おっちーの鉛筆カミカミ

演劇モノづくり大好きおっちーのブログです
いろいろ活動してます
そのうち、みなさんにお目にかかれたらうれしいです

ヒストリー・ダイアリー #4-1,2

2006年09月26日 23時36分50秒 | 戯曲『ヒストリー・ダイアリー』
 どーも~、鉛筆カミカミですー。
 ちょっと今日時間が空いたんで書き込みしますね。
 戯曲「ヒストリー・ダイアリー」続きです。



 SCINE.4-1 たとえば、中華屋にて


     耕平&由里、入場。
     二人は、とある飲食店の店先にいる。
     耕平は店のドアを開け、中に入る。
     由里もすぐあとに続く。由里は、例の本を持っている。

店員 「いらっしゃいませーっ!」
耕平 「ちーっす・・」
由里 「誰に言ってるの?」
耕平 「礼儀だよ、礼儀!」
由里 「ふ~ん・・・それにしてもお客さん全然いないんですけど・・・この辺では有名な、まずい店だったりして」
耕平 「入っちゃった店ん中で、やたらな事ゆーなよな・・」

     二人はそれぞれ席につく。
     (それまでベンチとして使っていた椅子を動かして、座席にする)

耕平 「・・・さーて、なにを食おーかなー・・・」
由里 「(パラパラしながら)・・・でもこれ、ほんとに私の事、こまかーく全部書いてあるね」
耕平 「・・・昨日の彼氏とのケンカの一部始終とかな」
由里 「ほっといてよ! ・・・でも、どーなってんだろ・・・私が覚えてないような子供の頃の話まできちんと載ってるし・・・」
耕平 「うーん・・・ちょっともう一回みして」
由里 (本を耕平に渡す)
耕平 「・・・最後の頁が気になるんだよな・・・」
由里 「何が気になるのさ」
耕平 「・・・ちょっと待ってー・・・ふんふん・・・店に入って、この席について、お前と話してる様子が、細かく正確に描写してあるね・・・・・うわっ、面白い! 由里、見てみろよ! 活字がどんどん浮き上がってくる!」
由里 「耕平、こっからじゃ全然見えない・・・貸してみせてよ!」
耕平 「んっ!(差し出す)」
由里 「あれっ? この頁じゃないじゃない。(最後の頁を探す)・・・・・ほんとだ!・・・すごーい・・・」
耕平 「由里、ちょっとストップ。店の人がくる」
由里 「エッ、ほんと? これ隠さなきゃ」



 SCINE.4-2 9月の夏休み


     真二が入場してくる。
     彼はこの店でバイトをしている、店員さんなのである。
     真二は二人の席までやってくる。

真二 「いらっしゃいませ・・・」
耕平 「あ・・・すみません・・・」

     言いかけた耕平は、真二の顔で視線が止まってしまう。
     由里も同様に、真二の顔をジッと見てしまっている。
     真二はそれを気にする様子もなく、
     すましてコップをお盆から、テーブルの上に置いていく。

真二 「・・・ご注文は・・・お決まりでしょうか?」
耕平 「・・・・・思い出した!! 及川真二だ!」
真二 「はい・・・?」
由里 「・・・(露骨に嫌そうな顔をしている)」
耕平 「ほらっ、由里っ! 予備校でおんなじだったじゃん! 及川っ!・・・覚えてないか?」
由里 「・・・」
耕平 「(由里の様子がおかしい事に気付く)・・・ユーリちゃ~ん・・・??」
由里 「・・・・・(少しの間のあと、勢いつけて)及川君、久しぶりっ!!」
真二 「・・・真芝さん久しぶり」
由里 「・・・・・(及川からは、すぐに目線をそらす)」
真二 (営業スマイルっぽい笑顔で見ている)
耕平 「・・・・・(妙な雰囲気をいぶかしがっているが、すぐに気を取り直して)及川、お前いま、何やってん?」
真二 「・・・だから、注文待ってるんですけど」
耕平 「・・・。」
由里 「・・・」
耕平 「・・・あぁ~っ、はいはい、注文ね。・・・おい、由里、決まったか?」
由里 「とっくに決まってるよ。(真二に)○○○○ね(お好きなものをお好きなだけ自由にどーぞ)。・・・耕平は?」
耕平 「・・・やばい、決めてねー。」
由里 「ちょっとーぉ、・・・早くしなさいよ」
耕平 「・・・えーと・・・ちょっと待って・・・(すごくあせっている)・・・久々のまともな外食だから・・・・・うーんと・・・でも金ないかぁ・・・」
真二 「・・・それでは、決まったらお呼び下さい。・・・(由里に)そちらは○○○○でよろしいですね?」
由里 (一応うなずく)
耕平 「・・・(まだ一生懸命えらんでいる)」
真二 「では・・・(引っ込もうとする)」
耕平 「・・・ちょっと待てーっ! 必死で選んでる目の前で帰るなーっ!」
真二 「はい?(足を止める)」
耕平 「・・・え~っとぉーっ・・・、△△△△(こっちも由里と同様、但したくさん頼むこと)っ!」
由里 (驚く)
真二 「・・・かしこまりました。△△△△ですね」
耕平 「そう・・・よろしくっ! ・・・それから及川、ちょっと(と、呼び止める)・・・ちょいちょいちょいちょい(手まねき)・・・、お前、このあと時間あいてる?」
真二 「え?・・・まぁ・・・」
耕平 「よしっ。じゃあ、ちょっとつきあって?」
由里 「エッ?・・・(鋭く耕平の方を見て、その拍子に、机の下に持っていた本を床に落としてしまう)」
真二 「え?・・・まぁ・・・(と言いつつ、目線は床に落ちた本へ)」
由里 (あわてて本をひろっている)
耕平 「よしっ。じゃあ、そういうことでよろしくー」
真二 「・・・(由里の手にある本を指して)あの・・・それは?・・・」
由里 「えっ? ・・・ただの本ですよ・・・何の変哲もないー・・・(そのわりには、かなり動揺している)」
真二 「そうですか・・・・・では、失礼します・・・」

