そうなので、そのままにしておくことにした。きっといつの間にか自分で逃げていくであろう。

 ショッピングモールから通りに出た。歩みを進め、町の外れに向かう。心なしか早足になっていた。
 そうして、着いたのは町の外壁沿いにある家無し男の住み処だった。
「トントン、先生遊びに行こうぜ」
 コバンが声を掛けると、
「おう、来たか」
 太くてガラガラな声で男が応じる。
「今日はどこ行く?」
 コバンが問う。すると家無し男は不気味に笑った。
「今日はお前を鍛えてやる」
「は?何処行くつもりだよ」
「いい所だ」
 家無し男とコバンは再び町の中心部に向かって歩いていった。
「お前は頭でっかちで体力はさっぱりだからな」
「なんか嫌な予感がするんだけど~」
 コバンは引きつった笑いを浮かべる。
 彼の予感は当たり、十五分後、コバンは痛烈な悲鳴を上げていた。
「先生、もういいだろ」
 先生と呼ばれている家無し男……名を「コッチョル」というが、彼はそう言われて豪快に笑った。
「我慢せい。今から我慢をしておれば、大人になって自由に生きられる」
「そうなのか?それにしても体力の限界だって。今身体中痛い」
 コバンはそう言って水面に大の字を書いて浮かんだ。
「ほんとにお前は体力がないな」
 二人のいるのは、俗に「体力強化センター」と呼ばれている場所。
 中には大きなプールがあり、その中で様々な体力トレーニニングができるようになっている。
 水中での負荷と浮力を最大限に利用し、身体に無理なく筋力・瞬発力・持久力が鍛えられるような設備が整っているのである。
 コッチョル先生は言った。
「お前は今日ヘマをやったな」
「は?」
「隠しても無駄だぞ。もう充分分かってると思うが、私はこの町で起きた出来事を全て把握している」
「はーん、そうだったよな、先生……やっちまった」
「お前にしては奇跡的に珍しい事だな」
「そうなんだよ。アイツ何者だ?俺はミスしてないぞ。仕事は完璧だった」
「まあ偶然ということもあろうよ」
「たまたま気付いたんかな?それで勘で俺を追っかけたのか?」
「ただし物事を全て偶然のせいにしていては、お前は成長しない」
「俺にミスがあったってことか……」
 コバンは言いながらプールを上がろうとする。
「だから!私は今日お前を鍛えてやる。手加減はせんぞ!」
 コッチョルはプールサイドに上ろうとしていたコバンを突き飛ばした。水飛沫が上がり、コバンは水中に没した。
 浮き上がり、
「もう疲れたよ!」
 悲鳴を上げるコバンだったが、コッチョルは態度を変えないようである。
 コッチョル先生のシゴキは、その日の夜まで続くのであった。

サキシュクラウド~七色の糸Ⅰ~第三章『影武者』番外編 ゆめをみるかね

2011年11月28日 00時05分29秒 | SUKYSH CLOUD
第一節 ふたご


 王子様がお生まれになった!
 双子であるぞ!
 めでたさも二倍!
 さあ宴を開こう!
 新たなお世継ぎの誕生を祝おうではないか!

 王様、この子の名前は何としようか?
 「コバン」としようと思う
 王よ、王子は二人じゃ 名も二つ考えなければなるまい
 いや一つでよい この双子は名をコバン 二人で一人 民にも双子であることはふせる 一人の王子が生まれたことにする
 なぜそのようなことを……?
 それは……

 王の予知は当たり、十余年ののち、コールスロー王国は新興国・アレグラント帝国に制圧される。
 王族は滅ぼされ、コールスロー王国はアレグラント帝国の属国となった。
 そして今、コールスロー王国を統べるのは弱冠十三歳の王。
 その名をコバンといった。

サキシュ・クラウド SUKYSH CLOUD "the village suns fall" #13

2011年09月25日 16時43分57秒 | SUKYSH CLOUD
♯13 手紙


キロ「はい、どなたですか」

 返事が無いので、キロは窓穴から外を窺った

【SE 効果音】

 ドアの外にいるのが誰か分かった瞬間、キロは息が止まった

ビストローヌ(声)「手紙を預かっている。扉を開けてもらえないか」

 キロは恐怖で全身が固まっている
 するとドン!ドン!とドアに身体ごと打ち付けているような
 大きな音が響く
 恐らくはドウルフが強引に扉をぶち壊してでも
中に入ろうとしているのだろう

 音に驚いて、三人(ライタ・ボイスカ・バルシア)が現れる
 キロは怯えてドアを押さえている

ボイスカ「キロ君、扉を開けてやんなさい」
ライタ「師匠!?」
キロ「外にいるのは、昨日私を襲った二人組です」
ライタ「なにい!? しつこいなあ。よし、また返り討ちにしてあげよう」
バルシア「でもこんなところまで何しに?」
ボイスカ「キロ君退(ど)いて、私が出よう」
ライタ「師匠、俺も加勢します!」
ボイスカ「戦いになるとは限らん」

