慎平と将が入場してくる。
2人はさしてきた傘をたたむ。
将は立ち止まり、慎平の方を向き、
将 「ここが僕の場所だ」
と言う。
慎平 「なんで俺もここまで付いてきたんだろうな」
慎平はひとりごつ。
将はドアを外側に開け、中に入る。
慎平も続いて入る。
舞台に田中みどりが入ってくる。
みどり「あら、」
将 「こんちは」
みどり「今日は。」
慎平 「こんにちは~」
みどり「あら?」
将 「(みどりに)慎平くん」
みどり「今日は」
慎平 「どうも」
みどり「(将に)お友達?」
将 「美術展で知り合ったんだ」
みどり「へえ~」
慎平 「まあそんなところです」
みどり「?」
慎平 「(将に)ここどこなの?」
みどり「??」
将 「僕の教室」
慎平 「なんの教室?」
慎平は少しイライラ。
将 「絵画教室」
慎平 「(感心したように(?))はあ~(?)」
みどり「ここは山岸先生の教室よ」
将 「わかってます」
みどり「あと愛菜さんの」
皆神 「あの~…」
皆神祐樹が首だけ出している。
みどり「はいっ?」
皆神 「みどりちゃん、」
みどり「なんですか、皆神さん?」
皆神 「コピー機借りていい?」
みどり「はい、もちろんいいですよ」
皆神 「すいません…」
将 「皆神さん、人見知りなんだから。入ってきていいですよ」
皆神 「いや、」
慎平 「(皆神に)どうも、」
皆神 「そういう訳では…(慎平に)あ、初めまして」
慎平 「はじめまして」
皆神 「皆神です」
慎平 「慎平です」
みどり「なに、慎平さんなんですか?」
慎平 「え」
みどり「名字は?」
慎平 「…」
将 「教えてくれないんだよね」
みどり「え~、何でですかぁ~?」
慎平 「(みどりに)キミ、名前なんていうん?」
みどり「あ、ごまかした。まあいいや、田中みどりです」
皆神 「私、(名前)呼んでましたよね」
みどり「皆神さん、入ってきてください、コピー機こちらです、分かりますよね」
皆神 「ハイハイわかります」
皆神がみどりに促され、入ってくる。
皆神は後ろを向き、コピーを取り始める。
皆神が入ってくる途中で、
慎平 「ところで俺、ここに何しに来たんだ?」
みどり「聞いてどうするんですか。将くん友達なんでしょ?」
将 「あぁー」
みどり「違うの?」
将 「いや、友達」
慎平 「(俺は)よくわかってないぞ」
みどり「そうなの?」
慎平 「将くんに聞いて」
みどり「?」
将 「僕が慎平くんをここに連れてきたのは、」
修 「ウィーッス!」
市川修、ドアを開けて入ってくる。
みどり「あらこんにちは」
慎平 「あぁ~~っっ!!」
修 「ええ~~ッッ!?」
慎平 「修ぅーっ!」
修 「慎んーっ!」
慎平と修は両手でハイタッチをし、握手して再会を喜んでいる。
みどり「なになに??」
将 「……」
将は少し不機嫌そう。
慎平 「ひっさし振り!どうしてた?っていうかどうしてここに?」
修 「俺のセリフだって、それ。何で慎がここにいる訳?見学?もしかして。ここに入るの?」
その間にコピーをし終えた皆神が退場。
慎平 「違う、そこの彼に連れて来られたんだよ。訳も分からず」
修 「へ?将さん?」
将 「まあな」
修 「まあいいや、久しぶりだもんなあ。向こうで話そうぜ」
慎平 「あ、ああ」
慎平と修は奥に行きかける。
将 「ちょっと待て。話がまだ終わってない」
修 「あぁ、そうなの?じゃあ済ませてよ」
将は慎平に歩み寄る。
将 「慎平くん、今度、日本中の絵描きが出品する大規模な絵画コンクールがあるんだ」
慎平 「?うん」
将 「君も出してみよう」
慎平 「はあ?」
将 「何とかなる、その面構えなら」
慎平 「顔、褒められてるのか?」
修 「多分な」
慎平 「なんだかなあ」
将 「決まりな」
慎平 「えっ?」
みどり「こういう人なの、将くんって。慎平くん、悪く思わないでね」
慎平 「悪くは思わないけど、びっくりする」
将 「(みどりに)そういう訳で、彼は今日からここの生徒ね」
慎平 「え?」
修 「いいじゃんいいじゃん、そのほうが楽しいし」
慎平 「えぇ~っ!?」
みどり「あっ…入会されますか?」
慎平 「ええっ?」
将 「入りなさい」
修 「入っちゃえよ、慎」
