若いときからフランスパンが大好きだった。あの香ばしい独特の香り。そして今ではあまり聞かなくなったサイカと呼ばれるまん丸の丘の形をしたパン。
あれは表面に白い粉が降りかかっていて表面が硬く、中はフカフカでとても柔らかい。
大好物で、ぼく一人で全部平らげることもあった。
若いときだが、あるとき、そのサイカというフランスパンを食べていた。
うん？ ガリっ……なに？ 舌を口の中でぐるぐる回す。
硬い異物が、舌に触れる。それを口の出口まで誘導する。
げっ!!! ハハハハハハハハ歯だ。 ヤバイ!!
元々、小さな穴が開いてた前歯、その歯が欠けた。
このことを思い出したのは、昨日、日本蕎麦屋さんでだった。
そば定食（たぬきそばにシャケと梅干のおにぎりが二個とおしんこ二切れ）を注文。
おにぎりの上に梅肉が僅かに出ていて旨そう。
ガブリ。
………ガちっ、、、あ、あ？――――、、瞬間、全ての視界と音が消えた
幸いにも、今回は事なきを得る。
普通、おにぎりってがぶりって食べるでしょう？恐る恐るかじるなんてしない。
普通は、そんなことはおこらない。
かなり老人化が進んでいたのだろう。
悲しい現実を前にして、キミも悩んだことだろう。
可哀そうな人だ・・・。
歯といえば、つい数年前のことだが、ボクが２０代のころ、キミの健康保険証を使って、歯の治療をしたことがあるんだ。
「サトーさん？？」とか呼ばれてまいったよ。
ははははは……
僕のフランスパン騒動、知ってたかね？
＞ 歯といえば、つい数年前のことだが、ボクが２０代のころ、キミの健康保険証を使って、歯の治療をしたことがあるんだ。
「サトーさん？？」とか呼ばれてまいったよ
え？ そんなことがあったのかね？
それは聞き捨てならぬ告白。
それは、是非ともこれから検証してみたいと思う。
君は白黒で生きてきた人間、僕は現代人、この接点があったのかどうか、うちの親父に訊いてみたら、僕はまだ生まれてなかったと言っていた。どうも、君はうちの親父よりも年上だそうだ。