おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
いろいろ活動してます
そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

都緒king物語 真優・つむぎ 編 第三話(最終話)

2010年12月31日 00時20分59秒 | 日々つれづれ
【第5場 立ち呑み処】


真優「結局、毎晩最後はここに来るな」
つむぎ「お腹空いたあ。入ろう」
真優「やっぱあそこでたこ焼き食っておけば良かったかな」
店員A「たこ焼き要りますか」
真優&つむぎ「小野塚さん!!」

    二人の背後から、店員Aが現れる。

店員A「ご注文のたこ焼き、お持ちしました(笑)」
つむぎ「こんなとこまで!?」
真優「わざわざどうしたんですか!?」
店員A「当店初の『出前』ですかね(笑)」
つむぎ「えぇえ~……申し訳ない」
真優「頂きますけど……ほんとにいいんですか?」
つむぎ「そうよ、お店の方は大丈夫なんですか?」
店員A「優秀なバイトに任せてるんで(笑)」
つむぎ「いや、申し訳ないので……お店に一緒に戻りましょう!」
真優「そうだね」
店員A「ああ~……そうですか?」
つむぎ「当り前ですよ。そっちで飲み食いしますから」
店員A「まいど」
真優「小野塚さん、よくこの場所が分かりましたね」
店員A「いつものお二人の会話から類推して」
つむぎ「流石、プロ!」
真優「伊達に長年店員やってないですね!!」
店員A「じゃあ戻りますか」
つむぎ&真優「あら(ガクッ)」
店員A「私が先導しますのでついて来てください」
真優「あ、はい」
つむぎ「了解で~す」
真優「ドラクエⅡだ」
つむぎ「じゃあ、うちは『ムーンブルクの王女』か」
真優「そうそう(笑)」

    3人はお城……ならぬ、たこ焼き屋・ハフハフボールに戻る。


【第6場 再びハフハフボール】


つむぎ「じゃあ『勇者』の小野塚さん、生ビールください」
真優「僕も『とりあえず生』で」
店員A「はい、ありがとうございます」

    すぐにジョッキ生が運ばれてくる

真優「じゃあ、乾杯!」
つむぎ「乾杯!……って何に対して?」
真優「つむぎちゃん……今、幸せ?」
つむぎ「? ビールがあるから、幸せよ~っ!!」
真優「じゃあ、それに対して」
つむぎ「ふ~ん」
真優「僕の事、幸せにしてくれるんでしょ?」
つむぎ「なんで?」
真優「だってさっきの理屈だと、幸せな人は、相手を幸せにするのでは」
つむぎ「はあ~」

    つむぎはたこ焼きを一つ、口にする。

つむぎ「おいしいけど……熱い!」
真優「あれっ! つむぎちゃん、これっ!」

    真優は店内に置かれたデジタルフォトフレームに気付く

つむぎ「はふ、はふ……映像流れてるけど、直ってるの?」
真優「たぶん。小野塚さん……これ、僕のですよね?」
店員A「もちろんそうですよ。直してくださいました」
真優「小野塚さんがですか? ありがと……」
つむぎ「真優くん、もうちっと日本語勉強しなさい。そういうワケじゃないでしょ」
店員A「あちらの奥にいるお客さん」
つむぎ「あっ、そうなんですか!? お礼言いに行かなきゃ」
お客1「もう聞こえてますよ」
つむぎ「ありゃ。本当にありがとうございました」

    つむぎは奥の方に少し移動

客1「いや私なんか、それに空手チョップ喰らわしただけなんで」
真優「なんですかそれ」
つむぎ「とにかくありがとうございました……真優くん、修理代払おうよ」
真優「うん」
客1「いえいえ私なんか……だから何にもしてませんから」

    お客1、奥の席から移って来る

真優「あれ? さっきの」
客1「あんなにいい作品、ここで観れなくなっちゃったら残念ですからね」
真優「……修理代払います。幾ら掛かりましたか?」
客1「だから……じゃあ……えっと……300円頂けますでしょうか」
真優「300円?」
客1「私この間、当選番号の宝くじ落としちゃいましてね。と言っても7等300円ぽっちの当たりくじなんですが」
つむぎ「えっ?」
客1「その落としちゃった分を払っていただけたら、もう充分過ぎます」

    真優・つむぎは、互いに宙に目線を泳がせている
    客1は、二人を眺めながら柔和に微笑んでいる。

真優「じゃあ……300円。これで」
客1「ありがとう!」
つむぎ「一件……じゃなかった、二件……三件? とにかく落着っと」
真優「ゲラゲラッ」
つむぎ「何よ笑って……そうだ真優くん……今、幸せ?」
真優「そうだな……ちょっと幸せかな」
つむぎ「ふうん、そう」

