今回のお題は、クリント・イーストウッド監督・主演の『ブロンコ・ビリー』(80)(1985.1.13.日曜洋画劇場)
旅回りの一座「ワイルド・ウェスト・ショー」は、元は靴のセールスマンだが、早撃ちと馬の曲乗りを得意とするブロンコ・ビリー(イーストウッド)を座長にして全米各地を巡業していた。
メンバーは、黒人の無免許医で司会担当のドク(スキャットマン・クローザース)、元銀行員で左腕が義手のレフティ(ビル・マッキニー)、インディアンでヘビ使いのビッグ・イーグル(ダン・バディス)と妻のランニング・ウォーター(シエラ・ペシャー)、兵役を拒否した脱走兵で縄使いのレオ(サム・ボトムス)。皆、文句を言いながらもビリーを信頼し、慕っていた。
そこに、遺産相続のために仕方なく結婚したアーリントン(ジェフリー・ルイス)に財布を盗まれて一文無しになったアントワネット(ソンドラ・ロック)が転がり込んできて、騒動が起きる。
初見時は、イーストウッドが愛人のロックを使って撮った公私混同映画のような感じがして、あまりいいイメージがなかったのだが、年を経て見直すと、ハンディを抱えた者たちの共同体としての姿や連帯感が描かれた映画として楽しく見ることができた。
じゃじゃ馬でわがままなお嬢さまの変化は、フランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』(34)をほうふつとさせるし、ラストのカーテンコールもキャプラ的。西部劇と現代劇を融合させた演出も面白い。
また、『荒野のストレンジャー』(73)からのルイスに、『アウトロー』(76)仲間のマッキニーとボトムズ、そしてジョン・フォード一家のハンク・ワーデンらが登場することで、脇役を大事にするイーストウッドの姿勢もうかがえた。
イーストウッドは、この映画を「自分のキャリアの中で最も魅力的な作品の一つ」と語っているが、興行的には失敗し、ロックは、ゴールデンラズベリー賞最低女優賞の初代受賞者となった。
ところで、70年代当時のイーストウッドは、同時代のスター、スティーブ・マックィーンやポール・ニューマン、ロバート・レッドフォードらに比べると、いい意味で、軟派で野卑でチンピラ的なイメージがあった。その意味では、この映画は、当時の彼の持ち味が生かされた映画だと言ってもいいだろう。
例えば、ニューマンが、元祖「ワイルド・ウエスト・ショー」のバファロー・ビル・コディを皮肉たっぷりに演じた『ビッグ・アメリカン』(76)や、レッドフォードが、これも皮肉交じりに元ロデオスターを演じた『出逢い』=「エレクトリック・ホースマン」(79)を考えると、両者の個性や、西部劇への思いの違いがよく分かる。
そんなイーストウッドが一人生き残り、今や渋い名優兼名匠とされているのだから、人生は分からない。