『サバカン/SABAKAN』(2022.6.9.オンライン試写)
1986年、夏。斉藤由貴とキン肉マン消しゴムが大好きな小学5年生の久田(番家一路)は、いつもけんかばかりしているが、実は愛情深い両親(竹原ピストル、尾野真千子)と弟と一緒に暮らしている。
ある日、久田は、家が貧しく同級生からも避けられている竹本(原田琥之佑)から、イルカを見るために近くの島に行こうと誘われる。途中、不良に絡まれたり、自転車が壊れたり、溺れそうになったりと、さまざまなトラブルに遭いながらも、久田と竹本は友情を育んでいった。だが、夏の終わりに、別れを予感させる悲しい事件が起こる。
作家になった大人の久田を草なぎ剛が演じ、彼の回想として描かれるため、同じく、作家になった主人公(リチャード・ドレイファス)が少年時代のひと夏の冒険を回想する『スタンド・バイ・ミー』(86)をほうふつとさせるところがある。タイトルの『サバカン/SABAKAN』にも、切ない理由がある。
もちろん、この映画の挿入曲は、「スタンド・バイ・ミー」(ベン・E・キング)ではなく、「自転車に乗って」(西岡恭蔵)と「酒と泪と男と女」(河島英五)だったが…。それにしても、年を取るとこういう過去への思慕を描いた映画はことさら心に染みると感じた。
ドラマ「半沢直樹」など、テレビや舞台の脚本・演出を手掛けてきた金沢知樹が映画初監督。萩森淳と共同でオリジナル脚本を執筆した。