『東京名画座グラフィティ』田沢竜次(平凡社新書刊)
(2006.10.11.)
筆者は1953年生まれなので7歳ほど年上。しかも、我がテリトリーだった城南地区(品川、大田、目黒)の名画座についてはあまり触れられていないから手放しで懐かしめなかったのが少々残念ではあった。
ただ、元々映画への思い入れとは実にパーソナルなもの。しかも、今のようにビデオもDVDもなかった時代の映画体験は、年齢や地域差、あるいは見た映画館によっても大きく異なるわけで、そこがまた個性的で面白かったともいえるのだ。
実際、自分がこういうものを書いたら、やはり70年代から80年代にかけての城南地区中心のものになるだろうし…。東京は自分の周囲で大抵のことは済んでしまうから、ほかの地域に関しては結構無関心だったり、疎いところがあるのだ。
『大魔神の精神史』(角川新書)『モスラの精神史』(講談社新書)小野俊太郎
(2010.10.27.)
どちらも読みながら、1本の映画をここまで掘り下げるかと驚く。引用の巧みさとこじ付け、粘着力、こだわりに恐れ入る。
『日本映画〔監督・俳優〕論』黒澤明、神代辰巳、そして多くの名監督・名優たちの素顔 萩原健一(ワニブックス新書)
(2010.10.27.)
ショーケンいわくの「リミッターを超える」という一言が印象に残る。
ショーケンには一度だけ会ったことがある。彼が『日本映画〔監督・俳優〕論』という本を出した時に、出版記念会見の模様を、取材、撮影し、記事にしたのだが、かつての憧れの人を目の前にして、仕事とはいえドキドキした覚えがある。(2010.10.18.)
『証言 日中映画人交流』劉文兵(集英社新書)
(2011.5.20.)
高倉健、佐藤純彌、栗原小巻、山田洋次らから、日中の映画交流や中国への思いを聞き出した好著。寡黙なイメージが定着している健さんが、結構本音でしゃべっている部分が印象に残る。巻末の木下惠介の晩年に関する論文も興味深く読んだ。