『アルピニスト』
断崖絶壁に命綱なしで挑む、カナダの若き天才アルピニスト、マーク・アンドレ・ルクレールに密着したドキュメンタリー映画。
ルクレールは、世界有数の岩壁や氷壁を、単独で命綱も付けずに登る、「フリーソロ」というクライミングスタイルを貫いている。
携帯電話は持たず、SNSにも背を向け、名声を求めない彼の知名度は低いが、登頂不可能とされていた数々の難所に挑み、新たな記録を次々と打ち立てていく。
そんな知られざる天才に、これまでクライミングを題材にしたドキュメンタリー作品を数多く手掛けてきたピーター・モーティマー監督とニック・ローゼン監督が密着。雄大な自然を背景に、体力と精神力の極限に挑むルクレールの姿を、臨場感あふれる映像で映し出す。
ほとんど垂直に見える絶壁を、苦もなく登っていくルクレールの姿は、まさに「スパイダーマン!」と呼びたくなるような至芸だが、言い換えれば狂気の沙汰でもある。
一般の社会には適合できず、クライミングをすることで自らの存在を証明する行為には、植村直己らの姿が重なるところもあると感じた。