「KyodoWeekly」9月27日号から「映画の森」2021年9月の映画」共同通信のニュースサイトに転載。
https://www.kyodo.co.jp/national-culture/2021-12-01_3652094/
「KyodoWeekly」9月27日号から「映画の森」2021年9月の映画」共同通信のニュースサイトに転載。
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ラインアップは
お正月映画BIG3!
『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
『マトリックス レザレクションズ』
『キングスマン ファースト・エージェント』
キーポイントは音楽
『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』
『ラストナイト・イン・ソーホー』
アメリカ映画の底力を見ろ!
『ドント・ルック・アップ』
『ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』
『素晴らしき日曜日』(47)(1982.1.25.並木座 併映は『天国と地獄』)
今から35年前、終戦直後に作られた映画である。故に映像的には古くさく、セットの貧弱さも目立つ。しかるに、この古ぼけた小さな映画に思いのほか感動させられた。もちろん、崇拝する黒澤明の映画なのだから、意外ではないのだが…。ところが、併映された『天国と地獄』(63)と一緒に見たことで、図らずも、黒澤明の変化について気づかされてしまった。
貧しい恋人たちの1日を描いた『素晴らしき日曜日』の黒澤は貧しい者や弱者に対して限りなく優しいまなざしを向けて描いている。ところが『天国と地獄』では強者の目で映画を作っている。この映画の弱者である運転手の青木(佐田豊)や犯人の竹内(山崎努)の姿は情なくもおぞましい。逆に、主人公の権藤(三船敏郎)や警部の戸倉(仲代達矢)といった強者はひたすらかっこよく、正義の人として描いているのだ。
確かに映画としての面白さや映像的な魅力、壮大なテーマという点から見れば『天国と地獄』の方が数段上であることは明らかだ。これだけの映画を作った黒澤の力量には恐れ入るばかりである。けれども、『素晴らしき日曜日』から感じた温かさを『天国と地獄』から感じることはできなかった。若き日に作ったものと、巨匠となって作ったものとではこんなにも違ってしまうものなのか…。
『素晴らしき日曜日』の中で中北千枝子のヒロインが観客に向って「私たちのような貧しい恋人たちが夢を持てるようにしてください」と訴え掛ける。
終戦直後のゼロからの再出発は、逆に夢を持ち得た時代だったのかもしれない。だが、世の中が安定すれば、『天国と地獄』のような貧富の差が生まれ、夢は持ちにくくなる。黒澤が35年前に訴え掛けたものはもはや遠くにあるのだ。
【今の一言】この文を書いた頃は、『天国と地獄』や『赤ひげ』(65)に対して批判的だった『黒澤明の世界』(佐藤忠男)に感化されていたところがある。若気の至りなり。
『天国と地獄』『黒澤明の世界』(佐藤忠男)『黒澤明の映画』(ドナルド・リチー)
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/288cc39acc9763ba35cc3522e7530541