『岸辺の旅』(15)
3年前に失踪した夫の優介(浅野忠信)が突然帰宅し、妻の瑞希(深津絵里)に「俺、死んだよ」と告げる。そして「一緒に来ないか、きれいな場所があるんだ」という優介の言葉に従って瑞希は一緒に旅に出る。それは優介が失踪からの3年間に世話になった人々のもとを訪ねていく旅だった。
湯本香樹実の同名小説を黒沢清監督が映画化。生者と死者が同じ空間に存在する、ファンタジーともホラーともつかない不思議なロードムービー。
最初に出会う小松政夫演じる“死者”とのエピソードはなかなかよかったが、その後がいけない。いい話にしたいのか不気味にしたいのかがはっきり伝わってこないし、話の落ちも中途半端だ。フランスとの合作だからフランス向きにしたのか。本人はダグラス・サークを意識したらしい。
何度か途中で見るのをやめようかとも思ったが、深津絵里の魅力に負けて、何となく最後まで見てしまった。実際は50近いのに「カムカムエヴリバディ」では見事に10代を演じている彼女は、ある意味怪優だ。
この映画は、カンヌ映画祭の「ある視点」部門で監督賞を受賞し、『スパイの妻』は、ベネチア映画祭で銀獅子(最優秀監督賞)を受賞した。黒沢監督の映画はヨーロッパで受けがいいようだが、総じて中途半端な印象とフランスかぶれを感じさせられて、どうにも性に合わない。
『スパイの妻』
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『散歩する侵略者』
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『ダゲレオタイプの女』
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