数日前の電車の中のことだ。
僕はバッグを片手に抱え本を読んでいると、僕の斜め前の女性と目が合った。ちょっと視線が冷たく感じる。
何かがぶつかった様子もないのに、何でだろう? と訝しく思う。
電車が駅に到着すると乗客が我先にと飛び出してくる。
数メートル進んだ。僕の前を歩いていた女性のバッグから、小さな縫いぐるみがポトンと落ちた。拾って、「はい」と女性の前にかざした。
女性はビックリした表情を見せ、すいません、という顔で頭を下げた。
先ほどの女性だった。
当たり前の小さな親切。
落し物を拾ってくれた女の子が、すぐ僕のところに届けてくれた、先だってのことが甦った。
たぶん、しばらくは忘れないだろう。
だがいずれは忘れ、そしてまたいつか思い出す日もくるのかもしれない。
最近いいことをされた。そして、先日いいことを返したという日記だった。