    その時、店員Aが二人の前に薄焼きせんべいみたいなものを沢山差し出した

真優「なんですか、これ?」
店員A「サービスです。おつまみに、どうぞ」
つむぎ「これ、なんでしたっけ?」
店員A「たこせんのせんべいだけ余っちゃったんです。食べられるだけ、食べちゃってください」
客1「おっ、大サービスですね」

    真優・つむぎの二人は、互いに顔を見合わせる

<終>

都緒king物語 真優・つむぎ 編 第二話

2010年12月30日 10時55分50秒 | 『都緒king物語』関連
【第2場 幸龍】


真優「お客さんいっぱいだね」
つむぎ「繁盛してるね、幸龍」
真優「どうしよっか?」
つむぎ「他のとこに行く?」
真優「そういえば前に、行きたいお店あるって言ってなかった?」
つむぎ「あ? あぁ、あぁ、あったね。思い出した」
真優「そこ行ってみようか」
つむぎ「わかったわ。行ってみましょう」

    二人は次の場所へ向かう


【第3場 ピッツァマン】


つむぎ「なにこの行列!?」
真優「10人以上並んでるかな」
つむぎ「何時間待ちか聞いてみる」

    つむぎは店に入る

つむぎ「2時間だって」
真優「ひええ」
つむぎ「どうしよ?」
真優「やめようか」
つむぎ「遅くになっちゃうもんね。ほか探そ」

    二人は、ブラブラ町を歩き始める(町を上から写した画像。「現在位置」が動く)


【第4場 イトーヨーカ堂前 宝くじ売り場】


つむぎ「あっ、買おうかな」
真優「ここで?」
つむぎ「うん」
真優「あまり気が進まない」
つむぎ「いいじゃん。うちが買うんだから」
真優「そうだけど」

    つむぎは窓口の前に行く

真優「はあ……」
つむぎ「伯父さん、宝くじ3枚ください」
伯父さん「おっ、つむぎちゃん。真優がいつもお世話になってるね」
つむぎ「後にいますよ」
伯父さん「真優くん、こっち来なさい!」
真優「はい」

    真優は渋々つむぎの隣に立つ

伯父さん「つむぎちゃん泣かしてないか?」
真優「まさか! 泣かしたりしませんよ」
伯父さん「大切にしてるか?」
真優「……大切にしてますよ」
つむぎ「ふーん」
真優「なんだよ?」
伯父さん「はい、つむぎちゃん、3枚。900万円ね~」
つむぎ「900万?(笑)ありがとう」
伯父さん「つむぎちゃんにはまけといてあげる」
つむぎ「ありがとうございます。じゃあ、900円で」
真優「伯父さん、宝くじが落ちてる」
伯父さん「空くじなんか、このへんにはいくらでも落ちてるよ」
真優「これ前回のだ。当たってないかな?」
つむぎ「当たってるの落とすワケないじゃん」
真優「わかんないよ。伯父さん、調べてもらえます?」
伯父さん「ハズレ券だと思うけどねえ」
真優「わかんないじゃないですか」
伯父さん「……おぉ、当たり!」
真優「えっ」
つむぎ「ほんとですかあ!?……何等?」
真優「何等が当たったんですか?」
伯父さん「7等」
つむぎ「7等っていうと……いくらだ?」
伯父さん「300円だよ」
真優「300円か……」
伯父さん「はい、真優くんにやるよ」
真優「えっ、いいんですか?」
つむぎ「いいのかな?」
真優「300円ぽっちだし、いらないですよ
伯父さん「真優くん、いいか……人生に偶然はない。すべてが真優くんに与えられた『縁』なんだ」
真優「はあ……それが今とどんな関係が」
伯父さん「大有りだ」
真優「はあ」
伯父さん「要はその当たりくじの縁も、どこかで真優くんに役立つ時が来る」
真優「はあ」
伯父さん「そういうことだ」
真優「はあ」
つむぎ「真優くん、一応もらっておこうか」
真優「そうするかなあ」
つむぎ「(真優に向かって小声で呟く)伯父さんの言ってるコトは分からんけどね。でもここは伯父さんの顔を立てて」
真優「(小声で)わかった」
伯父さん「真優くん!?」
真優「わかりました、伯父さん。頂いておきます」
伯父さん「よし! じゃあ二人にグッドラック!」
つむぎ「ありがとうございます」
真優「伯父さん、じゃあ」
伯父さん「つむぎさん、真優くん、またな」

