田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『天切り松 闇がたり 5 ライムライト』(浅田次郎)

2020-03-08 20:05:49 | ブックレビュー

 ブックオフで見付けた短編集の中の一編「ライムライト」を読む。

 1932(昭和7)年、喜劇王チャップリンの来日に際して、軍部による暗殺が計画された。彼の命を救うため、義賊・安吉一家が動き出す。五・一五事件とチャップリン来日を背景に、いかにも浅田次郎らしい、強引な泣かせ話を作り上げているのだが、作為の跡が見え過ぎて鼻につく。

 チャップリンと五・一五事件については、『チャップリンを撃て』(日下圭介)と『5月十五日のチャップリン』(川田武)が、推理小説の形を借りて詳細に描いている。

『淀川長治の証言 チャップリンのすべて』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c1b90f2a7d3da72c38d9332f11b50328

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『野獣死すべし』

2020-03-08 13:36:22 | 映画いろいろ

『野獣死すべし』(80)(1989.11.)

 優作への追悼として、久しぶりに、製作・黒澤満、監督・村川透、脚本・丸山昇一、撮影・仙元誠三、主演・松田優作の、この映画を見直してみた。

 優作の演技派への転身は『家族ゲーム』(83)からだとよく言われるが、自分としては、すでにこの映画から彼の模索が始まっていたと思っていた。今回見直してみて、やはりこの映画が彼にとってのターニングポイントだったことを、改めて確認した。

 カメラマンとして戦場を体験したことを発端にして狂気に走る異常さ、虚空を見つめるような焦点の定まらない視線などの表現は、すさまじいばかりだ。

 また、この映画は、「遊戯シリーズ」から始まった村川透との最後の顔合わせとなったことも考え合わせると、俺たちを酔わせたアクション俳優としての優作も、この映画が最後になった気がする。

 冒頭の、青木義郎扮する刑事の拳銃を奪う雨中のシーン、銀行強盗先で小林麻美を撃つスローモーション、刑事役の室田日出男との列車内でのロシアン・ルーレット、日比谷公会堂での謎のラストシーンなど、印象に残るシーンも多い。たかしまあきひこ作曲、岡野等と荒川バンドが演奏するテーマ曲も忘れ難い。

 そういえば、優作の最後の仕事となったフローレンス・ジョイナー主演のテレビドラマの監督は村川だった。何でこんなドラマに優作が…と思ったものだが、今思うと、自らの死期を予期していたであろう優作が、長年コンビを組んだ村川に別れを言うつもりで出たのかもしれないという気がした。

 

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