TABI天使日記

天使になったカナダのアジリティ犬と、ママ・パパの日常

夜闇の矢

2008-11-29 12:38:51 | インポート
昨夜は、夕方から降り出した雪が氷雨となり、道路は凍結した。

夫は夜中まで勤務だったが、この天候では慎重に運転しなければならないから
遅くなるだろう、とは予想していた。まあカナダ育ちなので雪道には慣れて
いる彼だが、他の人が雪道を注意深く運転するとは限らないからだ。冬の事故
というのは、そういう粗忽ものが原因で起こり、周囲に被害をばらまくこと
が大半である。

リビングでうとうとしていたTABIが、吠え出した。
「パパ来たよ!」の吠え方であるが、キュンキュン鳴きに変った。
何かあったんだろうと思い、私は電話のそばへ行ったが、ウンともスンとも
いわない。で、ベッドにもどることにした。

すると、呼び出し音。
案の定夫からで、事故現場を目撃したので警察が来るまで待っていると言う。
現場といっても、うちから歩いて五分の交差点である。

新月の上、新しい交差点で信号機がまだ稼動してないからあたりは真っ暗。
事故車のフロントは滅茶苦茶、廃車間違いなし。エアバッグが周囲にビニール
臭をぶちまいていた。夫は非常灯をつけ、氷点下で震えている運転手を自分の
助手席に乗せてパトカーを待つことにした。男はカリフォルニアから引っ越し
たばかりで、凍結道には慣れていなかった。現場から車で30秒の24時間営業
大手スーパーに出勤する途中だった。「前に車が見えたと思ったら、ぶつかって
いた」と男は言った。

このようにふってわいた災難を、「夜の闇の中で打たれた矢にあたる」と
言うのだと、昔々、年長者から聞いたことがある。

運転手は一見して無事そうだったが、不思議なのは追突された車の姿が見えない
ことだった。あれだけの追突被害が事故車に確認できるということは、前を
走っていた車にも相当のダメージが出たはずである。しかし、男が言うには、
車はちょっと停まったがすぐに加速して走り去ったという。

感謝祭パーティーで飲んで酔って、事故の衝撃を感じなかったのか。
いや、酔いも覚めるような衝撃であったはずだ。考えられるのは、「警察と
かかわりたくない」事情の持ち主である。盗難車とか、ヤバイものを車に
積んでいたとか。身分をあかして大げさにしたくない、家族に知られたくない、
とか。例えば「夫と、妻」みたいな。

ま、夫が無事であったのはなによりである。


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