慎平 「でも料金とかは?」
みどりパンフを取り出し、
みどり「将くんと修くんの紹介ということなら、これくらいになりますよ」
慎平 「あぁ~~…」
修 「高くないだろ?」
慎平 「まあこれなら」
修 「よし、決まりっ」
慎平 「いいのかなぁ?」
将 「いいんだよ」
修 「良かったじゃん」
慎平 「そうか?」
修 「久しぶりに遊ぼうぜ」
将 「慎くんは遊びに来たわけじゃない」
修 「そうなん?遊びに来たんじゃないの?」
将 「違う」
修 「まあいいよ、話は終わったんでしょ?奥で話せる部屋があるから」
慎平 「ん」
修 「高校卒業以来だよね、何してたー……」
慎平・修は退場。
みどり「残念、取られちゃったね」
将 「別に…」
みどり「強がってる」
将 「うるさいな」
将は奥のアトリエに行ってしまう。退場。
みどり「また絵に逃げるの――?」
ひとり取り残されたみどり。
みどり「苦しいな…」
みどりは溜め息ひとつ。
気を取り直して、そこにあるパソコンの画面に向かう。
キーボード・マウスを扱いインターネットをしている。
みどり「パシオン365にこんな番組登録されてたんだ~。『サンライツ・セッティング』?聞いた事ない番組名だな…聴いてみるか」
音楽が流れ始め、DJのトークが聞こえてくる。
若い女の子の声。
インターネットラジオの声「こんにちは~!サンライツ・セッティングを聞いてくれてありがとう!ナビゲーターの今井麻衣子です」
みどり「イマイマイコ……マイマイ…」
麻衣子「この番組も始まってから1ヶ月。ようやくリスナーの皆さんからメールなどが届くようになり、ほんとナビゲーターやって良かったと思う毎日。ウルウルです。感動です。その中から厳選してメールご紹介しますね。でも皆さんからいただいたメールは全てこの私が読んでますから。信じていてくださいね。今日読めなかったメールは、いつかまた機会があったら紹介したいと思っています。ではその前にオープニングナンバーはこの曲から。『○○○で、○○○○』」
ノリのいい曲が流れ始める。
ちなみにこの曲は、今井麻衣子が渋谷恵美と相談して、番組で流すと決めたものである。
みどり「あ、この曲好き」
みどりはしばらくそのままで音楽を聴いている。
するとドアをノックする音がする。
みどり「はーい、」
みどりは中腰。ほんとは聴いていたい。
再びノックの音。
みどり「はい」
みどりは立ち上がり、出入り口に向かう。
コンコンコン…みたびノックの音。
音楽はいつのまにか消える。
みどり「はい、どなたでしょう?」
みどりはドアを開ける。
するとドアのすぐ前に立っていた路也徹の頭に、ドアが「ゴツン!」と当たる。
徹 「痛ぁッ!」
みどり「あっ、すみません」
徹 「このドア、こっちに開くんだ…」
みどり「大丈夫ですか?この建物古いから…」
徹 「いや、大丈夫…」
みどり「ごめんなさい」
矢崎 「こちらに、水原将という男はいるかな?」
みどり「はいっ?あ…はい、居ますけど」
矢崎義隆と徹は眼鏡(サングラス?)に帽子といういでたちで、顔があまりよく判別できない。
矢崎 「ちょっと失礼させてもらう」
みどり「あのっ、どちら様ですか?」
徹 「ちょっとで済むんで」
みどり「あっ、あのっ」
矢崎と徹は、中にドカドカと遠慮なく入ってくる。
矢崎 「こっちか?」
みどり「あ、はい、そうですけど」
矢崎は奥(袖?)へと退場。
徹 「すぐ済みますからね~」
徹も矢崎のあとにすぐ続いて奥へ。
みどりに手を振ったりなどしつつ、退場。
みどり「……誰?……あっ、……」
みどりはこのとき何かを思い出したが、それが何だったのかすぐに分からなくなってしまう。
みどり「…何だっけ?……まいっか。…将くんの友達なら大丈夫(?)…でしょ」
みどりは再びパソコンに向かう。
鼻歌など歌いつつ。
みどり「ブログの更新でもしようかな…と」
またキーボードとマウスを使い、インターネットをするみどり。
みどり「…あ、慎平くんのこと書こう」
みどりはキーボードを打つ。
