おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
いろいろ活動してます
そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

めでたいな

2013年11月28日 21時59分32秒 | 小説・短編つれづれ
 わたしのダンナは、ハゲ頭だ。それが、大晦日に富士山に登ろうと言い出した。二人共いい歳だ。真冬に登山……遭難するのがオチなんじゃないかい。
 ダンナは本気だった。嫌がるわたしを言いくるめ、どうにかこうにか、富士のふもとまで連れ出した。それからわたしは、「絶対に登りたくない」と必死で抵抗した。
 わたしのダンナは、昔から口がうまかった。今でもわたしは、だまされて口説かれ、だまされて結婚したと思っている。
 案の定、我々夫婦は遭難をしている。このさっぶい雪山の中、進む道を見失っていた。
「あんたの言う事は、みんな嘘! 昔っからそうだった!」
「言うに事欠いて、ヒドイこと言うなあ、お前」
「言うに事欠いてないわ、本気で言ってるのよ!」
「冗談もたいがいにしいよ。とりあえず、疲れたから休もうか」
「こんな状況で寝るなあ!」
「だからさ、なんとかなるって」
 ならん!そう言おうとした時、ダンナの頭頂がまぶしく光った。一瞬目を逸らしたその後ろから昇ったのは、
「ほら、御来光」

大逆転グランドスラム

2013年11月28日 20時23分36秒 | 小説・短編つれづれ
 真っ赤なお鼻なのは、トナカイならぬこのア・タ・シ……なのだ。サンタみたいに大きなこのお鼻。てっぺんに膿が溜まったって。今度手術するという。アイタタタ。
 そしてほっぺも赤い。なにしろ冬だもの。寒いわあ。着込んで着込んで、外に出掛ける。
 いつも遊ぶ公園。ステディの優が、すぐに寄ってくる。
「寒いね。明日も寒いのかな」
 さあ、どうだろう。きっと寒いんじゃないかしら。
「あっち行こうよ。ブランコで遊ぼう」
 いいけど、あぶないことしないでね。あなたオテンバなんだから。
 二人でブランコ遊び。そんな中、いい男いないかなあ、と探してしまう。人恋しい季節。でも、残念ながらこの場所にあたしのお眼鏡に適うような男はいない。
「あーあ、不倫したい」
「お母さん、フリンってなあに?」
 正太が耳ざとく私の言葉を聞きつけた。
「犯罪」と私は答えた。
「ハンザイってなあに?」正太が続けると、
「正太君、そんな事も知らないの?」優が正太の背中を押しながら、馬鹿にしたように言った。
「優ちゃん、ハンザイって?」
「しちゃいけないこと!」
「じゃあフリンは?」
「しちゃいけないこと!」
 いいのよ、不倫は、しても。私は子供たちに聞こえないように呟いた。そして、空を見上げた。さっきまで一片の雲もなかった青空は色を替え、オレンジと紫のグラデーションに染まっていた。家に帰る時間だ。吹く風は、相当に冷たい。木々の葉っぱは、全て落ちていた。
 家に帰れば、じきにサンタが帰ってくる。私はトナカイ。赤鼻のトナカイ。
 今日はクリスマス。サンタは、ケーキを買ってくるだろう。ヤツの買ってくるケーキは、美味い。口惜しいくらい。
 正太の手を引きながら、私は彼に問うた。
「正太は優ちゃんと結婚するの?」
「うん!」
 口惜しいくらい、ヤツの答えには曇りがなかった。

青くどデカい季節

2013年11月19日 20時18分45秒 | 詩集・つれづれ
さあ、はじまるんだね
いま僕らが迎えた桜の季節
ときめきなんかじゃ、おさまらない心の鼓動
僕は今、ど真ん中にいるんだ
自分が主人公でいられる物語 そんな時代の真ん中に
駆け出してみよう
目の前にあるすべてを吸い込んで
大きく振りかぶって
剛速球をど真ん中に投げつけて
約束ぜんぶ破っても、全員ひれ伏すほど突き抜けて
バックスタンド突き破るほど剛のストレートを投げ抜くのだよ
笑ってら
空みあげたら青い色にカラダ突き抜かれて
K.O.なほどクラクラになって、大笑いされてる
でっかいな!
その真ん中に僕は立っている