田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

世界サブカルチャー史 欲望の系譜 「アメリカ 幻想の70s」

2022-06-25 19:43:18 | 映画いろいろ

 映画を中心に、流行、社会風俗、サブカルチャーなどから時代の欲望を読み解くドキュメンタリーシリーズの第3回は、いよいよリアルタイムの70年代。この時代は後に「空白の70年代」などと呼ばれたが、実は現代アメリカの社会構造を規定している諸要素が生まれた時代でもあった。

 ウォーターゲート事件、オイルショック、ドル・ショックによる政治不信、性差、格差、人種などの諸問題、ノスタルジー、超常現象、オカルト、ファンタジーなどによる現実逃避…。

 登場する主な映画は、
ジェネレーションギャップ、保守と革新『イージー・ライダー』(69)「奥さまは魔女」(64~72)
コッポラとルーカス『ゴッドファーザー』(72)『アメリカン・グラフィティ』(73)『スター・ウォーズ』(77)『地獄の黙示録』(79)
スピルバーグ『ジョーズ』(75)『未知との遭遇』(77)
ベトナム戦争の傷『タクシードライバー』(76)『ディア・ハンター』(78)
アメリカン・ドリームの光と影『ロッキー』(76)『サタデー・ナイト・フィーバー』(77)
ウーマン・リブ、離婚『クレーマー、クレーマー』(79)

世界サブカルチャー史 欲望の系譜 「アメリカ 闘争の60s」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8727c9dbc745bdb784391664e57fca7d

世界サブカルチャー史 欲望の系譜「アメリカ 理想の50s」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/c44e2f0a255d590793cad4e3acf74415

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『ブラック・フォン』

2022-06-25 11:43:54 | 新作映画を見てみた

『ブラック・フォン』(2022.6.24.東宝東和試写室)

 『ゲット・アウト』(17)『透明人間』(20)など、スリラーの話題作を送り出しているジェイソン・ブラムが製作し、『ドクター・ストレンジ』(16)のスコット・デリクソンが監督したサイコスリラー。原作はジョー・ヒルの『20世紀の幽霊たち』所収の短編「黒電話」

 1978年、米コロラド州デンバー北部のとある町で、子どもの連続失踪事件が起きていた。そんな中、気の弱い少年フィニー(メイソン・テムズ)は、学校の帰り道に、マジシャンだという男(イーサン・ホーク)に「手品を見せてあげる」と声を掛けられ、そのまま誘拐されてしまう。

 気が付くとフィニーは地下室に閉じ込められていて、そこには鍵のかかった扉と鉄格子のある窓、そして断線した黒電話があった。ところが、断線しているはずの黒電話のベルが突然鳴り響く。一方、行方不明になった兄フィニーを捜す妹のグウェン(マデリーン・マックグロー)は、不思議な夢を見る。

 陰湿ないじめ、暴力、誘拐…。70年代後半のアメリカの郊外の暗部を再現。『悪魔のいけにえ』(74)『燃えよドラゴン』(73)が象徴的な映画として語られるシーンもある。

 撮影監督のブレット・ユーキービッチは、70年代当時の映画のライティングを参考にし、アナモフィックレンズ(ワイドスクリーンを撮影・再生するための特殊なレンズ)を使用したのだという。

 グラバーと呼ばれる謎の男に殺された少年たちの亡霊が、断線した黒電話を介してフィニーに脱出へのアドバイスを送るというアイデアが面白い。大人たちが全く役に立たず、兄妹と亡霊が頑張る、ホラーの中での成長物語という側面もある。フィニーがピッチャーをやっている冒頭の野球の描写が、腕力という点でラストで回収される。いずれにせよ、原作の短編をよくここまで映画にしたと思った。

 フィニーがテレビで見た映画のことが気になったので調べてみたら、ウィリアム・キャッスルの『ティングラー 背すじに潜む恐怖』(日本未公開・59)だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする