筆者は東宝(PCL)のプロデューサーで、戦前のエノケン(榎本健一)のオペレッタ映画や、戦後の『ゴジラ』(54)の製作に大きく寄与したことでも知られている。
本書は、プロデューサーの視点から見た「ハリウッドを中心としたアメリカ映画産業の変遷」に始まり、D・W・グリフィス、セシル・B・デミル、ルイス・B・メイヤー、チャールズ・チャップリンが個別に語られている。
これほど人間味にあふれ、同情的なグリフィスとデミルの評伝は初めて読んだし、メイヤーを語りながら、そこにアービング・サルバーグ、デビッド・O・セルズニック、ドア・シャーリーを絡ませる人間関係の妙の描き方も秀逸。製作者と演技者との間で葛藤するチャップリンという視点も新鮮だった。
今から55年も前の本だが、教えられることも多い。何より文章が平易でとても読みやすい。この人の書いたものをもっと読みたいと思わされた。