田中雄二の「映画の王様」

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『最後の航海』のドロシー・マローン

2018-01-24 06:05:27 | 映画いろいろ

 ブロンドの髪、ちょっと垂れ目が印象的な女優のドロシー・マローンが亡くなった。

 かわいい顔をしてジョエル・マックリーを裏切る女を演じた『死の谷』(49)『ワーロック』(59)など、西部劇に多数出演する一方、ダグラス・サーク監督のメロドラマ『風と共に散る』(56)でアカデミー助演賞を受賞した。テレビのシリーズドラマ「ペイトンプレイス物語」でのミア・ファローの母親役も印象に残る。



 とはいえ、俺にとって最も忘れ難い彼女の出演映画は、廃船となる豪華客船を使って、日本でロケされた海洋パニック映画『最後の航海』(60)なのである。製作はMGM、監督・脚本はアンドリュー・L・ストーン。

何回目かに見た際のメモが残っていた。

 今回、10数年ぶりにテレビで放映されたので見直してみたら、やっぱりウッディ・ストロードがいいんだな。

 主人公ロバート・スタックの妻ドロシー・マローンは、船の爆発の衝撃で崩れてきた鉄材に足を挟まれて身動きができなくなる。彼女を助けるには、鉄材を焼き切るためのアセチレンボンベが必要なのだが、それがなかなか見付からない。船は沈み始め、彼女が水没してしまう時も刻一刻と迫ってくる。

 そんな中、自らの命の危険も顧みず、最後まで彼らを見捨てずに助ける水夫役を演じていたのがストロードだった。

 今回は、二か国語放送だったので、原語で聴いていたら、彼はスタックを「ミスター」と、マローンを「マム」と敬称で呼んでいた。そのことからも、黒人たちがまだ完全なる人権を得ていなかった当時の風潮が垣間見えるのだが、だからこそ、スタックが、妻と娘を助けるために奮闘してくれた彼を、人種を超えて「この人だけは自分の手で助けたい=This is one guy I'm gonna help aboard personally!」 と言いながら、救命ボートに引っ張り上げるラストシーンに感動するのだ。

 この映画のマローンは、身動きができないまま、ずっと水につかっているという大変な役だったが、「何としてでも助けたい」と思わせるような、とても感じのいい奥さん像を見事に表現していた。水につかりそうになる彼女の顔を、夫役のスタックが必死に支える場面が、妙に切なかった覚えがある。


https://www.youtube.com/watch?v=VcBrBYS6OL8

コメント
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