 ボイスカは玄関の扉を開けた
 ビストローヌ、ドウルフが現れる

ボイスカ「ずいぶん荒っぽい訪問じゃな。用件は?」

 ボイスカの態度に、二人組は少し気圧(けお)されている

ドウルフ「なんだジジイ、ぶっ飛ばしてやる」
ビストローヌ「ドウルフ、今日は戦いに来たんじゃないよ」
ボイスカ「ではご用件を」
ビストローヌ「手紙を預かってきた。そっちの娘にだ」
ボイスカ「儂が預かろう」
ビストローヌ「直接娘に手渡すように念を押されている。理解してくれ」

 ボイスカは慎重に間を図りながら、キロに目線で指示する
 キロはゆっくりとボイスカの横を通ってビストローヌに近づき、

キロ「誰から?」
ビストローヌ「周りに人がいる。読めば分かる」

 ビストローヌから手紙を受け取るキロ

ビストローヌ「用件は以上だ。失礼する」
ドウルフ「いつかぶっ飛ばしてやるからなあ」
ビストローヌ「行くぞ!」

 ビストローヌはドウルフを連れてその場を去る
 しばらくの間
 キロは手紙を見詰めている

バルシア「一体なんだったんだろ」
ライタ「ワケわかんね~」
キロ「皆さんは自由にしていてくださいね」
バルシア「あっ、キロちゃん」

 キロは手紙を読む為、家の奥に引っ込む
 キロ退場
 ライタ、ボイスカ、バルシアは思い思いにくつろぎ始める
 ライタは寝っ転がる
 ボイスカは椅子に座り、バルシアは床にあぐらをかいている

【M 緊迫した曲】

 キロが緊迫した表情で駆け込んでくる
 玄関から外に駆け出す
 手には封を開いた手紙を持って
 ボイスカ立ち上がって玄関に向かう

バルシア「キロちゃん!」
ライタ「えっ!?」
ボイスカ「何しとる、追うぞ!」

 ボイスカ退場

ライタ「師匠!?」
バルシア「ライタ君も行こう!」

 バルシア、ライタの順で退場

【照明変化→外の明かりに】

サキシュ・クラウド SUKYSH CLOUD "the village suns fall" #12~その2

2011年09月22日 22時19分46秒 | SUKYSH CLOUD
前回からの続き


 皆の心に一瞬、この先への不安などの思いが浮かぶ
 間
 キロが溜め息とともに、思わず呟く

キロ「だいじょぶかな」

 ライタ、思わず突っ込む

ライタ「君がそんなこと言うなよ!」
キロ「あっ、ごめんなさい」
バルシア「まあライタ君、今のキロちゃんは不安で一杯よ
理解してあげなさいな」
ボイスカ「不安と言えば」

 ライタは師匠の発言を遮り

ライタ「不安って言えば、お祖父ちゃんの事はどうするんだ?」
キロ「あ……それには考えがあります」
バルシア「そう言ってたわよね」
ボイスカ「どう」

 ライタ再び遮り

ライタ「どうするの?」
キロ「えっと……お祖父ちゃんの病気には特効薬が存在すると、
母から教わった覚えがあります」
バルシア「そんなのがあるんだ?」

 ボイスカはどことなくむくれている(話は聞いている)

ライタ「なんでそれを今までやんなかったのさ」
バルシア「当然実現がむつかしいんでしょ?」
キロ「はい、その特効薬を作るには、ゴウリの実が一万個必要だとか
さらに私も母も、薬の調合のやり方を知りませんでした」
ライタ「今はわかるんでしょ?」
キロ「言葉のアヤです。今もわかりません」
バルシア「えーっ!」
ライタ「それじゃあ」
ボイスカ「五里霧中じゃ」

 ライタ、スキを見せたことに焦る

ライタ「あっそうそう五里霧中じゃ」
キロ「でも全く打つ手がない訳ではないんです
ゴウリの実はこの村の特産品。しかも魔法の力を持った実です
どこかにヒントになる資料があってもおかしくはない
私はそう考えます」
バルシア「じゃあどうする?
この家の蔵から何から、オールスキャンする?」
キロ「いえ、この家の中には有りませんでした
母が存命の頃に、二人でくまなく探し尽くしましたから」
ライタ「話が見えないなー
俺たちゃ一体どうすりゃいいんだよ」
ボイスカ「この村で、一番多くの書物が集まっている場所は?」
キロ「はい、それは教会です」
バルシア「わーお♪」
ライタ「なるほど」

 ここで話はいったん休止
 コップを口につけ、水分補給のお時間
 くつろいで下さいませ

ボイスカ「で?」
三人「?」
ボイスカ「それで?」
三人「ん?」
ボイスカ「一万個」

 ライタは勢いよく立ち上がり

ライタ「そうだよ、ゴウリの実を一万個って、一体何処にあるんだよ!!?」
バルシア「地面に落ちたのは、
アレグラントの奴らが全部かっさらってるしね」
ライタ「落ちる前のを捕獲する!」
ボイスカ「アレグラントはゴウリの実をどこに貯めてるんじゃ」
ライタ「あら」
キロ「はい、それは教会です」

