3月初旬の日記だったと思う。
僕は、小銭入れというのか、カード入れというのか、ま、そんな類のものを紛失した。
結局それが戻ったわけだが、今度はうちの息子がサイフを失くしたと連絡が入った。
話によると長男が、東京駅のトイレにサイフを落とし、すぐに気付いてそこに戻ったがすでになかったという。
銀行、クレジット会社への手配は済んだか? と訊くと、電話して止めたという。
「ただ、今月銀行からの引き落としがあるので、残高が足りないとまずいことになるので少し振り込んで欲しい」
「わかった。いくら?」
「40億円」
「しょうがない、ま、それくらいだったら」
相当焦ったようだ。
わかる。一旦、頭が真っ白になる。
万一、カードで預金を下ろされたりカードを使われたりしたら、もっと大変なことになる。それが頭に浮かぶとパニックだ。
ただ、振込みのため銀行のATMに行くと、眼前に「振り込め詐欺」の文字が映った。
一瞬これ、ひょっとして、高度で、まだ誰にも知られていない巧妙なトリック? と頭をよぎる。
翌日の夕方、駅から、発見され戻ったという。ひとまずひと騒がせだった。
……うむ、親子だね~。