遺す言葉

つぶやき日記

遺す言葉(377) 小説 岬または不条理(6) 他 今を生きる

2021-12-26 12:11:51 | つぶやき
          今を生きる(2021.12.15日作)


 今日という一日
 今という時は
 全宇宙を包含する
 悔いなく 今日という日の 今を
 生きる 生き切る 明日という日は
 今日という日の今には 見えない
 見えない明日に悩むより
 今日という日の 今 この時を 生きる
 生き切る 明日は明日 明日の
 命を生きる 明日の今日 明日の今を 
 生きる 生き切る 精一杯 生きる
 人に出来る事は それだけ
 吉凶 織り成す人の世 人生
 見えない明日 未来に悩むより
 今日という日の 今を
 今日という日の 命を
 生きる 精一杯生きる 生き切る その
 精神(こころ)の強さを持ちたい
  
   日々是好日 (にちにち これ こうにち) 









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          岬
            または
                不条理(7)



「遅れてしまって申し訳御座いません」
 男は鄭重に言った。
「いや、わたしの方が予定より早めに来ていたんです」
 三津田は穏やかに言った。
 男は格別に周囲を警戒するような素振りも見せなかった。
 三津田に向き合って座った。
「では早速、用件を伺いましょう」
 三津田は言った。余計な無駄話しなど不要だった。
「そうですか。とにかく、わたしはまず、あなたがこういう機会をつくって下さった事にお礼を申し上げます。有難う御座いました」
 男はそう言ってから、一息入れるように上着の内ポケットを探って煙草を取り出した。無言のままその中から一本を抜き取り、口にくわえた。
「如何ですか ?」
 三津田に向かってピースの箱を差し出した。
「いゃ、結構です」
 三津田は無愛想に言った。
 男は黙ったままその箱をポケットにしまうと、ライターを取り出して火を付け、口元に運んだ。
 一息、吸い込んでから煙りを吐き出し、徐に切り出した。
「わたし共があなたにお願いしたいのは、ちょっとしたある物をある人に届けて戴きたい、っていう事なんです。無論、あなたに御承知して戴けました時には、わたし共としましては、それ相当の報酬はお支払いしたいと思っています」
「届ける ? 何をです ?」
 三津田は軽い拍子抜けの感を抱いて言った。それから言葉を続けて、 
「いったい、何を届けるのか分からないが、届けるだけなら郵便局でも運送会社でも、いくらでも方法があるじゃないですか。それなのに何故、わたしがわざわざそんな事をしなければならないんです ? わたしは何度も断っているんですよ」
 と軽い不満を滲ませた口調で言った。
「それが、わたし共の方にもいろいろ込み入った事情があるものですから、お頼みしたいと思った訳なんです」
「まさか、麻薬とか、そんな不法な物の取り扱いじゃないでしょうね。もし、そんなものだったら、わたしは、はっきりとお断りしますよ。悪事の手助けをするような事は出来ませんから」
「いえいえ、悪事だなんて。それに麻薬でもありません。ただ、わたし共としましては、企業秘密として、誰にも悟られたくないんです。証拠となるようなものを遺したくないんですよ」
 男は三津田の言葉を強く否定して言った。
「いいですか。もう一度聞きますが、いったい何故、わたしがそんな事などしなければならないんです。その訳を聞かせて下さい」
「いえ、どうしても、あなたでなければならないっていう事ではないんですが、あなたがとても優秀な方だとわたし共は理解していて、お願いしている訳なんです。もし、どうしても駄目だとおっしゃるなら、断って下さっても結構です」
 男の口調はあくまでも静かで丁重だった。
「わたしは断ります。以前にも何度もそう言ってるはずです。でも、あなたはわたしが断ると嫌がらせをして来る。そうじゃないですか」
 三津田は相手を問い詰めるように強い口調で言った。
「わたし共が嫌がらせをする ?」
 男は心外だと言うように言い返した。
「そうじゃないですか。これまでもあなたは間違い電話を装ったりして、何度もわたしの所に無言電話を掛けて来たり、一度は車で突っ掛けようとしたりして来たじゃないですか」
「ちょっと、変な事を言わないで下さい。それに確かな証拠があるんですか。あるんなら、はっきりと見せて下さい。間違い電話なんて、何処にでもある事ですよ。それに車で突っ掛けようとした ? それがわたしだったんですか。思い過ごしではないんですか ?」
 男は始めて気色ばんだ様子で強く言い返して来た。
 三津田はそこまで言われるとそれ以上の確かな証拠を示す事は出来なかった。あの車の件でも、後部座席に居たのがこの男だという確かな証拠はなかった。ただ、似たような年配の人物が居たというだけの認識にしか過ぎなかった。
「そうですか。分かりました。これで、あなたの気持ちもはっきりしましたし、わたく共としましても、そこまで言われて、あなたにお頼みする事は御座いません。これで今までの事は総て、無かった、という事に致しましょう。もう、わたしがあなたにお目にかかる事はないでしょう」
 男は静かに言った。
 その口調は静かだったが、三津田はだが、その時、男の表情の中にこれまでにない冷酷、強烈な意志の決断を見たような気がして、瞬間、心の凍るような思いに捉われた。三津田は咄嗟に自身の身の危険を意識した。その意識と共に思わず言っていた。
「いいですよ。遣りますよ。せっかく、こうして話しを聞いているんですから、その仕事は引き受けますよ。でも、その仕事を済ましてしまえば、あなた方がわたしに係わって来る事はもう、一切、無いんですね。それは約束してくれますね ? どうです」
 三津田も強気に出てきっぱりとした口調で言った。
「無論、御座いません。そんな事はありません。わたし共としては、この一度きりの仕事をなんとしてでも秘密裡に済ませたいと思ってといるだけなんですから、あなたに迷惑をお掛けする事は以後、一切、御座いません。わたし共としましても、誰にも知られたくない、その思いばかりですから、仕事が済んでしまえば忘れるだけの事です」
 男は冷酷な表情を崩さぬままに静かに言った。
「分かりました。それでわたしは何をすればいいのか、言って下さい。わたしの方にも仕事の都合がありますから、その調整しなければならないので」
「分かりました。後ほど、はっきりとした事は御連絡致します。その時に日時などを打ち合わせしましょう。それで、こちらからお電話を差し上げたい時には何処へ掛ければ宜しいでしょうか」
 男は言った。
「会社のわたしのデスクへして下さい。家族は巻き込みたくはないりので」