 皆、背もたれに寄っ掛かるなどしつつ力を抜く
 溜め息なんぞも出る

ライタ「ようやく話が繋がったな」
バルシア「これでわかった。私たちの目標」
キロ「村の!」
全員『教会に向かおう!!』

 全員立ち上がり、魂に力が入る
 そこに

【SE ドアをノックする音】

キロ「はあい
皆さんちょっとくつろいでいて下さい
戻ったら食器片付けますね」

 キロは玄関に移動

【照明変化】

 ライタは本当にくつろいで横になろうとする
 ボイスカがライタをど突き、結局三人で食器イス等を片付ける【場転】

サキシュ・クラウド SUKYSH CLOUD "the village suns fall" #12~その1

2011年09月10日 16時29分33秒 | SUKYSH CLOUD
#12 キロの家(朝)


【SE 朝の風景(鳥のさえずり等)】

【明転】

 バルシア入場
 最初は伸びなど、人間らしい行為を行なっていたが
 だんだん足で頭を掻いたり、手足を舐めたり、ドラゴンっぽい
 行為を見せるようになる
 そこにボイスカが入ってくる
 慌てて取り繕うバルシア

バルシア「おはようございます!」
ボイスカ「竜というより、猫みたいじゃの」

 バルシア空笑い
 キロが朝食を持って入ってくる

キロ「皆さん席に着いてください、朝食ですよ」
バルシア「ありがとう、キロちゃん」
キロ「いいえー……あれ、ライタさんは?」
ボイスカ「あいつはまだ寝とるんじゃないのか」
キロ「えっ、そうなんですか!」
バルシア「あたしが起こしてくる」

 バルシア退場

ライタ(声)「うおっ!」

 二人とも登場、しながら、

バルシア「ライタ君がいくら起こしても起きないからじゃない」
ライタ「だからって頭凍らすことないじゃないですか」
バルシア「いやー、イライラしたら、つい本能で」
ライタ「まだ髪の毛がパリパリいってますよ」
ボイスカ「お前さんたちは何をやっているのか」
ライタ「いや、バルシアさんが俺の頭にアイスブレスを」
バルシア「軽~いの、軽~いヤツをね」

 バルシア取り繕いの営業スマイル

キロ「気になってたんですけど、バルシアさんって、人間じゃないの?」
バルシア「いやあ人間よ」
ボイスカ「人間じゃよ」
ライタ「あれ、二人とも……」

 バルシア、ライタを隅の方に連れてきて

バルシア「バレたら騒ぎになったりしてめんどくさいでしょ」

 ライタは何度もコクコクうなずいている

キロ「朝食できてますよ」
ライタ「ありがとー! キロちゃん」
キロ「粗末なものですけど」

 ライタ、バルシアは席に着きながら

バルシア「おいしそー!」
ライタ「もう食べていいの?」
キロ「どうぞ笑」
ライタ「いっただきます!」
バルシア「いただきます」
ボイスカ「いただきまっす」

 4人、食事をしながら

ライタ「おじいちゃんは、いいのか?」
キロ「………」
ライタ「キロちゃん、
おじいちゃんは朝食食べないのか訊いてるんだけど」
バルシア「キロちゃん、おじいちゃんには朝食をあげなくていいの?」
キロ「はい。まだ眠ってますから、後で食べさせてあげます」
ライタ「ちょっとキロちゃん、俺の質問には応えないで
バルシアさんの同じ質問には返事するって、
これどういう訳?」

 キロは困ったような、気分を害したような
複雑な表情・素振りを見せている

バルシア「まあいいじゃないの。
何か複雑な事情でもあるのかもしれないし」
ライタ「んなもんあるかい!」
キロ「……(うつ向きながら、小さな声で)失礼な」
ライタ「? そうなのか? 何か事情があるのか?」

 キロはうつ向き無言のまま(でも時々何かに手を出し、食う)

ライタ「ああいいもうじれったい! 俺のことが嫌いなら嫌いでいいよ
好きにしてくれ!」

 しばらくの間
 皆、食事を進めている
 そろそろ食べ終えようとした時、

キロ「私、皆さんに話しておかなくてはならないことがあります」
バルシア「なーに、キロちゃん?」
キロ「私を、皆さんの旅に同行させてください!」
バルシア「えっ」
ボイスカ「!?」
ライタ「なんですと!?」
キロ「無理を承知でお願いします
皆さんと一緒に旅をさせてください!」
ライタ「突然何を言っとるかね」
バルシア「どうしてそう思ったの?」
キロ「私を見守る『神木』……木の精霊、彼が私にそう告げたんです
皆さんと一緒に旅に出ろと
それが私の役割であり、道であると」

 ライタ、ボイスカ、バルシアはそれぞれに困った表情をしている

バルシア「でもお祖父さんはどうするの?
あなたがいなくなったら、世話をする人がいなくなって
困ってしまうでしょう」
キロ「お祖父ちゃんのことはもちろん心配です
でも、それについては考えがあります
ただ、皆さんのご協力が、また必要になるんですが……」
ライタ「でもキロちゃん、俺のこと嫌ってるんじゃないの?
そんなんで旅したって、辛いだけじゃん?」
ボイスカ「好きだから嫌いだからで一緒に旅するわけでもなかろう」
ライタ「それはそうだけど、例えば敵が出てきた時だって、
協力し合わなきゃならないんだよ?」
キロ「それは、大丈夫だと思います」
ライタ「キロちゃんがそう言うんなら、まあいいけどさ。でも」
キロ「私!ある出来事が切っ掛けで、男のかたがダメなんです」
ライタ「(何も考えず、無神経に)出来事って?」
キロ「えっ……」
バルシア「キロちゃん、話したくないことは話さなくていいよ」
キロ「はい……」

 バルシアはライタに軽く鉄拳

ライタ「痛(いた)た……」
キロ「ごめんなさい
守護霊からの言葉は、私にとって絶対なんです
私を旅に連れていってください!
私の魔法は、旅のお役に立てると思います!
男嫌いも、皆さんにご迷惑を掛けないように
うまくやっていきます!」
バルシア「(少し2人の様子を伺いながらも、キロを気遣い)
いいんじゃない?
私はそう思うけど、ライタ君は?」
ライタ「ちょっと構えちゃいますけど、大方大丈夫です。ただ、」
ボイスカ「ライタ、そこからは儂が話そう
キロ君、旅に出たら、危険が一杯じゃぞ
魔物や獣との戦いも日常茶飯事だし、
時には、例のアイグラント帝国の奴らとも
対峙せねばならんようじゃしな
そのあたりへのキロ君の覚悟は、どうなんだろう」
キロ「はい、大丈夫です」
ライタ「ホントか?」
キロ「はい、私は時折村の外へ用事で出掛けることがあります
遠出をすることもあって、そういう時は、
途中で魔物に何度も出遭います
最初は怖くて仕方なかったけど今は慣れて、
魔法で身を守ったり、退治したりするまで
出来るようになりました
だから、大丈夫です」
ボイスカ「ふ~む……」
ライタ「師匠?」
ボイスカ「そこまでの覚悟なら儂は何も言わない
もともと魔法使いと守護霊との強い絆はよくわかっている
反論しても無駄だとな」
キロ「ありがとうございます!」
バルシア「じゃあキロちゃんがあたしたちのパーティーに加わることを
祝して」

 バルシアはミルクの入った杯を掲げる

バルシア「はい!」
4人それぞれに『乾杯!』

サキシュ・クラウド SUKYSH CLOUD "the village suns fall" #11

2011年09月04日 01時06分01秒 | SUKYSH CLOUD
#11 遣い(ファーネスの村の外れ・洞窟内)


【SE 水滴の音】

【照明洞窟の中→明転】

 時間は早朝
 コバルト、ビストローヌ、ドウルフが舞台上にいる

コバルト「この洞窟の中に、コモドドラゴンの巣があるらしい
我が村の民も、時折そのドラゴンから被害を受けている
まだ子供で、なぜか親とはぐれて暮らしているのが救いだ
我々三人の力なら、退治できるはずだな
それにしてもランタンもなく明るいとは、便利な魔法だなあ、ビストローヌ」

 ビストローヌは、小さく頷く

コバルト「ドウルフ、お前は震えているのか?」
ドウルフ「そんなことないよ」
コバルト「怖いのか」
ドウルフ「違う!」
コバルト「(微笑・嘲笑)まあよい。おっ、あれがかの巣か?
お前達、行くぞ!」

 コバルト達3人は、進む足を速めた
 そこに、

カラアーム「あんたたちちょっと待ちなさいよ!」
ビストローヌ「何者!?」

 カラアームは回り込んで3人の正面に相対する

コバルト「なんですか、あなたは?」
カラアーム「あんたたちは、これから自分が何をしようとしているのか
分かってるんでしょーね!?」
コバルト「村の為になることだ」

 一呼吸

カラアーム「思わず腹の中で笑っちゃったわ
あのドラゴンを殺すことが、村の為になると思ってるのね」
コバルト「もちろんだ。現に被害者だって沢山いる」
カラアーム「あのドラゴンは、セントドラゴンの一種よ。人間に危害を及ぼすことはない」
コバルト「適当なことを言うな。現実に被害の報告が届いている」
カラアーム「大方、ドラゴンの姿に恐れ戦(おのの)いて、慌てて逃げようとした時に転んだとか、
そんなんじゃないの?」
コバルト「なぜ君はそんな事を言い切れるのだ」
カラアーム「人間は、見た目に惑わされ過ぎなのよ
人間が『魔物』と呼ぶような存在の中にも、いろんな性質の種族がいるわ
善きモノだっているし、確かに本当に邪悪なモノもいる」
コバルト「それならどうすればいいのだ?」
カラアーム「あんた、ただ単に、自分が思った通りにしたいだけなんじゃない?
その考えは、決して善いことじゃない。どちらかというとあなた、悪人ね」
コバルト「失礼なことを言うな!」
カラアーム「じゃあ、今日は大人しく帰りなさい
コモドドラゴンは巣の中にいない
この村周辺の風が、変わりつつあるの
ドラゴンはそれを感じ取ったのね。だからこの地を後にした
これから何が起こるのか、ワタシにも予測がつかないわ
(笑って)また会いましょ」

 カラアームは、燃え上がる一瞬の炎と共に消えた

ビストローヌ「コバルト、どうする」
コバルト「あんな訳の分からない奴の言うことに惑わされるか
勿論、この先に進むぞ」
ビストローヌ「了解した」

 ドウルフは、二人から大分離れた、後ろの方であたりにキョロキョロと
視線を配りながら、ついて行く
 三人、退場

SUKYSH CLOUD~太陽の降る村Ver2.0 #08(二)、09

2011年08月15日 02時51分09秒 | SUKYSH CLOUD
♯08 キロの家の中(二)


 キロは話し始める間をはかって、話を始めた。

キロ「最近のことなんです。
あいつらが教会に居座るようになって、
村のあちこちを統治し始めたのは」
バルシア「アイグラントの奴らは、この村を占領しようとしてるの?」
キロ「いえ、そういうふうには見えません。ただ……」
バルシア「ただ?」
キロ「村の特産物、ゴウリの実を独占しようとしているんです」
ボイスカ「ゴウリの実……とは初めて聞く」
キロ「………
世界中でもこの地方でしか採れないものだと聞いています
この村のあちこちには、ゴリの木が生えています
その木になる「ゴウリの実」には
不思議な力が秘められているんです」
ライタ「不思議な力!? それってどんな?」
キロ「………
私には祖父がいます
奥の部屋に寝ていて、難病を患っています
その祖父の病気に効く薬は、ゴウリの実がないと作れません
祖父の命はゴウリの実が握っていると言って過言ではないんです」
バルシア「そうか」
キロ「その他にも、魔法の力と融合させれば、ゴウリの実を基に
様々な奇跡を起こすことができると聞いています」
バルシア「なるほどね
その不思議な力を持つ木の実を、
アイグラント帝国が独占しようとしているんだ」
キロ「その通りなんです
昔は村人の誰もが、この実を採る事ができたのに、
今ではアイグラント帝国の執拗な監視の目をすり抜けないと、
ゴウリの実を手にすることが出来なくなってしまいました」
バルシア「さっきは、お祖父さんのためにその実を集めていたところを
不運にも奴らに見付かっちゃったって訳ね」
キロ「そうなんです
今までは一度もしくじることなく、祖父の薬を作ってきました
でも今日初めて、奴らに見付かってしまったんです
怖かった
もし皆さんがいらっしゃらなかったら、
どうなっていたことか、想像もつきません
本当にありがとうございました」
ライタ「アイグラントの奴らに襲われている人を、しかも女の子を、
黙って見過ごすわけにはいきませんよね、師匠」
ボイスカ「当然じゃな」
キロ「ありがとうございます……
それでは皆さんお疲れでしょう
奥の部屋に寝床を作れます
ゆっくりお休み頂ければと思います」
バルシア「ちょっと待って! もちろん出来たらでいいんだけどさ、
そのゴウリの実ってやつを、一目見たいなあ、なんて」
ライタ「俺も興味ある」
キロ「あぁ、いいですよ。ちょっとだけお待ちください」

 キロは奥の部屋(キッチン?)へ引っ込む
 と、すぐに戻ってくる

キロ「こちらです」
ボイスカ「ほぉ」
ライタ「へえ~っ!」
バルシア「綺麗ね!」

 ゴウリの実は、フワフワとして光沢のある、
銀色の綿毛に包まれていた

キロ「綺麗ですよね
でも効力があるのは中身の方
こうして割って、中を取り出すんですよ」

 キロは、手に持った金属の道具で、器用に中身を取り出した

ライタ「へえ」
バルシア「さすが手馴れてる」
キロ「これに魔法的な作用を施して、薬にするんです」

 ライタは何を思ったのかジーッと実の中身を見詰めて
 さらに臭いなんぞを嗅いだりした後で、

ライタ「これ、食ったら美味い?」
バルシア「バッカねえ。これ今は採れないもんなんだから、
それはとっても贅沢な台詞よ」
キロ「昔は私もこれをよく生で食べてました。
甘酸っぱくて美味しいんですよ」

 会話の中で、キロはライタとボイスカの方を避けるように見ない。

ライタ「それ、食べてみてーーー!!!
やっぱりアイグラント帝国許すまじだ!」

 少し和やかな雰囲気になった

ボイスカ「じゃあ、休むか」
バルシア「キロちゃん、ありがとねー♪」
キロ「いーえ。こちらこそ助けて頂いてありがとうございました」
ライタ「こっちの部屋を借りて、いいのかな」
キロ「はい」

 ライタ達は移動(退場)

 四人の就寝の挨拶が、声だけで聞こえた

 暫くしてキロが戻ってきて(再入場)


♯09 神木Ⅱ


【SE 木の葉・風】

 キロは、ルーン・ツリーの前に再びやってくる

キロ「やっぱり……
あの人たちについていくのが、私の定めなの?
でも……おじいちゃんはどうすればいいのよ!?」

 キロはしばらくその場で佇んでいたが、家への道を戻る

【暗転】

SUKYSH CLOUD~太陽の降る村Ver2.0 #07

2011年07月26日 07時46分47秒 | SUKYSH CLOUD
#07 コリウスの教会・集いの間


 舞台上に、ビストローヌ・ドウルフが入場
 身体を投げ出す

ビストローヌ「なんだい、あいつらは!?」
ドウルフ「ぼく、あいつら初めて見た」

 ビストローヌは思い出して悔しがる
 ドウルフはボーッとしている

ビストローヌ「今度会った時は、必ず地面に這いつくばらせてやる」

 そこにコバルトが入ってくる

コバルト「やあやあお二人ここにいらしたかあ!」

 ビストローヌはコバルトの様子に少しだけ戸惑うがすぐに取り直し

ビストローヌ「馬鹿息子がやって来たよ」
ドウルフ「ばーか、ばーか、ばか息子ー」

 コバルトは不敵な笑を浮かべている

コバルト「今からお二人は、私の言いなりになる」
ビストローヌ「何を言ってるんだか
また遊んで欲しいのか?」
コバルト「私がお二人と遊んであげるのだよ」

 ビストローヌは怪訝な表情になる
 ドウルフは一人遊びをしている

ビストローヌ「ドウルフ、少しこいつの目を覚ませておやり」
ドウルフ「驚かせればいいの?」

 ビストローヌは微笑を浮かべ

ビストローヌ「そうだね、力いっぱい驚かせてやんな」
ドウルフ「わかった!」

 ドウルフが立ち上がると、コバルトは魔法を唱える体勢になり

コバルト「そうだな、お二人には何の力で言いなりになってもらおうか?
私の数ある能力の中から……
そうだ、人形(ひとがた)の魔力を使おう
少しの間苦しいかもしれない。我慢してくれるか」

 ビストローヌは何かを感じ取ったのか

ビストローヌ「ドウルフ!」

 号令を放つが間に合わない

【SE 魔法】

【M 不安】

 ビストローヌとドウルフは突然苦しみ出す

コバルト「この魔法にかかった人間は、
私の言葉に従わずにはいられなくなる
そして同時に、理性の束縛から身体を開放する
人間の中に隠れている『本来の』力は、物凄いものなのだよ」

 二人はもがき苦しんでいる

ビストローヌ「ドウルフ……」
ドウルフ「お母さん!」

 コバルトは微笑む
 次第に高笑いになり、そのまま

【照明F.O.→暗転】

SUKYSH CLOUD~太陽の降る村Ver2.0 #06(2)

2011年07月18日 01時08分55秒 | SUKYSH CLOUD
コバルト『炎の紅より赤き者
火炎に焦がれるより、その身に苦しみを抱く者
貴台の怒りが欲しい 力が欲しい
身に宿した憎しみを我がものとせよ
我と汝が力もて、新しい魔力をここに生み出し賜え
我が魂を、貴台に捧げる
闇の契りを今、ここに誓わん』

 赤苦鬼召喚の炎が、大きく燃え盛る

【SE 燃え上がる炎】

赤苦鬼(声)「アタシを呼び出したのは、あんた?
あんたみたいな若造が、
どうして契約の言葉を知っていたのさ?」
コバルト「これでも教会の一人息子だ。本で勉強したんだよ」
赤苦鬼(声)「ご苦労さん
でも残念ながら、今のあんたの力じゃあ
アタシと契約結ぶなんてオコガマシイね」
コバルト「そうなのか」
赤苦鬼(声)「当たり前じゃない アンタ『格』って言葉知ってる?」
コバルト「私じゃあ、人としての格が足りないってことか」
赤苦鬼(声)「そういうことね」
コバルト「何とかならないのか」
赤苦鬼(声)「ならないわね」
コバルト「そこをなんとかならないか
そうだ、そもそもお前はなんでここに姿を現したんだ
出てきて、何もせずにノコノコと去るのか」
赤苦鬼(声)「アタシ達は、
正しい契約の『言葉』には従わなくちゃならないの
それがアタシ達の、古来からの『仕事』の一つなのよ」
コバルト「そうか」

