言葉というのは強いツールであり、だからこそ慎重に取り扱う
必要がある、命を救う薬にも命を奪う毒にもなることがある、
「暮らしの手帳」の元編集長松浦弥太郎氏は当時著書で、言葉
の難しさについて次のようなエピソードを語っている。
知人がひどく落ち込んでたので事情を尋ねた、すると父親が癌
で危篤だという「もうだめなんです」とつぶやく彼をなんとか
励ましたくて言った言葉が「親の死というのは誰もが通る道じ
ゃないか、だから頑張ってね」しかしこの誰もが通る道という
言葉が彼の心を刺した、父の死をよくあることだとかたずけら
れたと感じて追い打ちをかけるように落ち込んでしまった。
後日再会したときに謝罪して思いやりのなさを悔やんだ、誤解
は解けたものの、なんでもない一言が、どうやっても消せない
傷を心に残してしまうことを痛感したという、実際親しければ
親しいほど思い当たることがあるのではと思う、一度言ってし
まった言葉は取り返しがつかない、だから言葉を発する前に立
ち止まる必要があるのかもしれない。