みどり「…今日、うちの絵画教室に新しい生徒さんがやって来ました。S君とでもしておこうかな。元々うちの生徒だったO君と親友だったらしく、大盛り上がりでした。O君、大人しくてどちらかというと目立たない人だと思っていたのに、あんなにテンション高いところを見るのは初めてで、意外でした。S君は、なかなか面白いヤツです。でもちょっと遊んでる風。ちょっといいかな、とも思うけれど、私の想いは一途なので揺らぎもしません」
キーボードを打つ手を休め、
みどり「これくらい書いちゃったほうが面白いっと」
いつの間にか、みどりの後ろには皆神がいる。
皆神 「みどりちゃん?」
みどり「はいっ!!?」
みどりは、飛び上がらんばかりに驚く。
皆神 「ごめん、驚かすつもりはなかったんだけど、」
みどり「あ~、びっくりしたぁ~…(皆神に)大丈夫、皆神さん、なんですか?」
みどりは立ち上がって皆神の視界をふさぎ、パソコンの画面が見えないようにする。
皆神 「いや、……何してるの?」
みどり「あぁ、ブログ書いてたんです。パソコンで」
皆神 「ブログ?」
みどり「インターネット上に書き込める日記みたいなものです」
皆神 「いや、知ってる。私も持ってるから。ブログのページ」
みどり「そうなんですか!?知らなかったなあ。教えてくださいよ。なんてタイトルですか?」
皆神 「いや、恥ずかしい」
みどり「いやいやネットで公開してるんだから今さら」
皆神 「そうか。いや~…えっとね…」
みどり「はい」
みどりは皆神を見つめる。
皆神 「いやいやいやいや恥ずかしい!」
みどり「そうですかぁ?じゃあいいです」
皆神 「いやそんなに見つめられると…」
みどり「え?」
みどりは皆神の顔を眺める。
皆神 「いや、…『カミカミのペンシルノート』という…」
みどり「へえっ、面白い題名ですね」
皆神 「いや、皆神のカミを取って…」
みどり「はい、分かりますよ」
皆神 「いややっぱり恥ずかしかった!」
みどり「これからもっと恥ずかしいですよ。検索して見ちゃうもんねー。皆神さんのブログ」
皆神 「ええーっ!」
みどり「『カミカミのペンシルノート』……あった!」
皆神 「あらららら」
なんか皆神さん、嬉しそうにも見えるぞ。
みどり「…へえ~~っ……ふぅ~ん……」
みどりは興味深そうに皆神のブログを読んでいる。
皆神 「……なにか感想などあれば」
みどり「皆神さんらしい」
皆神 「はい、」
みどり「面白かった」
皆神 「ありがとうございます」
みどり「どういたしまして」
皆神 「……みどりちゃん、」
みどり「はい?」
矢崎 「失礼」
矢崎と徹が、奥から戻って出てくる。
徹 「みどりちゃん、まったね~!」
矢崎と徹、そのまま表に出て、退場。
皆神 「なんですか、あいつら?柄悪いな」
みどり「……」
みどりはじっと矢崎たちが出て行ったドアの方を見詰めている。
皆神 「みどりちゃん、どうしたの?」
みどり「……私、やっぱり昔、あの人に会ってる気がする…」
皆神 「えっ?あの人って今の?…あの柄悪い?」
みどりは我に帰り、焦って皆神に向き直る。
みどり「あっ、いや違います!今私なにか言いました?白昼夢!?ちょっとボーっとしてたんです。忘れてください!」
皆神 「えっ?あっ、そう?…ならいいけど…」
みどり「ごめんなさーい」
皆神 「…」
将が入ってくる。
将 「なんだかうるさいな。何の騒ぎだ?」
みどり「あっ将くん、今の人たち誰?」
将 「あぁ、」
少し間。
将 「知り合い。」
みどり「そう、…わかった」
変な間。
皆神 「…あっ、水原君、水原君もブログやってる?」
将 「えっ、やってますよ」
みどり「そうなの!?」
将 「なに?」
みどり「アドレス教えて」
将 「秘密」
みどり「なによケチー~」
将 「なんだよケチって」
みどり「ケチはケチじゃん」
将 「僕ちょっと出てくるね」
みどり「えっ?何で?」
将 「何でってそのつもりで出て来たんだから」
みどり「そう…」
将 「じゃ、」
将、ドアから出て行き、退場。
見送るみどりと皆神。
みどり「……」
皆神 「なんか怪しいなあ」
みどり「何がですか?皆神さん」
皆神 「あの柄悪い奴らと水原君、なんか怪しい」
みどり「どういう意味ですか?」
皆神 「いや分からない、勘だけどね。私のカン鈍いから、気にしないで」
みどり「そう言われると気になりますね」
