リマインドと想起の不一致(4)
「おかしな手紙を渡して、ごめん……」昔々の少女たちは控え目であった。完全なる自己肯定も、我先きにという感情もまったくのところない。
ぼくは即答したい反面、それに値する、見合うべき舌を要していなかった。彼女の顔が赤らむのが見えるような気がする。本当のところは、その後もぼくの耳が刻んだ印象的な声しかぼくには届いていない。
「いや、うれしかった」
しかし、彼女の沈黙は疑心暗鬼の確かな証明だった。
「ほんとうに?」
「ほんとうに」ぼくはオウム返しという単純な事実が自分に訪れたことにびっくりしていた。その後、確信というものを宙ぶらりんにしたまま、数分間だけ時が過ぎるのに任せる。最終的に電話をどのように切ったのかすら覚えていない。沈黙をひたすら守る武骨な電話機を見守りながら、自分の意図した意志や結果とは別なところで、よろこびも悲しみも存在することを知った。この時点では前者のよろこびだけだが。
「言ってしまった」とぼくは安堵なのか、ため息なのか分からないものを口から発する。すると、階下から夕飯の仕度ができたことを告げられる。この場の雰囲気とは合わない暴力的な感じで。一体、彼女は何を食べるのだろうかと想像してみる。女性と二人きりでご飯など食べたことも皆無だ。どれほどの量を食べ、何杯おかわりするのかも不明だ。情報というのは価値がある。
彼女は何か作れるのだろうか? ぼくは空想の羽根を伸ばす。反対に現実というのは身近な音で構成されている。
「聞こえないの? ご飯だよ!」という声がまたする。ぼくは階段を降りる。恋はまだ食欲の有無や増減に関与しなかった。いつものように食べ、いつものようにご飯をよそう。
「おかしな手紙を渡して、ごめん……」昔々の少女たちは控え目であった。完全なる自己肯定も、我先きにという感情もまったくのところない。
ぼくは即答したい反面、それに値する、見合うべき舌を要していなかった。彼女の顔が赤らむのが見えるような気がする。本当のところは、その後もぼくの耳が刻んだ印象的な声しかぼくには届いていない。
「いや、うれしかった」
しかし、彼女の沈黙は疑心暗鬼の確かな証明だった。
「ほんとうに?」
「ほんとうに」ぼくはオウム返しという単純な事実が自分に訪れたことにびっくりしていた。その後、確信というものを宙ぶらりんにしたまま、数分間だけ時が過ぎるのに任せる。最終的に電話をどのように切ったのかすら覚えていない。沈黙をひたすら守る武骨な電話機を見守りながら、自分の意図した意志や結果とは別なところで、よろこびも悲しみも存在することを知った。この時点では前者のよろこびだけだが。
「言ってしまった」とぼくは安堵なのか、ため息なのか分からないものを口から発する。すると、階下から夕飯の仕度ができたことを告げられる。この場の雰囲気とは合わない暴力的な感じで。一体、彼女は何を食べるのだろうかと想像してみる。女性と二人きりでご飯など食べたことも皆無だ。どれほどの量を食べ、何杯おかわりするのかも不明だ。情報というのは価値がある。
彼女は何か作れるのだろうか? ぼくは空想の羽根を伸ばす。反対に現実というのは身近な音で構成されている。
「聞こえないの? ご飯だよ!」という声がまたする。ぼくは階段を降りる。恋はまだ食欲の有無や増減に関与しなかった。いつものように食べ、いつものようにご飯をよそう。