『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021.12.23.TOHOシネマズ日比谷.完成披露試写)
見る前は、あの名作をスピルバーグがどう料理したのかという興味と、果たしてリメークする必要があったのかという疑問が相半ばして、妙に落ち着かなかった。
ところが、20世紀フォックスのファンファーレに続いて、おなじみのプロローグが流れ始めると、いよいよ始まるぞという気分になって、これはこれとして、前作(61年版と称するようだ)とは別物として楽しもうという気になった。
そして、音楽の入れ方、振り付け、色遣い、カメラワークなどにさまざまな工夫が見られ、61年版とは違ったものにしようというスタッフ、キャストの気概が伝わってきた。
今回の主な配役は、トニー(アンセル・エルゴート)、マリア(レイチェル・ゼグラー)、ベルナルド(デビッド・アルバレス)、リフ(マイク・ファイスト)、アニータ(アリアナ・デボーズ)、チノ(ジョシュ・アンドレス)…。それほど有名ではない彼らを起用することによって、移民の問題がより鮮明に浮かび上がるところがある。
61年版のトニー(リチャード・ベイマー)とマリア(ナタリー・ウッド)の歌は吹き替えだったが、今回は恐らくほとんど吹き替えなしで、本人が歌っているのではないかと思われる。
『ベイビー・ドライバー』(17)公開の際に、エルゴートにインタビューしたが、「始めはダンサーとして活動していた」と語っていたので、ついにそれが生かされた大役をものにしたと思い、他人事ながら「よかったね」と一声掛けたい気分になった。
トニーが働くドラッグストアの店主は、61年版では中年男性のドク(ネッド・グラス)だったが、今回は白人と結婚したプエルトリコ出身の女性に変えている。これを61年版のアニータ役のリタ・モレノが演じているのが見どころの一つで、彼女と今回のアニータ役のデボーズが絡むところは、ほろりとさせられるが、全体としては、いささか彼女が目立ち過ぎるところがあると感じた。
何にせよ、レナード・バーンスタインの音楽の素晴らしさを再確認させられた思いがする。今回は特に「アメリカ」と「マンボ」、そして「マリア」から「トゥナイト」への流れがよかったが、決闘前のシーンで、ジェット団、シャーク団、アニータ、トニー、マリアの感情が交錯する五重奏の「トゥナイト」と「クール」は、残念ながら今一つだった。
さて、“映画クレイジー”スピルバーグとしては、単純に一度はミュージカルを撮ってみたかったということもあったのだろう。
ただ、『レディ・プレイヤー1』(18)の公開時にインタビューした際、「今は人が人を信用しなくなっている。そして今のアメリカは思想的にも半分に分かれ、信頼や信用がなくなってきている。それが怖いし、このままではいけないと思う」と語っていたから、この題材なら、そうした問題も入れ込めると考えたところもあったのではないか。
終映後、これはこれで決して悪い出来ではないのだが、何かもやもやしたものが残ったのは否めない。61年版を見ていないという若者と話したが、まっさらな気持ちで見られるという意味では、その方が幸せなのではないかと思ったし、それ故に、手あかの付いた自分たちとは違い、1本の映画として正当な評価が下せるのではないかとも思った。
【インタビュー】『ベイビー・ドライバー』アンセル・エルゴート
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0b9f5eafe953a153033b33693b34ca2d
【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0252d427482eb27bb9e501c5b7b8acce
『ウエスト・サイド物語』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/cc16d5603be54b5a22e6e792b79285c3
『ウエスト・サイド物語』エトセトラ
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/6326256a3ccdd4e6e95d36b04eb1ac58