 三津田に取っても、その決断は重いものだった。無論、気の進まない仕事だった。だが、三津田は自分がその仕事を断った後のあれこれを考えると、やはり、この決断は仕方がなかった、と自分に言い聞かせた。あの男の「もう、わたしがあなたにお目にかかる事はないでしょう」と言った時の、あの男の眼の中に見た暗い影が、どうしても意識の中から払拭出来なかった。自身に降り掛かる身の危険が明確に意識された。恐らく、あの男が直接的に係わって来る事はないだろうが、多分、組織の内側にいるチンピラか部下などが、その仕事をして来るだろう。そして、その実行犯は僅か何年かの後には刑を解かれて出所して来るに違いない。そんな光景が眼に浮かんだ。
 それにしても、いったい、何故、俺が ?
 三津田には依然として、その思いを拭い去る事が出来なかった。
 こんな訳の分からない事柄になぜ、巻き込まれなければならないのか、如何にも理不尽な事だという気がしてならなかった。
 この日、張り込んでいた警官は、この時の状況の一切を観察していた。密かに会話の録音もしていた。


    (なお 次回は休載します スタッフの皆様 一年間
     有難う御座いました どうぞ 良いお年をお迎え下さいませ)





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          桂蓮様


          コメント有難う御座います
          今回の新作記事 コメント なんと生き生きとした
          息吹が感じられる事か 充実した人生を生きている
          そんな雰囲気が両方の文面上から明らかに
          立ち上がって来ます いいですね 拝見している方も
          なんとなく 生き生きとした気分に包まれます
           バレー 練習風景が眼に浮かびます 以前にも
          書いたと思いますが わたくしはバレーが好きで
          放送のある限り見ます それだけに練習風景も
          想像出来ます それにしても 人生には何か
          打ち込む事の出来るものがあるという事は
          必要ですし それがあると言う事は好い事ですね
          それのあるか無いかでは生きる価値も大きく
          違って来ますものね 人生の観劇者 傍観者ではなく
          主人公 何時までもそうありたいものです
           五十代後半 まだまだ老け込むには早い年代です
          人生百年時代 ようやく半分を過ぎたばかりです
          これからも今回のような生き生きとした御文章
          お待ちしています
           来年 ぜひ十分間回転ですか 実現して下さい
           三分に三年かかっても コツを身に付けてしまえば
          後はその身に付いたものが補ってくれますよ 禅で言う
          身体が「悟った」という事ですね
           それにしても人生を楽しんでいる御様子 どうぞ
          来年も良いお年でありますよう