      真二、退場。見送る耕平。

久方ぶりです。

2006年09月23日 16時01分46秒 | ニュース・報告
 旅行から帰ってきてから投稿してませんでしたね。

 その間に僕の生活は激変しました。

 職業訓練校というものに通い始めたのです。

 朝は早くから職業訓練校に出かけ、夕方に終わり、夜はパソコン教室に通う。
 夜は明日のために早く寝る。

 そんな毎日です。

 よってパソコンの前に向かう時間がほとんどなくなってしまいました。

 へちま亭文章塾塾生の皆さん、そういうわけでコメントが全くつけられていません。
 ご免なさい。

 何とか自分のところにきたコメントには返事を書こうと思っています。

 訓練期間は4ヶ月続くため、その間は文章塾もお休みすることになるかもしれません。

 寂しいですが仕方ありません。

 そういう訳でよろしくお願いします。

 鉛筆カミカミを忘れないでね~~~っ!!!

明日から…

2006年09月14日 00時22分52秒 | 日々つれづれ
 3泊4日で旅行に行ってきます!

 なのでブログへの投稿はその間お休みです。

 明後日から始まる、へちま亭文章塾へのコメントも入れられません。

 残念っ!


 いい旅になりますように。

 では。

ヒストリー・ダイアリー #3

2006年09月13日 00時12分36秒 | 戯曲『ヒストリー・ダイアリー』
 SCINE.3 "HISTORY DIARY"


    耕平、由里、及川真二の三人が、それぞれに、入場してくる。
    真二は、例の本を持っている。
    四人は移動し、その間にまもりは、真二から本を受け取る。

    ・・・四人はいま、舞台を囲むように立っている。
    結果、舞台の中央には、何もない不自然な空間が出来上がる。
    そこには、膨大な量の "event" が、時間と共に積み重なっているのである。
    そして、そこから、この芝居は始まる。

    まもりを除いた三人が動き始める。
    (まもりは舞台奥・一番端のところに立ったままで動かない)
    伸びをしたり、歩きながら本を読んだり、それぞれ勝手な行動をとっている。
    しかし、その動きの「リズム」は、皆、等しい。
    そしてまた、彼らの移動する範囲は、舞台の中央部を決して侵さない。

    その中で、由里は一冊の本に目を通していた。
    そして、ある一節に目をとめる。
    舞台奥に立っていたまもりが実際に本を開き、その内容を伝える。

まもり「1963年、11月22日、アメリカ合衆国大統領、ジョン・F・ケネディーが暗殺される」
由里 「・・・私の生まれる14年前の出来事だ。画面には、飛び散った夫の頭部をかき集めようとする夫人の映像が、繰り返し流れている。・・・当時12歳の私は、気分が悪くなってテレビの前を立った」

    台詞を終えると、由里は本を閉じる。
    するとその後ろの方にいた耕平が、本の頁を開く動作をする。

まもり「文永11年10月、元・高麗の軍勢を乗せた大船団が博多湾に上陸。ときの鎌倉幕府・朝廷軍はこれに対抗するが、見慣れない戦法をとる元軍に大苦戦を強いられる」
耕平 「・・しかし、二度に渡る襲来のたびに暴風雨が元軍を襲い、大軍は船と共に海に沈んだ。・・・つまり、もしその暴風雨が一度でも来なければ、日本はいま中国になっているワケだ。・・・日本史ってもしかしたら結構面白いのかも知れない・・・そのときは、ちょこっとだけそう思った」