    二人は、宝くじ売り場をあとにする。

都緒king物語 真優・つむぎ 編 第一話

2010年12月19日 09時04分11秒 | 『都緒king物語』関連
【第1場 ハフハフボール】


啓人『僕はキミを幸せにする!』
安未『ほんとに?』
啓人『もちろん!』
安未『……ありがとう』

   啓人と安未は互いの手を握り、見詰め合う。
   ……以上は……デジタルフォトフレーム内の、ドラマ。

客1「これ、面白いよ」
真優「あ、ありがとうございます」
つむぎ「……」
真優「どういうところが面白いですか?」
客1「どういうとこって……えーと……泣かせるっていうか……なかなか感動的で」
真優「そうですか……ありがとうございます」
つむぎ「真優、人を困らしちゃだめだよ」
真優「えっ、どういうこと?」
つむぎ「もういいよ」
真優「つむぎ、どういうこと?」
つむぎ「もういいってば」
真優「……」
店員A「お二人、ご注文が途中でしたが」
真優「あ、小野さん……僕等たこ焼き一つずつで」
店員A「はい、ありがとうございます」
つむぎ「小野さん、うちチーたこでね」
店員A「わかりました」
真優「小野さん、僕のたこ焼きからしマヨネーズで」
つむぎ「真優、注文は一回で済ませてね」
真優「つむぎちゃんだってチーたこって追加したじゃん」
つむぎ「最初に注文した時に、からしマヨネーズって言えばいいじゃない」
店員A「つむぎちゃん、私全然大丈夫ですから」
つむぎ「そうですか」
店員A「それよりこのお話、お客さんに好評ですよ」
真優「ありがとうございます!」
店員A「ウチいろんなお客さん来ますけど、皆さんに見せてますから」
真優「ありがとうございます!」
つむぎ「…」
真優「皆さん、何か言われてました?」
店員A「え……えーと、好評でしたよ」
真優「そうですか、ありがとうございます!」
つむぎ「……」
客1「これ作るのに、なにかテーマみたいなものあったんですか?」
真優「いいことを訊かれますね(喜)。今回は、『幸せ』ってなんなのかを描きたかったんですよ」
客1「ほお」
真優「僕はですね……例えば、僕だけが幸せだったとしても、それは幸せだとは思わないんですよ」
客1「へえ」
つむぎ「……」
真優「僕に関係する人全員が幸せじゃなかったら、僕は幸せにはなれない」
客1「おぉ」
真優「それが幸せなんじゃないかなって、僕は思うんですよ」
客1「若いのにねえ」
真優「はい?」
客1「いい考えを持っているねえ」
真優「そうですか? ありがとうございます」
つむぎ「そこで調子に乗らない」
真優「えっ?」
つむぎ「自慢したら駄目じゃない」
真優「え?」
つむぎ「いくらすごいコトしても、普通ですって顔してなきゃ」
真優「俺、自慢なんかしてないよ」
つむぎ「ふーん、ならいいけど」
真優「なんか突っかかるねえ」
つむぎ「そんなことないわよ」
店員A「お二人、もう少し待っててくださいね、もうすぐたこ焼き出来ますから」
真優「あっ、はい。ありがとうございます」
つむぎ「それ見せてよ」
真優「えっ? デジタルフォトフレーム?」
つむぎ「うん」

    つむぎはデジタルフォトフレームを手に取る

つむぎ「ふーん、このフォトフレームは優れモノよね」
真優「画面を見てよ」

    つむぎはフォトフレームを高く掲げる
    その時、

つむぎ「アチッ!」
店員A「あっ、すみません!」

    つむぎは手に持ったフォトフレームを床に落としてしまう

真優「あっ!」
つむぎ「あー……」
真優「壊れてないかな……あれっ、画面に何も映らない。真っ黒だ」
つむぎ「マジ!?」
真優「壊れちゃったかも」
つむぎ「……ごめん」

    つむぎは、立ち上がって店を出る
    真優もすぐに後を追う

真優「つむぎちゃん……」
つむぎ「ゴメンね、真優くん」
真優「大丈夫だよ」
つむぎ「大切なものでしょう? 本当にゴメン」
真優「大丈夫だって」
つむぎ「……」
真優「つむぎちゃん……俺、つむぎちゃんのコト幸せにするから」
つむぎ「はっ!?」
真優「つむぎちゃんが幸せになることが、俺の幸せだから」
つむぎ「なんで今そんなこと」
真優「いいじゃん、言いたかったんだもの」
つむぎ「……真優くんは今、幸せ?」
真優「えー……そんなことわからないよ」
つむぎ「自分が幸せじゃないのに、人のコト幸せにできる訳ないじゃん」
真優「えっ……そうなのかな」
つむぎ「そんなこともわからないの?」
真優「……つむぎちゃんは幸せなの?」
つむぎ「どうなんだろ? うちもわかんないや」
真優「そうなんだ(笑)」
つむぎ「うん、そうなんだ」

