読書日記

いろいろな本のレビュー

創価学会と平和主義 佐藤優 朝日新書

2015-01-06 09:34:45 | Weblog
 昨年の安部内閣の集団的自衛権の行使容認は公明党の賛成で認めることになったが、著者は、行使しようにもあちこちに「縛り」がかかっていて、ここまで煩雑で使いにくい集団的自衛権は他の国にはないと言う。閣議決定文に書かれた内容は、従来の個別的自衛権や自衛隊が持つ警察権で対応できる事柄を、集団的自衛権としてまとめ直したものだというのを憲法学者の木村草太氏の見解を引用して述べている。安部氏にとっては何が何でも「集団的自衛権行使」を閣議決定したいという気持ちが強かったようだ。祖父岸首相以来の悲願ということか。
 この「縛り」をかけたのが公明党で、もし公明党がブレーキ役として与党にいなければ、憲法に制約されない集団的自衛権の行使を容認することが閣議決定されていたと著者は言う。以下公明党の母体の創価学会の反戦平和の歴史を述べて、日本のプロテスタント教会(因みに著者はカルバン派のキリスト教徒)が反戦を貫けなかったのに対し、学会の初代会長の牧口常三郎、二代会長の戸田城聖は思想弾圧に屈せず、「獄中非転向」を貫いたことを大いに評価し、続く池田大作の平和主義にも賞賛の眼を向けている。まるで創価学会の先験的把握者・アプリオリな理解者とでもいうべき筆致で、おいおいそこまで誉めていいのかいという感じだ。特に学会と懇意にしているわけではないと最初に断っていて、学会の雑誌「潮」の原稿料は普通だと書いているところが面白い。この本は10万部突破と宣伝に書いてあったが、組織買いをしているのでは、と思わせるところもある。でも最近これほど学会に好意的な本はなかったことは確かだ。今後安部政権にどう注文をつけて行くのか、山口代表の動向に要注意だ。
 ところがこの公明党が、大阪で不穏な動きを始めた。あれだけ大阪都構想に反対していたのに、急に維新の会が進める住民投票に賛成だと言うのだ。これは学会から維新の会と対立するなという指令があったかららしい。この辺が公明党に対して世間が疑心暗鬼に陥る原因なのだが、佐藤氏の本で上がった株がまた下がったという印象は否めない。