    耕平は本を閉じ、今度は真二が頁を開ける。

まもり「1939年9月、ヒトラー率いるドイツ軍は、ポーランドへ突如侵入を開始。これを受け、イギリス・フランスはドイツに対する宣戦を布告。ここに第二次世界大戦が勃発する」
真二 「・・・板書された文字をノートに写しながら、中学生の僕はひとり密かに興奮を覚えていた。全世界を相手に喧嘩をふっかけた人間が、現実に存在した。・・・その事実は僕の中のロマンチズムを刺激し、僕を虚無的な現実から、甘美な世界へといざなった」

    真二は本を閉じる。

    まもりを除いた三人は、元のように舞台の周りの方で適当な行動をとりながら歩き回る。

まもり「・・1998年、8月。」

    まもりの台詞と同時に、舞台の全面は「現在」に戻る。
    (=舞台の中央部も演技エリアに戻る)

耕平 「・・・このままじゃ、ほんとに洒落になんねー・・・お前もうあと一ヶ月で、取り返しのつかないことになるんだぞ!」

    耕平、退場。

由里 「・・・あたしね、あなたのそういうとこがキライなの・・・(押し詰めたような声のイメージで)大ッ嫌い・・・!」

    続いて由里、退場。

まもり「・・・1998年、8月。・・・太平洋・南極の二地点に、大質量隕石が落下。それに前後して、異常気象・天変地異が世界各地で発生。・・・半年後・・・地球上の人口は、約三分の一に激減する・・・」
真二 「・・・・・そうだよ、・・これが、最善の選択だったんだ」

    真二とまもり、退場。

ヒストリー・ダイアリー #2-1~2-3

2006年09月11日 00時23分28秒 | 戯曲『ヒストリー・ダイアリー』
 戯曲「ヒストリー・ダイアリー」2回目です。
 それにしても、今改めて読み返すと……こっぱずかしーっ!……ざーとらしいんですよ。ところどころ目に付く。
 これほんとにブログに載せるの?!ねえっ、ねえっ!…って感じです(汗)
 早く終わらせて、新作掲載しましょう(それもあやしいが)(^^;
 ではどうぞぉ……



 SCINE.2-1 空の落とし物(一)


    先の公園の近くにある通り。またベンチがある。
    結城まもりが入場してくる。本を一冊かかえている。
    ベンチの近くまで来ると、辺りをキョロキョロと見回す。
    そうして、周りに誰もいないことを確認すると、
    持っていた本を開いて、ベンチの上にそっと置く。
    それから、両手を本の上にあて、念じるような姿勢をとると、
    ブツブツと、なにか呪文のようなものを唱え始める。

まもり「~~~~~・・・、よしっ、これでこの前を通った人は、コイツの存在に気を引かれるハズ。・・・お願いだから、誰かやさしい人ひろってあげてね。・・・・・(自分のセリフに笑って)なんか、犬っコロでもすてるようなセリフ・・・」

    まもりは再度本に手を当て、また念ずるようなポーズで目を閉じる。
    しばらくして、大きくため息を一つ。同時に目を開ける。

まもり「(引き締まった顔で)よしっ・・」

    まもり、ハケ口まで真っすぐに、退場。




 SCIENE.2-2 空の落とし物(二)


    まもりの退場と同時に、耕平と由里が入場してくる。

耕平「・・そんな落ち込むことじゃないだろ? しょうがないじゃん。今度はもっと金ためて探しにきなよ」
由里「そんなんじゃ遅いのっ! 今じゃなきゃ意味ないんだから。・・・またあいつにバカにされちゃう・・・」
耕平「アイツ? ・・・あぁっ、なるほどね。・・・やっとわかったよ、・・・まーたケンカしたんだ」
由里「ケンカじゃないっ! ・・・なんてゆーか、互いの価値観の衝突っていうのかな・・・」
耕平「どんな大そうな名前つけたって、ケンカはケンカだろ?」
由里「ちがいますっ! あのねー・・・」
耕平「あれっ? なんだこれ?」

    耕平は、まもりの残していった本を手にとる。
    その間、由里は「ぱくぱく」してる。

耕平「・・・こんなとこに、読みかけの本忘れてってら。誰だろ」
由里「・・・そんなもの、そこに置いときなさいよ。そのうち誰か取りにくるわよ」
耕平「そうなんだけどさ、なんか気になるな・・・」

    耕平は、開いてあった頁に目を通す。
    読み進めるに従い、その表情には少しずつ驚きの色が浮かんでくる。

由里「・・・どうしたの?」
耕平「・・・なんだこれ・・・。・・・この本、オレの事が書いてある」
由里「はぁっ? ・・・なによそれ?」
耕平「だってさ・・・」
由里「ちょっと見せて(耕平から本をひったくる)」
耕平「あっ! ふざけんな! 勝手に見るなよっ!」
由里「なに言ってんの、これ、あんたのじゃないでしょ?」
耕平「おいっ!」

