おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
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そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

チェス

2019年02月27日 11時07分51秒 | 詩集・つれづれ


西を向け
西に進め

東に向かい
東に進め

そんなこと言われても
僕はひとりしかいないんだよ

どんな我が儘も
僕は受け入れるつもりだったけど

でもそれは
根拠のない
タダの「操作」だよね

それも目的もなく
理由もなく
ただ時間を潰すためだけに
僕のことを動かしているだけ

そんなに僕は暇じゃない

僕は自由になりたい
翼を広げて
空を飛ぶような
なににも縛られない
そんな自由
どこかにあるだろうか
それとも僕は既にそれを獲得しているのか

自由というのは
自分と周りで
話し合って
全てのルールを決められることだ

自分勝手とは違う

2019年02月26日 17時48分33秒 | 小説・短編つれづれ
あたしって三白眼である。
自分の顔がキライだ。そのせいで。
そのせいっつーか……女の子の三白眼って、何? 極めて可愛くない。

あたしはいま、いわゆる女子高生だけど、そのせいで恋人もいないし人気もない。
ああ、親を恨んでいる。両親とも目は大きくて瞳も普通か大きいくらいなのに、なぜ???突然変異???腹違いの隠し子???申し子??

ごめん、意味わからないで使っちゃった。でも言いたかったことは伝わるでしょ?

万博公園の太陽の塔。すげーって思うよ。まさに日本のトップ。芸術は爆発なんよ。



その前を歩いていた。「太陽の塔」を眺めながら。「大阪LOVER」を口遊む。ドリカム、好きなんよ。あたしにLOVERはいないけど。
ひとりで歩いていたんだ。今日は隣に友達もいず、ひとりぼっち。別に寂しいわけじゃないよ。ひとりで街を歩くのは、好き。太陽の塔だって、こんなだだっ広い場所に、たった一人で立ってる。岡本太郎さんに恨みなんぞはなかろうよ。私たちを見下ろす、太陽の塔。そいえばどっちが顔なんだ???
とにかく、私をはるか上空から見下ろしている太陽の塔は、何もかもを知っているように見えた。私のことも、クラスメートのことも、私の家族のことも、社会も世界も、全部。

その時、学生服を着た男の子の姿が目に入ったんだ。
「あれ?」
ウチのクラスの男の子だ。カメラを構えて、太陽の塔を写真に撮っているようだ。
「なにしてるの??」
声を掛けた。とーぜん写真だよね。
「写真撮ってる。見てて分からないか??」
見てて分かってた。
「ふーん」
どんな写真を撮ってるんだろ。見せて欲しいな。
と思っていた。すると、
「睨み付けるなよ。相変わらず目つき悪いな」
こんな極悪非道な回答が返ってきた。
「悪いね」
「別に悪くはないよ」
「違う」
「へ?」
「いいね、の反対。悪いね」
「ワケわかんねー」
「悪かったね」
「それは?」
「日本語って複雑怪奇」
「そーだな。よく分かんないけど」

そいつは笑ってまた写真を撮る姿勢に戻った。おーい、あたしまだいるんですけど。

「見してよ、写真」
「なに、興味あるの?? 俺に、興味あるの??」
「はあ???」
「モテる男はつらいっす」
「オイトマしてもよろしいでしょうか」
「テキトーにして」
「する」

あたしは何となく、そいつが写真を撮るのを眺めていた。
陽がだいぶ傾いてきた。
こいつ、熱心に何かやってる姿は、意外とカッコいいじゃん。

人の気持ちってわからない。

いつ、何に転んで、どう変わるか、何が生まれるかわからない。

こいつは、私の今この瞬間の気持ちは、いつか恋心になったりするんだろうか。
もうすぐ初夏になろうかというこの時期である。
上着の袖も短くなって、みんな開放感に溢れてくる。

「もうすぐ夏だねえ」
「暑いのは嫌いだ」
「そりゃあたしもそうだけど」

これからあたしは海にもいくし、プールにも映画にも遊園地にも行って夏をエンジョイするんだ。
そこに、こいつはいないかもしれない、いやきっといないけど。

「ねえ、このあと時間あるの?」
「えっ?」
「時間空いてる? って聞いてる」
「あいてるけど、どした??」
「未来を見たい」
「なに言ってんのあんた?」
「何でもない。忘れて」
「やっぱモテる男はつらいっす」
「馬鹿じゃないの。タリーズで、撮った写真見してよ」
「ふうん。わかった」
「すぐ行くよ」
「まあ日も暮れてきたし、終わりにするか」