    ハフハフボールには戻りにくい空気

真優「ラーメンでも食べにいかない?」
つむぎ「いいよ」

    二人はラーメン屋「幸龍」に向かう

A DAY OF A CITY

2010年12月16日 23時31分40秒 | 『都緒king物語』関連
 窓を開けた 目の前
 隣の 家の壁で

 ほら 空を見上げても
 何も無い
 星も 見えない

 でも
 夕日と
 朝日は 綺麗なの

 少しは
 いいところも
 あるんだよ

 皆の
 願い
 叶います
 ように……

 広い
 マチと マチとで
 出逢った

 ワタシと
 ワタクシとの
 深まりを

 きっと

 叶え
 られます
 ように……



 「新・都緒king物語『序』」再始動!!
 制作報告を、随時このブログでお知らせします!
 よろしくお願いします!!

親友に依存している

2010年12月13日 00時24分39秒 | 詩集・つれづれ
 僕は君としか遊ばない
 ここに来たら 君しか見えない
 他にも沢山いるけど
 君にしか興味がない
 甘えてるのかな
 子供なのかな
 他の人は関係ないなんて
 君だけが友達だなんて
 ルームメイトは話し掛けてくるけど
 それに僕は応えるけれど
 それは僕にとってはただの空返事
 ウマくやってるだけなんだ
 秘密だよ
 こんなこと誰にも言えない
 僕には君だけ
 でも、
 君にとっての僕は……?

約束

2010年12月09日 23時26分10秒 | 詩集・つれづれ
 人が前を向く時に大切なこと
 生きる為の道標となること
 失うと迷うもの
 沿って歩むとポカポカするもの
『電話しながらアクビするな』
『好きだけど愛してるって言わない』
 ゴールじゃなくて通過点
 みんなその為に走り出すし
 だから生きていける
 生きるためにはたくさんの約束が必要だけど
 それを失わずに生きていける人はいない
 悲しまないで
 落ち込まないで
 上を向く約束なら幾つ結んだっていい
 錠のような約束なんかするな
 今日を励ましてくれるもの
 いくつだって持て
 それは交わすもの
 形あるもの
 君を励ましてくれる いくつもの力になる
 約束は
 それは全ての言葉

プレゼントの結び

2010年12月05日 11時31分16秒 | 小説・短編つれづれ
トゥーサ・ヴァッキーノさん『プレゼント』(『ボッコちゃん』より)
haru123fuさん『トゥーサ・ヴァッキーノさんの「プレゼント」のつづき』
つとむューさん『続きの続きのプレゼント』
の続きです。


 今日はクリスマス。一体何年ぶりだろう? ショウタの経営するホテルでささやかなパーティーを開いている。
 ノボル、アツシ、ショウタ、メグちゃん、ミツコちゃん、ユミちゃん……小学校からのメンバーが揃った。
 本日の主役はまだ登場していない。今年二度目の晴れ舞台に、もしかしたら裏で緊張しているのかもしれないな。
「結婚おめでとう!」
 主役の登場に、全員が手に持ったクラッカーを鳴らす。拍手で迎える。
 カトーは新郎の手を握りながら、幸せそうな笑顔で応えた。
「良かった。みんな幸せになって」
 看護士の方のカトーさんが、僕の隣で呟いた。続けて僕に向かって言う。
「あなたもですよ」
「そうですね。ありがとう。カトーさんのお陰です」
「どっちの?」
「あなたに決まってるじゃないですか……いや、違うか。妹さんも含めて、みんなのお陰かな」
「その通りですね」
 みなで、山盛り出てきたショウタんとこの唐揚げスペシャルをパクついていると、ミツコちゃんがピアノの演奏を始めた。
 あ、この曲……
「さっき聞いたんだけど、カトーさん……あ、もう苗字違うか……彼女の、思い出の曲なんだって」
「ふうん」
 僕は、久し振りに、手に持った「オルゴール」のねじを巻く。
 すると……人も、未来も、ちゃんと目の前に広がっている気がした。
 そしてミツコちゃんの演奏は、相変わらず抜群に上手だった。