    由里もその本に目を通す。耕平と同様にだんだんと驚いた表情になり、
    また、同時にだんだんと顔が赤くなってくる(役者は努力せよ(笑))。

由里「・・・ちょっと耕平、あんた今、これ読んだのッ?」
耕平「は? 読んだよ。悪いか?」
由里「あんた、今から記憶消しなさい。・・・頭出して! 私が死んでも忘れさせてあげる!」
耕平「なんだよ? なに言ってんだ!? お前、頭おかしくなったんじゃねーのッ?」
由里「・・・あ~~~んっ! この本なんなのよ~~っ! 何でこんな事書いてあるの? プライバシーの侵害だあ、訴えてやる~~っ!」
耕平「おまえ、一体どうしたんだよ!」
由里「・・・この本、私がもらっとくわ。こんなとこに置いといて、誰かに読まれたら大変だよ」
耕平「・・・・・?(自分の読んだ本の内容と、由里の言動との矛盾に気付いて首をかしげる)」
由里「ほらっ、耕平、行くよっ! 夕飯食べに行くんでしょ?」
耕平「あっ、お前それ、勝手に持ってっちゃうのか?」
由里「いいのよ、もうそんなこと気にしてらんないっ!」

    二人は退場。



 SCINE.2-3 ツートンカラーの丘


    入れかわりに、まもり入場。

まもり「・・・どうやら、持ってってくれたみたいだね。・・・・・ふぅ、・・・(誰かに話しかける)ねえ、これでいいんでしょ? 新しい持ち主、ちゃんと作ったよ? ・・・あたしのちからも、結構すてたもんじゃないよね。・・・・・さあこれで、あんたもあたしに頼って仕事を楽するのは終わりにしなさい。・・・もうあたしにとりついてる理由はなくなったんだし、早くあの二人のこと追いかけたら?」

    まもりは目をつぶり、見えないものが去っていくのを確かめる。

まもり「・・・行った・・・みたいだね・・・」

    まもりは続いて、客席の方にその視線を向ける。

まもり「・・この世の歴史の全てを記し続ける書物が、この世界のどこかに存在していました。その書物は、ある周期を迎える毎に、この星の誰かの手の上に落とされてきたのだそうです。・・・・・誰かがそれを手にし、そして、彼らは試されることになる・・・・・今行ってしまった彼・・・ケータが、私にそう伝えてくれました・・・」

ヒストリー・ダイアリー #1

2006年09月09日 01時48分24秒 | 戯曲『ヒストリー・ダイアリー』
 はい今晩は、鉛筆ですーぅ。
 予告通り、今回から、今から10年前、僕が20歳のときに書いた戯曲、『ヒストリー・ダイアリー』を再発表します。
 これは、僕が大学2年の夏の学園祭のときに、(スタジオではなく)教室で上演したときの台本です。
 今読み返すと、内容薄いし、無駄が多いしで、最悪です(苦笑)。
 でも少しだけ、光るところもあります。そこを読み取って頂ければと。
 では少しの間、お付き合いください。「ヒストリー・ダイアリー」。



   『ヒストリー・ダイアリー』


  "HISTORY DIARY" 登場人物


    臼井耕平 ~KOHEI USUI~

    真芝由里 ~YURI MASHIBA~

    及川真二 ~SHINJI OIKAWA~

    結城まもり ~MAMORI YUKI~



 SCINE.1 はじまりは、その日の夕方


    時刻は夕方。臼井耕平・真芝由里の二人は、町の公園にたどり着く。
    二人は、一日中歩き回って、疲れている。
    由里は、疲れを見せまいと気丈に振る舞っている。
    一方の耕平は、少しうんざりした様子。
    由里はそこにあったベンチの表面を手で払い、ストンと座る。
    耕平も遅れて、由里とは少し離れたところにあるベンチに、ややかったるそうに座る。

耕平「・・なあ、もうあきらめようよ」
由里「(強く)イヤ」
耕平「・・・。・・・あー腹へった~~ッ! ・・・(由里に)腹へった」
由里「もうちょっとガマンしてよ。次行ったとこで、多分見つかると思うから」
耕平「んなワケねーだろーっ? 今日、朝から賃貸よんで、一日中不動産まわって、それでも見つからなかったんだぜ?」
由里「・・・」
耕平「・・だから最初言ったろ? 月三万じゃ無理だって・・」
由里「無理じゃないもん。絶対どこかにあります」
耕平「無理だって! そんなのあったら、オレが真っ先に引っ越してるよ」
由里「・・・わかんないじゃない。次行ったら、そこにすごい掘り出し物があるかも知れないよ?」
耕平「だからっ・・・(言いかけて口をつぐむ)」
由里「・・・」
耕平「・・仕方ない・・か、・・・じゃあ・・さあ、・・もう一軒だけ、まわってみるか?」
由里「・・・ゥン、・・・」