 コバルトは不敵な笑みを浮かべた

コバルト『この世界の始まりを司る至高神の言葉をここに伝えよう
赤苦鬼よ
目の前に佇まうこの生命に、汝の持つ最高の力を与えよ
そして、この場より去れ
至高神セクトリウスの命を、この言葉にて現し、汝に与える』

 また激しく、赤苦鬼の炎が燃え盛った

【SE 炎】

 コバルトの抑えた笑いが響き、
 次第に彼の高笑いが部屋の中に響き渡る

コバルト「やったぞ、成功だ! これで……」

 しかし、暫くして再度、赤苦鬼の声が聞こえてきた

赤苦鬼(声)「セクトリウスよ、そなたの意思は受け入れた
しかし、交換条件をしようではないか
ひとつ、この若者に私の力を分け与える代わりに、
彼の最も大切なものを、彼から奪うことを許して欲しい
もうひとつ、
この若者が力の誤った使い方をしないように
監視をしたいのだ
私の一部を、ひとりの人間の器の中に
込められるようにして欲しい
以上だ
そなたの命令通り、私はここから去ることにしよう
セクトリウスよ、この契約の締結を忘れるでないぞ」

 コバルトは赤苦鬼の放った言葉の内容に驚きを隠せないでいた

コバルト「馬鹿な!
赤苦鬼はセクトリウスと同等の立場で契約を結べるほど、
位の高い鬼だったか?」

 赤苦鬼の炎は消えた

【M 消える】

コバルト「まあよい。
今私の中に、
強大な力と膨大な智恵が注ぎ込まれてくるのを感じている
素晴らしい! 素晴らしいぞ!!
よし、今の私の力を試してみよう
最適な相手がいる。私から赴くか」

 コバルトは喜びを隠せない
 退場

SUKYSH CLOUD~太陽の降る村Ver2.0 #06(1)

2011年07月16日 23時39分35秒 | SUKYSH CLOUD
♯06 教会・祈りの間


【M 教会】

【明転】

 窓から月明かりが差してくる
 その光の中で、コバルトが神像に祈りを捧げている
 一心に、祈りを捧げている

コバルト「神よ、私に力を与えてくれ
いや、力でなくてもよい
この村が結果的に守れれば……
キロが、幸せになれれば」

 コバルトは一旦祈りを中断する

コバルト「もう五年以上、毎日こうして祈り続けている
けれど何も変わらない
そろそろ祈りを止め、
現実に目を向ける時なのかも知れない
私の力などたかが知れている
その私が、この村を守る為にはどうしたらいいか
私は今日から大人になろう
汚いことも、卑怯なことも、
大切なものを守るためなら喜んでしよう
……そうか、聞いたことがある
鬼の神を召喚しよう
鬼の力は強大だ。その力を我がものに出来れば……」

【M 赤苦鬼(せっくき)の召喚】

【暗転】

【明転(赤苦鬼召喚の明かり)】

SUKYSH CLOUD~太陽の降る村Ver2.0 #05(2)

2011年07月16日 17時24分52秒 | SUKYSH CLOUD
 ビストローヌはライタ達の方に向き直り、

ビストローヌ「なんだ貴様らは!?
ただの旅人じゃないな?」
ライタ「今頃気付いた?
お前らアイグラントだろ?
おりゃあアイグラントには絶対負けねー」
ビストローヌ「逆賊か!」
ライタ「何言ってっかわかんねーけど
嫌いなんだよ、お前等が!!」
ビストローヌ「反逆者が!!」

 ビストローヌは鞭をライタの足元に向かって放つ
 軽々とよけるライタ
 その後も、ビストローヌは何発かライタに向かって鞭を放つが、
 ライタはそれらを全て余裕をもってかわす