サンタクロースの石川さん

2010年12月05日 01時58分24秒 | 小説・短編つれづれ
 石川さんは悩んでいた。
 今の世の中、何をプレゼントすれば子供達は喜んでくれるんだろう?
 石川さんは、今年の夏にフィンランドでサンタクロースの世界公式資格を取得したばかりである。
 資格を取る際、妻は意外と応援してくれた。しかし、友人の評価はさっぱりだった。
『気でも違ったか。今の子供は親に直接クリスマスプレゼントをねだるくらいだぞ。サンタクロースなんぞ、コスプレの一種だとしか認識しておらん』
 しかし石川さんは、子供たちに夢を与えたかった。それが若い頃からの夢だったのである。
 そうして仕事をリタイアした後、サンタクロースになる決心をした。海外に何ヶ月も滞在した。そして、血の滲むような努力をした。
「そうだ、このアイデアがいい」
 どうやらプレゼントの案が固まったらしい。
 石川さんは真っ赤なコスチュームに身を包み、家の屋根の上にのぼった。
 体はサンタクローズの衣装そのまま、ただし、頭には赤いほっかむりをしている。
 そして、片腕には千両箱のようなものを抱えている。
「ほうら子供たち、プレゼントだぞう~」
 千両箱の中から、石川さんは赤くて長いものを沢山ばらまいた。町中の屋根から屋根に飛び移り、至る所にそれを撒いた。
 しかし子供たちは、家の外に出てこない。
 そりゃそうである。12月の真冬の最中、夜に家を出て、靴下なんぞをわざわざ取りにくる子供が、いるわけがない。
「あんたそりゃ失敗するよ」
 落胆して自宅に戻った石川さんは、妻と話していた。
「しかしウチのご先祖の五右衛門様は、ああやって一般庶民に贈り物を与えていたのだぞ」
「それは小判をばらまいたって話でしょうが。靴下なんて撒いても、今の子供は見向きもしないでしょう?」
「靴下を贈ろうとした私の気持ちがお前に分かるのか?」
「わかりますよ。その靴下を枕元に置いてもらって、サンタクローズを信じる気持ちを子供たちに思い出させようって寸法でしょう」
「むぐ。その通り」
「で、もちろんその靴下の中に入れるプレゼントは用意してあるんで?」
「それは子供たちの親のすることだ」
「あんた馬鹿でしょ」
「いんや、俺は石川五右衛門だ……ゴホゴホ」
「風邪ですか? 顔が赤いですよ」
「あとはトナカイに任せよう」

たいむりぃNEWS用連載原稿第7話

2010年12月04日 23時45分06秒 | 小説・短編つれづれ
お題:『「首輪」「ラーメン丼」「フライパン」「アンドロイド」「特殊部隊」「片道チケット」「ビーム」……以上すべての言葉を使って学園物の小説を書きなさい。』~第7話~(おっちー作)

「あなた、お名前は?」
 ハヤ美はその少女に訊いた。
「なんであんたに名乗らなきゃならないの」
「あなたこの学園の生徒でしょう? 今日から仲間になりました、ハヤ美と申します。あなたは?」
 少女はひとしきり考えをめぐらせたあと、言葉を発した。
「ウチはみすりる」
「あなた、みすりるって言うんだ。よろしくね」
「よろしく~」
「私のコトは「ハヤ美」って呼んでいいから。一緒のクラスになるといいね」
「えっ?」
「どうしたの?」
「この学園、クラス分けなんてないよ」
「そうなんだ、全員合同で訓練するんだね。じゃあ仲間、仲間」
「訓練っていうか……地獄よ」
「はっ?」
 今度はハヤ美が訊き返す番だった。
「明日になれば分かるよ。あなた、死なないでね」
 物騒な事を言って、みすりるは去って行った。
 死ぬとか死なないとか、事前に聞いてはいたけど、この学園ではどんな訓練をやるのだろう。
 不安な思いを抱きながら、ハヤ美は寝床についた。
 ハヤ美が眠りにつこうとしている時……窓の外を、蛍が飛んでいた。黄緑色の光をともしながら、何度か窓ガラスに、コン、コン、とぶつかっている。ハヤ美はその音には気付かず、すでに深い眠りに落ちていた。するといつの間にか、蛍の姿はなくなっていた。

 翌日、ハヤ美は知った。
 この学園の「訓練」は訓練と呼べるような生易しいものではなかった。
 ハヤ美が見たのは戦場の、それも最前線と見紛うかの激しい兵士同士の闘いだった。それが、学園内の野外訓練場全体で、犬一匹紛れ込むスキ間も無い密度で行われていたのである。
(つづく)