今日は帰りに水着を買おう。
ビキニの、オシャレなヤツ。お臍が見えちゃうような。そんなんでも、まあいいだろう。そんな気分だ。

そのとき隣に誰がいるのか、そもそもいないのかは分からない。

もうすぐ夏だ。夜の空気もだいぶ熱気を帯びてきて。
帰ったら一番にシャワーを浴びよう。
こいつの写真には、もともとそんな期待しているわけではないんだ。
そーじゃなくて

薄眼

2019年02月23日 16時07分45秒 | 小説・短編つれづれ
本当のことは、薄っすらとしか感じることができない。
だから僕は薄眼になる。

強い光は、弱き本当の色を掻き消してしまう。
だから余計な光が入らないように、注意を払って僕は薄っすらと目を閉じる。

そうすると、本当の気持ちを感じられる。
僕は前を向きたいから、ゆっくりと歩く。それと似ている。

「本当の気持ちを教えて欲しい」
そう言われて本当の気持ちを伝える人はいない。
だから僕は目を閉じて、余計な光を遮断する。
君の気持ちだけにアクセスできるように。それだけに集中したいから。

君と二人で歩いていた。
空を仰いで。大気を吸って。そしてすべてを吐き出して。
僕は並んで歩いていた。

「いい天気だねえ」
そういう君は、目を細めて気持ち良さそうな欠伸をする。そして伸びをする。
僕は思わず目をそらした。恥ずかしくなって。いつもそっちに目がいく。
「昨日は雨だったのにね」
そう応えて、足元を見た。猫が足に擦り寄っていた。
「可愛い!!!」
「動物ならなんでもいいんだろ、アンタ」
「そんなことない!!」
彼女はしゃがみ込んで、猫の頭をクシャクシャする。背中を撫で伸ばす。
「猫ってね、尻尾が弱点なんだよ?」
「お前の弱点を聞きたい」
彼女は少し上を見て考えた後で、
「知ってそう」
「俺が!?」
「うん」
「知らんよそんなの!」
「こんなに一緒にいるのに??」
「そーゆー問題じゃないでしょ」
あのひとは少し考えて、動きを止めて、
「知ってて欲しい気もする」
そう言った。
「知ったら攻めるよ、そこ」
「困るな、それ」
「困るでしょ?」
「うん」
「年がら年中攻撃するよ?」
「困るな」
「秘密にしといていいよ」
「そう?」
なぜか笑顔の君。まだちょっとドキッとする。
「遺書に書いてもらおう」
「なにそれ?」
怒り顔になる君。やっぱりドキッとする。
「私を先に殺すつもり?私の方が長生きするもん」
「そーかもな」
「あらあっさり。素直ね」
「男女の平均寿命の差じゃ」
「あー」
それより何より、君はいま凄いことを言った。

本当の気持ちが垣間見えた時、僕はたまらなく幸せで、穏やかな優しい気持ちになるんだ。
それは僕と君だから。君が僕と出会って、僕が君にあの時あの言葉を伝えたから。
それは泣き出すほど幸せで、運命なんて陳腐な言葉が必然っていうちょっとかっこいい言葉にすり替わった瞬間。その時、僕は君と出会った。

僕と君は、出会った。

そしていまこの瞬間がある。いまこの瞬間は、すなわち永遠と言えた。あの、探していた永遠。いまここにある永遠。

そして僕は君と出会って、新しい命が生まれて、堪らない喜びが僕の身体を包み込んだ。
涙で前が見えない。滲んだ、景色と君と新たな命の喚き声。
僕は水滴を流すために目を閉じた。
あ、宇宙が見える。
真実ってこんなに心地よい幸せだったんだね。
君の本当の気持ちが、それがすなわち真実だったんだ。
ありがとう。生まれてきて、いままで生きてきて本当によかった。

僕は薄っすらと目を開いた。
君の本当の気持ちが見える。僕の本当の姿が見える。

「記念写真撮っていい?」
「馬鹿じゃないの???」
「一生に一回の記念」
「一回で終わらす気??」
「いやそうでもない」
「じゃあまたの機会にお願いします」
「へいへい」
二人は笑った。部屋のみんなが笑っていた。ひとりだけ泣いている君も、
それ、笑顔でしょ!?
そう見えた。