皆神 「気にしてくれる?」
みどり「いや、それほど」
皆神ずっこける。
みどり「冗談ですよ、皆神さん。だから気にしませんし、気にしないで」
皆神 「えぇ?」
みどり「(小さな声でつぶやく)お願いします……」
皆神 「…?(よく聞こえない)」
慎平と修が入ってくる。
修 「なになに何の話?」
みどりはハッとする。
皆神 「自分のブログ持ってるかって話だよ」
慎平 「えぇ?」
みどり「修くんはブログやってる?」
修 「やってるよ」
みどり「そうなんだ。じゃあ慎平くんは?」
慎平 「何ですかブログって?」
本気の慎平。
皆コケたり困ったりする。
修 「お前ほんとにブログ知らないの?」
慎平 「ああ」
修 「それはすごいよ!」
慎平 「スゴイか?」
みどり「ブログってね、ネット上で公開できる日記みたいなもので、」
慎平 「えっ、日記を公開するの?」
修 「そうだよ」
慎平 「恥ずかしくねー?それ」
皆神 「改めて考えるとまあ」
みどり「恥ずかしいって言えば恥ずかしいかもね」
慎平 「そうだろ?なんでそんなことすんのさ?」
修 「慎もやってみろって、面白いから」
みどり「コメントとか返ってくると楽しいよ」
慎平 「そうなのかぁ~?俺にはよく分からん!」
皆神 「誰でも簡単に始められますから」
修 「そうそう、やってみな」
慎平 「うーん…考えとく」
修 「始めたらアドレス教えろよな」
慎平 「お前には絶対教えない」
修 「あん?」
みどりと皆神は笑っている。
修 「で、お前ほんとに絵画コンクールに出品するのか?」
慎平 「…うん、ちょっとやる気になってきた」
修 「ほんとかよ?俺だって迷ってるのに」
みどり「そうなの?迷うことないよ、チャレンジチャレンジ」
皆神 「そうだよ。迷う必要はない」
修 「そういう皆神さんは?」
皆神 「…まだ未定」
修 「何ですかそれ?」
慎平 「みどりさんは描かないの?」
みどり「私は全然!ただのスタッフだし、絵なんてヘタもどヘタですから」
慎平 「そうなんだ~、でも俺の方が下手だと思いますよ」
みどり「そんなことないって!ぜんぜん上手いはず」
慎平 「じゃあ今度見せ合いましょう」
みどり「やだ~~っ。描いたことないもん」
皆神 「描いてみたら上手いんじゃないの?」
みどり「いや絶対ヘタです。描かなくてもわかる」
修 「高校の頃の美術の成績は?」
みどり「確か“頑張りましょう”」
修 「あー…いや、5段階とか10段階で」
みどり「忘れちゃった。うふ」
皆神さん可愛いとか思ってるぞ、絶対。
慎平 「俺4だったな」
修 「5段階で?」
慎平 「お前知ってるじゃん、10段階」
みどり「(慎平に)それでなんで絵を描こうと思ったの?」
慎平 「あんたに言われたくないよ!」
みどり「あっそう…ごめんなさ~い」
皆神 「修くんは?」
修 「はい?」
皆神 「成績」
修 「あぁ、8か9くらいだったと思いますよ」
みどり「じゃあ結構いいわね」
慎平 「だからあんたがゆうな!」
みどり「は~い」
慎平 「あ、…俺も言えないか…(低い声色で)」
照明が変化する。
慎平とパソコンだけが見えている。
パソコンの前に座る慎平。
キーボードを打つ。
打ちながら、
慎平 「本当になんで付いて行ったんだろう……将の奴…あ、S.M.の奴か、修正…えっ、SM?あいつSMかぁ……まいっかこのままで、…なんで付いて行ったのか、S.M.に…解らない。けどあのままあいつを1人で帰したら奴が死ぬほど傷付くような気がしたんだ。考えると変な話だけど。あいつの目がそんな色を放っていた。あいつは重要なことを俺に話さないで隠している気がする。それが何かは判らないけれど、それは簡単なことじゃない。なにか複雑な事情なのだろう。それについては、これから、あいつが話してくれるのを待とうと思う」
すみません、長くて(-_-;
久々のONE EYESです。
今回のシーンは顔見せですね。
こんな人が出てきますよー、という人物紹介。
チラリと人間関係(色恋関係?)も触れておいて、この先につながっていきます。
なんとか読み易いホームページ上で発表したいと思ってはいるのですが、なかなかHP作るというのは大変なことで……
頑張りまーす