田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『シャイニング』

2019-11-01 12:58:17 | 映画いろいろ
『シャイニング』(80)(1980.12.23.丸の内ピカデリー)

  

 ロッキー山上にあるオーバールック・ホテル。小説家志望のジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は、雪深く冬期には閉鎖されるこのホテルの管理人として、妻のウェンディ(シェリー・デュバル)と息子のダニーと共に住み込むことになる。ところがホテルが持つ“怪異”によって、ジャックは徐々に精神を蝕まれていく。
 
 冒頭の、不気味な音楽が流れる中、山間を走る車をカメラが空中からずっと追っていくシーンから、何とも落ち着かない、おかしな気分にさせられる。その後は、まさに緊張の連続だ。
 
 最初はニコルソン演じるジャックの深層心理や自己嫌悪、孤独感やコンプレックス、そして妻子への不満からくるただの妄想なのかと思っていたが、どうやら悪霊のしわざらしいということが段々と分かってくる。
 
 そして、いかにもキューブリックらしい、疲労を感じさせるようなドラマが展開していく。ニコルソンがぞっとするように表情を変えて、段々と気が違っていくさまを、すさまじい演技で見せる。
 
 また、外の迷路を歩く母子。一転、ホテルの中の迷路のミニチュアを2人が歩いていて、夫がそれを凝視しているシーン。あるいはタイプライターで「仕事ばかりしていて遊ばない子は気が狂う」と打たれた紙が延々と重なっているシーンなどに象徴されるように、一体次はどうなるのかという怖さが全編に流れている。
 
 ただ、この映画は、キューブリックにしては珍しく、われわれに身近な題材だったとも言える。つまり、超現実的な出来事の中に、父母子、三者三葉の心の悩みやいら立ち、不満といったものを描ているから、余計に怖さを感じるのである。
 
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『ドクター・スリープ』

2019-11-01 12:19:05 | 新作映画を見てみた
 
 最近では、スピルバーグの『レディ・プレイヤー1』(18)にも登場した伝説のホラー映画の続編。スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』(80)の40年後をマイク・フラナガン監督が描く。
 
 惨劇から生き残ったダニー(ユアン・マクレガー)は、父親から殺されかけたトラウマと、繰り返し見る悪夢を抱えながら、孤独な日々を送っていた。そんな彼の前に、特別な力(シャイニング)を持つ少女が現れる。謎の事件に巻き込まれたダニーは、少女と共に惨劇の場となった“あのホテル”にたどり着く。
 
 前作が残した謎を解く、という意味では、キューブリックの『2001年宇宙の旅』(68)からピーター・ハイアムズの『2010年』(84)、あるいはリドリー・スコットの『ブレードランナー』(82)からドゥニ・ヴィルヌーヴの『ブレードランナー2049』然りの、中途半端感は否めないが、決して不出来ではない。前作よりも、生と死の狭間、怨念、といったテーマは明確に表現されていた。特に、悪女役のレベッカ・ファーガソンが妖しい魅力で存在感を示している。
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