           なお 次回 わたくしは休載しますので
          改めて新年からまた 宜しくお願い致します
           今年はいろいろお励まし戴き 
          有難う御座いました 新しい年もまた 
          御主人様共々の御活躍を
          お祈りしております



          takeziisan様


          今年一年 有難う御座いました
          このブログにお眼をお通し下さった事に
          感謝 御礼申し上げます
           なお 次回は休みますので宜しくお願い致します
          野菜の収穫 楽しげな雰囲気が伝わって来ます
          見事な野菜 自分の手で収穫出来る喜び 羨ましい
          限りです それにしても大きな白菜の安さ なんだか
          農家さんに気の毒な気がします 消費者としては
          嬉しいのですが
           当地では野鳥の姿がめっきり少なくなりました
          何年か前 自宅の前の電線に それこそ ヒッチコック
          映画の「鳥」を思わせるように大群のヒヨドリが夕刻に
          なるととまっていたりして 驚いたものですが 最近は   
          見えません スズメも ツバメも 見なくなりました
           メープル街道 楽しませて戴きました それにしても
          あのゆったりとした雰囲気 羨ましい限りです 
          移住したい国 ナンバーワン 分かる気がします
           雪景色 味噌造り 田舎の風景そのまま 
          懐かしくもあり 郷愁に胸の熱くなるものがあります
           ウスゲショウ 始めて見る美しさです 同類の緑は
          自宅にもありますが
           折句 笑いと皮肉 簡単明瞭 何時 拝見しても
          楽しめます これからも是非 お続け下さい
          楽しみに お待ちしています
           一年間 有難う御座いました どうぞ 奥様共々
          良いお年をお迎え下さいませ
           有難う御座いました
          新しい年もまた 宜しくお願い申し上げます


         
      
  
 


 




3 コメント

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Unknown (桂蓮アップルバウム)
2021-12-26 15:37:08
たまささまに認められると
はあーとつまり詰まった緊張がほぐれる気がします。

たまさ様の意見があって、
私はどうにか自分の記事から開放されるような感じになります。

自分が書いたもの、私は2度読みしません。
読むと気分が悪くなる?からです。
ですが、たまさ様の意見を読むと
読みたくない気持ちが消えるので
不思議ですね。


今回のストリー展開は妙に緊迫感があって、あの男の人の不気味さが何となく伝わりますね。
どんなことを頼むやら、一体全体何を企んでいるのですかね。
次回の展開、お待ちしています。



ところで、一年間お世話になりました。
今思うと、ここでコメントするようになったのは
たまささまのブログ方針が好きだったからかもしれませんね。
周りが何を言おうと、ご自身が思うことを淡々と、黙々と実行する、その方針を変えないことが好きなのかもしれません。
コメントに媚びることも無ければ、
人との関係にも媚びないし、
それが私と似ているかなと、
でも昔は、私自分のブログ宣伝のために
寄せてくるコメントに結構媚びた時期がありました。
言いたくないことも礼だったから
無理やり肯定したり、
理解したくないのに、
理解を示したり、

でももう、それらに疲れてきて
義務的にコメント返ししなくなりました。
心の重荷が降りて楽になりました。

私の本気、本音は
実は破壊的で、人との関係を切ったりします。
サガですね。

それ、分かっていて、でも気持ちに嘘は付きたくないし、
あれこれ考えてしまうから
なら、言わない、ことにしましたね。

ここでは、本音も本気も忘れて
ただ書きたいことを
人を害させない程度で納めて書いているかもしれませんね。

眼に見えない人との関わり、
ここでは感じることができるのかな。

行く年、来る年
たまささまには心残りなく
送って、また迎えるだろうと思えますね。
私は心残りありますね。
もっと練習すればよかったと、
あのとき休まなくてレッスンに行ってればよかったと、
まあー過ぎ去ってしまった時間ですけどね。

来年5日までレッスンは休みですが、
その間に先生から借りたバレエ本を全部読もうと思っています。

来年も憩いとして
またお世話になります。
ことしはありがとうございました。
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こんばんは、 (takezii)
2021-12-26 19:31:00
毎度、ブログ記事内で、私めに対してメッセージをいただき、恐縮しております。気まぐれごちゃまぜ拙劣ブログにも拘らず、しっかり目を通していただいて、的確なコメントをして下さるたまさ様、多分、そんな方は、多くのフォロワーの中にもいないような気がしています。有難いことです。私の場合、「ブログ」=「記憶力減退老脳に代わる自分のための記憶補助ツール」、「自分の引き出し」と決め込んでおり、本来、ブログは、コメント等を通じて、不特定多数と交流する手段なんでしょうが、コメントのやり取りを主たる目的にしておらず、記事を溜め込むことに専念している節があるのです。いつまで続けることが出来るか分かりませんが、これからも、「自分のあしあと」を、書き込んでいこうと思っています。1年間、有難うございました。来年もよろしくお願い致します。
返信する
Unknown (桂蓮アップルバウム)
2022-01-01 17:14:11
新年明けましたね。
今年もよろしくお願いします。

こっちもやっと新年になりました。
NYタイムズスクエアでのカウントダウンを観ましたけど、オミクロン流行りなのに、
マスクもやってない人たちがうずうずしてましたね。

うちは年末買い物も控えて、どこにも行かないことにしました。


今年もいい物語連載、楽しみにしています。
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