ビストローヌ「お前は誰だ!!!」
ライタ「ライタって言うんだけど、知ってた?」
ビストローヌ「知るか!!」

 その瞬間、ドウルフが吼えた
 ドウルフはボイスカとライタに向けて拳を放つ
 二人ともその攻撃は避けた

ビストローヌ「もうよい!!
この娘はゴウリの実を持っていない
最低限の役目は果たした
ドウルフ、教会に戻るぞ」

 ビストローヌは一目散にその場を去り、
 ドウルフは何度も振り返り振り返り、辺りを気にしながら去っていく

【M 消える】

【SE 林を抜ける風の音、夜の虫の声】

バルシア「完勝じゃない。私の出る幕ないわ」
ライタ「今までで一番手応えなかった!
あいつらほんとにアイグラントか?」
キロ「助けていただいてありがとうございました!
キロといいます
ところで、皆さんは……?」
ボイスカ「儂はボイスカというんじゃが……」
ライタ「(遮って)俺はライタ」
バルシア「(更に前に出て)あたしバルシア」
キロ「???」
ボイスカ「こ奴らは自己紹介が好きなんじゃ」
キロ「良い趣味ですね(ちょっと引きつった笑い)」
ボイスカ「お嬢さんは」
ライタ「(遮って)お嬢さんは」
バルシア「(更に遮って)お嬢さんは」
ボイスカ「お前ら遊んでるだけじゃろ!
いい加減にせんかい」
ライタ&バルシア「ごめんなさ~い」
キロ「………(半分笑顔)」
ボイスカ「お嬢さんは、この村に住んでる娘さんかな?」
キロ「はい、そうです」
ボイスカ「なんでこんな夜中にうろついて、
しかもあんな奴らに襲われてたんじゃ?」
キロ「それは……
話すと長くなるので、皆さん、私の家にいらっしゃいませんか?
住んでいるのは二人だけ……広いだけが自慢の我が家ですが」
バルシア「ついでに今晩泊めてもらえたりして!」
ボイスカ「失礼じゃろ」
ライタ「キロちゃんっていったっけ?」
キロ「(ちょっと後退しながら)はい」
バルシア「今晩、キロちゃんちに泊めてもらえないかなあ~、なんて」
ボイスカ「失礼じゃろて」
キロ「(笑顔でハッキリ)いいですよ」
ライタ「ホントに!? ありがとう~~~!! 助かるよ!」

 ライタ、キロの手を取ろうとする
 キロはその手を思わず跳ね除け、逃げる

ライタ「?」
キロ「あっ、ごめんなさい……私の家はすぐそこです
ついてきてください」
バルシア「は~い」
ライタ「(ちょっと動揺残しつつ)近いんだ」
ボイスカ「良かったの」

【SE 木の葉の重なる音】

 四人、退場

【場転(照明変化)】

SUKYSH CLOUD~太陽の降る村Ver2.0 #05(1)

2011年07月16日 03時17分20秒 | SUKYSH CLOUD
#05 ファーネスの村の一角


【照明・SE 真夜中】

 ライタ・ボイスカ・バルシアの3人、入場

ライタ「着いたー!!!」
バルシア「着いたけど……ここがその村?」
ボイスカ「暗くてわからんのう」
ライタ「誰かいませんか~!!?」
バルシア「ちょっとみんな寝てるんだから!」
ボイスカ「(二人に)静かにせい」
ライタ&バルシア「ごめんなさい」
ボイスカ「~それにしても困ったのう
民家の一軒くらい、起きていないかのう」
ライタ「もう野宿でいいですよ
なんのための寝袋ですか」
バルシア「私、寝袋なんか持ってないし」
ライタ「バルシアさんはそのまま寝て大丈夫じゃないですか」
バルシア「あたし最近美容に凝ってるの」

 ボイスカ大笑い

バルシア「なんで笑うんですか?」
ボイスカ「ドラゴンにも美容って考えがあったんだなあ」
バルシア「ありますよ、ワタシ女ですよ」

 ライタ肯いている

ライタ「バルシアさんは素敵な女性ですよねー」
バルシア「またライタ君、いつも通りおだてるのね」
ライタ「いやいや本音」

 その時、声が聞こえる

ビストローヌ(声)「コラ待てー!
待てって言ってんだろが、小娘!」

ボイスカ「ん? こんな真夜中に」
ライタ「(前の台詞から引き続き)バルシアさんは素敵です!」
バルシア「ライタ君には彼女がいるでしょ?」
ライタ「それとこれとは関係ないじゃないですか」
バルシア「そうかなあ」

 以上のセリフの遣り取りの間にキロが入場。駆け込んでくる
 ライタ達の周りをぐるっと回った後、バルシアの後ろに隠れる

キロ「助け……ごめんなさい、迷惑ですね」

 キロはその場を立ち去ろうとする
 そこにビストローヌとドウルフ、入場

ビストローヌ「誰だいこいつらは?
邪魔するんだったら容赦しないよ
ドウルフ!」

 ライタとボイスカは、
すぐにビストローヌ・ドウルフの出で立ちを目認

ボイスカ「嬢ちゃん!」
ライタ「女の子!」

 ボイスカとライタの台詞は同時
 ライタはキロの方を見やったあと、

ボイスカ「助太刀する!」
ライタ「助けてあげよう!」

【M 『戦闘1』/おっちー】

 戦闘開始!
ビストローヌ「初めて見る顔だね
クエストパッカーか?」

 ビストローヌは、二人をなめてかかっている

ボイスカ「余裕じゃのう」
ライタ「そのスキが!(直前のボイスカの台詞を食いつつ)」

 ライタ先制攻撃の足払い
 バランスを崩すビストローヌ
 すると雄叫びを上げて、ドウルフが突進してくる
 ライタにタックル!
 大袈裟に吹っ飛ばされるライタ(受け身)
 ちなみにこの時間帯のバルシアは、
 キロをかくまいながら戦況を見詰めている

ライタ「こっちはパワーか」
ボイスカ「それなら儂(わし)が」

 ボイスカはドウルフに掴み掛り、柔道のような技で
 ドウルフを投げ倒す
 ドウルフ声が出る

キロ「(驚いてバルシアに)あなた方は?」
バルシア「だからクエストパッカーなんじゃない?」