    耕平は、立ち上がろうと膝に手をかける。

由里「・・・もう一軒でいいよ。・・・それで、今日はあきらめる」
耕平「・・とーぜん(冷たい感じにはならないように)」
由里「・・・」

    二人とも、ベンチをそれぞれに立つ。

耕平「・・でも、あんま期待しない方がいいと思うよ」
由里「・・・なんで?」
耕平「だから・・・掘り出し物なんて、そうそうある訳ないんだからさ」
由里「あぁ、・・だいじょぶだよ、きっと」
耕平「自分の住む部屋だろー? ・・ったく・・・ほんと、毎度、いい性格してると思うよ」
由里「・・・(笑いながら)耕平わるいね、いっつもこんなんばっかりで」
耕平「ほんとな、・・・まあいつかまとめて・・・」

    ここで二人は退場。不動産屋めぐり、最後の一軒に向かう。

~プロローグ~【後編】

2006年09月07日 00時52分19秒 | 小説・短編つれづれ
 一昨日の続き。「プロローグ」の後編です。



   『プロローグ』後編


 林の中だった。まわりにあるのは木ばっかりで、どちらに進んだらここを抜けられるかなんて、全然見当がつかない。けれど、とりあえず逃げおおせたのは確かだった。立ち止まって息を整えるあたしたち二人。
 さあて、どうしたもんかだけど・・・
「休もう」
「そうね」
 異論なし。その場にしゃがみ込むあたし達。
 まわりは静寂としていて、森の動物の声さえ少しも響いてはこない。あまりじっとしていると、耳が痛くなってくるほどだ。
「・・・」
 それにしても、さっきのには驚いた。なんだかよくわからないままここまで引っ張ってこられたけど、あんな行動力のあるところがこいつにあるなんて、全然知らなかった。今まで意識しなかったけど、こいつも男なのだな。えらいえらい。
 見ると、あいつはいびきをかいて寝ていた。おいおい。つくづく無神経だな、こいつは。不安ということを知らんのか。
 キンと澄んだ空気の中に、寝息というには少々激しいあいつの発する音声だけがそこにある。もしこれがなかったら、あたしはこの場所に一人なのだ。
 急に体が小さくなるような感触を覚える。
 そういえばここはどこなのだ? 周りには木の影しか見えない。見上げた空は灰色に曇った、この場所はどこなのだろう。
 頭の後ろを引っ張られるような感覚がした。振り返ってみる。他の方向を向いて見えるのと同じ、果てのない木々の景色。
 また後ろを引っ張られる感覚。元の姿勢に戻る。見える景色に変化はない。
 ゆっくりと立ち上がってみる。その場所で首を巡らし、少しずつ身体の向きを巡らしながら、見える景色を凝視する。
 瞬間、風景の端が揺らいだ気がした。目をこする。目を凝らす。うーん、目の乾燥が気になる。涙よ出ろっ。ごしごし。
 林の向こうの景色があいまいになる。急いで周囲を見渡す。おかしい!何か異変が起きている!
「ちょっと哲也! 起きなさいって!」
「・・・!」
 でも哲也は起きない。こんな時にぃ!
 どんどん景色は移り変わり、空間は揺らいでいる。ここは、・・・いったいどこ?
 あたしは哲也の傍に立った。
 嘘でしょ~ぅ? 哲也はこの状況でまだ寝ている。起きる気配も・・・
「あ~~ぁ」
 起きたっ!! あたしは足で何度も小突く。
「おいっ、おいっ、おいっ!」
 哲也は構わずにまだのんびりと伸びなんぞをしている。
「・・・いってえな、何だよ?」
 ようやくこっちを向く。そして、まわりの景色が落ち着いた。
「何だよじゃないわよ! あんたよくこんな時に寝てられるわね! 早く周りを見ろっ!!」
「なに? 今何時だよ?」
「時間なんてあるかっ! それ、よ・・・」
 あたしは落ち着いて周りを見ていた。そこは、あたしの目によく馴染んだ風景。あたしが一生かかっても読みきれないような沢山の本、そのまわりのこげ茶色の本棚、少し埃を被った天井・・・
「サンキュ」
「へ?・・・」
「いい時間♪」
 あいつはいつの間にか腰を上げていて、その部屋の出口の方に向かおうとしていた。
 あたしはまだ、起こっている事が理解できずにポカンとしていた。
 なに? いったい・・・?
「行かないの?」
「・・・」
「先行くよ」
「・・・ちょっと、待ってよ」
 あたしは反射的に後を追った。
「また本?」
「え?」
「本読んでたの?」
「・・・」
 なんだかまだよくわからない。結局あたしはどうなったのか。
「また昼休み中寝てたんだ。いい加減、あたし誰かに言いたいんだけどなー・・・」
「やめろよ。誰に迷惑かけてるって訳でもねーだろーが」
「そうかなぁ」
「・・・」
 この人は誰だろう。今は目の前にいるけど、あたしの知ってるあの人なのだろうか。
「ほら」
「ん?」
「忘れもん」
 あたしが受け取ったのは、一冊の本。
「床に落ちてたぞ」
「ちょっとあそこのは持ち出しちゃいけないんだから・・・」
 見覚えがあった。表紙にも、その手触りにも。
「返してくる」
「いいじゃんか別に。変なとこでかたっ苦しいな、お前」
「んん、そういうんじゃなくてさ」
「?」
 あたしは本当に向かおうと思った。さっきの場所に。
「じゃ、行ってくる」
「教室で待ってるからな。先生が来たらうまくやっといてやる」
「ん。ありがと」
 あいつは行ってしまった。
 まったく、薄情な奴だ。
 でも元から、当てにしてないもん。
「ふううううう~~っ」
 あたしは強く息を吐いた。気合いを入れたつもりだけど、こんなんで目の前の問題が解決したら、こんなに楽なことはない。
 あたしは目の前を見た。うん、景色ははっきりしてる。見えるはずのものが見えてるということは、大切だ。
 そして扉を開ける。本の扉と同じくらい大きくてキョウ大な、現実という名前の扉を。
 ・・・ありゃ、シリアスになっちまったよ。
 あたしはそういって、頭から水の中へと飛び落ちる。
 そして、水飛沫があがった。

