お題:『「首輪」「ラーメン丼」「フライパン」「アンドロイド」「特殊部隊」「片道チケット」「ビーム」……以上すべての言葉を使って学園物の小説を書きなさい。』~第8話~(おっちー作)
ボロボロに疲れて部屋に戻ったハヤ美は、ベッドに転がり込んだ。
よく生きて帰れた。
自分を褒めてやりたかった。
あれは……魔法よね。
自分と故郷の村人以外の人間が魔法を使っているのを、ハヤ美は初めて見た。
ここの生徒は、剣と盾と鎧で武装しながら、同時に魔法を使う。
ただでさえの重装備なのに、更に魔法で攻撃と防御を行うのだ。まさに最強のオフェンスと、鉄壁のディフェンスであった。
そんな「達人」が、この学園には100人以上いる。
ここはアイグラント帝国の兵士を養成する学校である。この帝国の軍事力の底知れなさを、ハヤ美は身を持って感じた。
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
窓ガラスをコン、コンと叩く音で、ハヤ美は目を覚ました。
なんだろう?
何かが窓ガラスを叩いているのだ。この部屋は2階。誰かが訪ねて来た訳でもあるまい。
面倒だったが、ハヤ美は起き上がって窓の方を確認した。真っ暗な窓の外に、黄緑色の小さな発光体が、チラチラと行き来している。
「蛍?」
ホタルが、窓に何度も当たっているのだ。虫は明るい方に寄ってくるものである。
可哀そうに。いつか体を傷付けるかも知れない。
ハヤ美は窓に駆け寄って、ガラス戸を開いた。
黄緑色の光を放つ蛍が、ハヤ美の目の前をフワフワ泳いだ。部屋に入ってくるかと思いきや、スッと地面の方に下りていってしまった。
「なんだ」
ハヤ美は窓を閉め、再びベッドで横になった。
コン、コン、
また音がする。
「何よ?」
ハヤ美が見やると、またあの蛍なのだろう、黄緑の光が窓の外で揺れていた。
(つづく)