田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『15時17分、パリ行き』

2018-01-29 17:43:13 | 新作映画を見てみた
 クリント・イーストウッドが、2015年にアムステルダム発パリ行の列車内で起こった無差別テロ事件を映画化。同事件で現場に居合わせ、武装した犯人に立ち向かった3人のアメリカ人の若者たちの実話を描く。



 『ジャージー・ボーイズ』(14)『アメリカン・スナイパー』(14)『ハドソン川の奇跡』(16)と、80を過ぎてからのイーストウッドの仕事ぶりは、本当に驚くべきものがあるのだが、今回も、俳優ではなく事件の当事者が自分自身を演じ、実際に事件が起きた場所で撮影するという、新たな試みに挑んでいるわけで…。その旺盛な創作欲に脱帽させられる。

 実話を、映画的に、時系列を操作して描くという手法は、前作『ハドソン川~』と同じだが、94分という短い時間の中で、事件そのものを描くのはラスト近くの20分ほどで、それよりも問題児扱いされた3人の子供時代や、事件直前のヨーロッパ旅行のスケッチを丹念に描いたところには、正直なところ、ちょっとはぐらかされたような気がした。

 イーストウッドとしては、あくまで普通の人々の物語として描く、あるいは、問題児がヒーローになる皮肉を描きたかったのかもしれないが、『ハドソン川~』と比べると、手放しでは褒めちぎれないところがあった。

 詳細は後ほど。
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沢島忠監督が亡くなった

2018-01-29 09:49:05 | 映画いろいろ
沢島忠監督が亡くなった。
もちろんリアルタイムではなく、テレビで見たものばかりだが、
コミカルでスピード感にあふれた“沢島時代劇”は大好きだった。



以前、橋本治の『完本チャンバラ時代劇講座』を読んだ時に、
沢島時代劇の魅力を見事にいい当てた、週刊誌の記事の引用があり、
孫引きさせてもらったが、ここに再び転載し、哀悼の意を表します。

(沢島忠が)昭和32年に一本立ちの監督になってからは、
恐ろしいもので、撮る映画のどれも、登場人物が、ひたすら走りに走っているので、
映画評論家も観客もビックリしてしまった。

一心太助が走り、
若さま侍が走り、
お染が久松の手をひいて野崎村のドテ道をこけつまろびつ突っ走り、
ふり袖小僧がふり袖をひるがえして町の中をかけぬけ、
弥次さんと喜多さんが命からがら全速力で逃げ、
どこへ行ったかむっつり右門の旦那を、泡を吹いておしゃべり伝六が追っかけ、

助さん格さんは若いから走ってもフシギはないとして、
水戸黄門までがかけだしていたし、
爺さんがかけるのは黄門だけじゃなく、大久保彦左衛門までかけ足で、
江戸城のなかを、徳川家光まで全速力でつっ走るというのだから、
沢島時代劇は、下(しも)は横丁の犬から、上(かみ)は公方(くぼう)さままで、
ヒタスラムヤミに狂気のごとく走り通しているというので人気がわいた。




フィルムセンターで2015年に開催された「日本映画史横断6 東映時代劇の世界Part2」で、
初めてスクリーンで沢島時代劇を見ることができた。『殿さま弥次喜多 捕物道中』(59)↓
http://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0b1d89f54af1489fd86b36d6bef2fc0e
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