                          とりあえず、了


   * * *


 次回(明後日)からは以前予告した通り、10年前に書き、大学の学園祭で上演した芝居の脚本を発表します。何回で終わるかな~?わかんない。

 では。

~プロローグ~【前編】

2006年09月05日 01時53分43秒 | 小説・短編つれづれ
 ふううう~~~っ、へちま亭文章塾の投稿作品の推敲も一段落し、これから知人にお披露目です。どんな意見が聞かれるか…わくわく。
 さて、今日からは、今から約7年前に書いた短編小説を公開いたします。妙な、アニメ的な雰囲気が、気に入っていなくもない、この作品。
 今、改めて読んでみて、ああ、文章って何やってもいいんだな、と考えさせられました。
 では、題名「~プロローグ~」です。



    『~プロローグ~』


 ふうとため息をつくことで、目の前の問題が解決すればこんなに楽なことはないのだが、そんな楽な話はない。
 それでもふうとため息をつかねばならないのがこの世の常で、私は深深とため息をついてしまう。
「ふううううう~~っ」
「おいっ」
 がんっ! ごろんごろん・・・ごつっ!! しーん・・・
 今のはこうべを垂れて私の態勢が前に傾いていたところに急に後ろから押すもんだから、態勢を崩して頭から地面に突っ込み、そのまま前転を三回して前方の木の幹に突っ込んでやっと止まった様子を、擬態語と擬声語で表現したものである。
「そうなったらどうするのよっ!?」
「はっ?」
 あたしは高校一年の女の子である。そして今あたしを後ろから突き飛ばしたのは、私のクラスメートの男子である。とりあえずそれだけわかれば十分でしょ?
「・・・で、どうするんだよ?」
「・・・あぁ・・・」
「ああじゃなくて! この状況をお前は何とかしたほうがいいんじゃないか!?」
「そうなのよねぇ」
 あたしとこいつの周りには、裸の体に、腰ミノをつけ、手には槍と盾みたいのを持った、アフリカに住んでるどこかの部族の原住民みたいのが十人くらいで、輪になって踊っていた。
 嘘じゃないし、夢でもない。
 だからあたしは困っている。
 その原因が、今あたしたちの足元にある本にあるみたいなのだが、そんな原因がわかったところで、目の前の問題が解決しなきゃあ、全然意味がない。
 その目の前の問題が、あたしたちを見つめている。そして目線をあたし達から逸らさないままで、グルグルと踊りながら回っている。
 そっちの方にあんまり目をやっていると、頭がくらくらしてくる。
「・・・俺、眠くなってきた」
「ばかっ! こんなときにどうしてあんたは・・・」
「きっとこいつらの踊りには催眠効果があるのだ・・・」
「そういう問題じゃぁないっ!!」
 あたしはゲシ!と頭をぶっ叩く。
 それにしても・・・
 ここは、学校の図書館の地下にある、書庫の中のはずである。
 しかし、いつのまにか、まわりの景色は、植物の生い茂った・・・ジャングル、とでもいうような様子に変わっている。
 この本のページを開いた時には、まだまわりは書庫だった・・・
 とりあえずこの場を逃れたいのだが、この原住民が邪魔をして、ここから抜け出すことが出来ない。
「あんた、こいつらと戦える?」
「冗談ゆうなよ」
「・・・聞いてみただけ。」
 ここが本の中の世界だったら、そろそろ誰かが助けに来るとか、こいつらがあたしたちを捕まえるとか、もちろんそれはいやだけど、何か新しい展開があっていいはずなのに、そんな兆しもない。
「・・・どうしようか」
「どうしようもないねぇ」
 ・・・ったくこいつは・・・こんな状況下で全然態度が変わらないのはすごいと思うけど、ちっとは状況を変える努力をしてみろ!! せめて嘘でもいいからふりだけでもしてみせてくれっ!!
「戦ってみようか」
「そんなの嘘でしょ」
「よくわかった」
「・・・殺す」
 次の瞬間、あいつが原住民に向かって駆け出した。そのままタックルを食らわす。
「へ?」
 固まったまま動けないあたし。
 体当たりした勢いで倒れこんだあいつが、あたしの方に目をやろうとした瞬間・・・
 大地が揺れた。
 恐慌をきたす原住民達。あいつがあたしの手を引いて逃げ出す。
 駆けてきた後ろを見返ると、原住民達はまだひたすらおろおろしている。殊勝にもまだ舞を続けようとしている奴、地面に這いつくばって動けなくなっている奴、なんだかよくわからないが突っ立ったままでふらふらしている奴。けれどなぜか一人として、あたしたちを追いかけようとする奴はいなかった。そりゃあほっとはしたけど、なんだかちょっと物足りないような・・・



  * * *

 こんなんで、続きは明後日。
 では。

10 YEARS AFTER

2006年09月03日 00時35分08秒 | 戯曲・つれづれ
 昨日の記事で「粋と艶」で800字作文一本書くと豪語してしまいましたが、結局今日は1文字も書けませんでした。(- -;;
 一本書いてしまったせいかテンションがあがらず、全くアイデアも浮かばず、やっぱり必要に迫られないと書けないのかなーと、自分の能力のなさというか、やる気のなさにうんざりしつつあります。

 それはそうと超短編戯曲最後になる第3弾。「10 YEARS AFTER」です。



     『10 YEARS AFTER』


   テレビやラジオでよく流れているような曲が、聞こえている。
   列車のボックス席に、若い女性と、中年の男性が向かいになって座っている。
   女性はイヤホンで音楽を聴きながら、景色を何気なく眺めている。
   中年の男性は大いびきをかいて眠りこけている。
   女性は、そのいびきの音が気になる様子。
   何度か席を移ろうかと、周りを見回す。
   そのたびに中年の目が覚めそうになったり、物売りのカートが通ったりして女性の気をそいでしまう。
   そのカートが通り過ぎたあとで、

女 すいません、コーヒー一杯下さい。

   呼び止められた売り子は、大分行き過ぎたカートを女のいる席の前まで引き戻す。

売り子 何になさいますか?
女 だからコーヒー一杯。

   不機嫌な女の様子を怪訝に感じながらも、売り子は缶コーヒーと紙カップを女に手渡す。

売り子 二百円になります。

   女は売り子に千円札を渡す。
   売り子は女に釣り銭を取り出して払う。
   売り子は元のようにカートを押して去る。
   カートがいなくなると、親父が起きて女の方を見ていた。
   女はそれに気づいていない。

女 ・・・
親父 あんたどこまで行きなさる?
女 えっ?
親父 あなたはどの駅まで行きなさるかって。
女 えっ、あーはーあのー・・・特に決めてないんです。
親父 こりゃ驚いた。特に決めてないんですか。
女 はい・・・決めてないんです。
親父 でもあれでしょう?何となくは、決めてるでしょう?
女 ああ・・・そうですね・・・
親父 ・・・。あぁあすみません!! 突っ込んだ質問をしてしまって!
女 いえっ。
親父 無粋でしたっ!
女 とんでもないです。
親父 本当に失礼を。
女 気にしないで下さい。
親父 はあ、
女 ……
親父 ……
女 あのっ、
親父 はい!?
女 いえ……どちら、から…
親父 はいっ?
女 どちらからいらしたんでしょうか。
親父 わたしですか!?
女 はい。
親父 わたしは、東京から来ました。
女 あぁ・・・東京から・・・
親父 (妙に満足そうに)はい…
女 わたしも東京からです。
親父 そうなんですか?
女 ええ、そうです。
親父 へえ。
女 …でも、あれですね、
親父 はい?
女 この電車東京発ですし…
親父 ええ、そうですねぇ。
女 あたしがここに座ったときから、寝てらしたですよね…
親父 ああ、そうですか?
女 ええ。

   女、笑顔になり、「クスクスと」笑う。
   親父もつられて笑う。
   こちらは豪快に。やや大げさに。

女 あぁ、あの・・・
親父 はい?なんでしょう?
女 わたし、降りる駅決まりました。
親父 あぁ、そうですか、…
女 あたし、次の駅で降ります。
親父 はあ、
女 それで、東京に帰ります…
親父 それは、よかった…
女 …はい、ありがとうございました…
親父 気を付けて。
女 はい。

   女、立ち上がる。

女 それじゃあ…

   親父、笑顔で見送る。
   女、去る。

親父 ……わたしも、行こうかな……

   冒頭に流れていた音楽のヴォリュームがあがる。
   ゆっくりと明かりが落ちていく…

                         了


   * * *

 これちょっとあれなんですよね(笑)。途中でちょっとつじつまが合わないところがあって、今読み返して慌ててるんですが、まあ、それも一興という事で、そのまま載せることにしました。
 途中の雰囲気とか、気に入っているところもあるのですが、さすがに7年前は若い。至らない点が多い(今でも全く至らないんですが(笑))。
 けれども次回からは更に前の10年前に書いた戯曲を公開しようってんだから、自分でも良く恥ずかしくないなあ、と思います。でももはや開き直ってるんですよね(笑)。
 それではまた。

お題難産

2006年09月02日 01時24分27秒 | 文章塾
 第11回へちま亭文章塾のお題、発表されましたねえ。
 ↓↓↓
 へちま亭文章塾お題

 とりあえず「うれしい誤算」の方で一本書き上げましたが、どうも納得がいかない。
 今回、初の没ネタが出るかもしれません。(今までは書いたらその作品を推敲後、投稿していた)
 明日は、「粋と艶」で一本書くぞー。でそれを寝かして推敲を繰り返し、いい方を投稿するのだ!
 頑張るぞーっ!

GOING TO THE MOON

2006年09月01日 00時16分36秒 | 戯曲・つれづれ
 昨日の予告どおり、本日は超短編戯曲第2弾。「GOING TO THE MOON」です。



  『GOING TO THE MOON』


   そこには兄、弟一人ずつの兄弟がいる。
   そこはよく晴れた初夏の浜辺。
   兄弟の他には誰もいない。
   兄弟は最初座って話している。

兄 じゃあさ、船を作るんだよ、俺達で。
弟 うん!
兄 あの辺に生えてる木を切って、こうやって組み立てて、
弟 うん、
兄 組み立てるのはロープを使うんだ。それで水が漏れないように、樹液を塗って固める。
弟 すごい!
兄 甲板に、何十日も過ごせるように小屋を作るんだ。
弟 うんうん、
兄 それで、海の向こうを目指す。
弟 ・・・海の向こう?
兄 そうだ! あの向こう側には、きっと俺達の知らない世界がある。きっといろんなものがあるよ! そして、いろんな人達がいる。お前だって行ってみたいって思うだろう?
弟 僕たちの知らない・・・世界があるの?
兄 そうだよ!
弟 知らない人達がたくさんいるの?
兄 そう、会ってみたいだろう?
弟 ・・・僕は・・・行きたくないや。
兄 ・・・
弟 ・・・
兄 ・・・なんでだよ? 楽しいぜ、きっと?
弟 ・・・
語り 弟は黙ったまま。その話は終わり。けれど兄はしばらくして旅に出る。自分の夢を叶えるため。両親の夢を叶えるため。

   残された弟の姿。

語り そして半年後。兄は弟の前に帰ってきた。兄は船の材料のある場所を見つけた。兄は木材の組み方を学んだ。兄は食料の保存の仕方を学んだ。あとは実行に移すだけだった。兄には自信があった。長い夢は実現する。

   弟は戻った兄の正面に立つ。

弟 今までどこに行ってたのさ? 始めるって・・・何を始めるの? 兄さん!・・・よく聞いて。母さんが死んだんだ。それにいろんな事があった。・・・兄さんは今まで何してたの? とにかく中に入ってよ。父さんの具合も良くないんだ。兄さんに手伝って欲しい。

   弟は兄を促して奥へ行く。

語り それは十七年前。一艘のボートがこの島に流れ着いた。そのボートには、二人の男女が乗っていた。彼らはこの島で、いつか自分たちのいた場所へ帰ることを夢に、生き延びねばならなかった。

   兄弟の後ろ姿。

兄 ・・・母さんは?
語り 兄は、その過去を両親から聞いていた。
弟 いつか教えて欲しい、兄さんがなぜ家を出たのか。
語り 少年だった弟は、その事を知らされていなかった。
弟 ・・・・・・
兄 ・・・大変だったな。

   二人の姿が見えなくなる。

                      了