田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「脚本家 黒澤明」(国立映画アーカイブ)

2022-10-18 22:59:28 | 雄二旅日記

 京橋の国立映画アーカイブで開催中の「脚本家 黒澤明」を見た。

 黒澤が影響を受け、映画化もした作家には、ドストエフスキー(『白痴』51)、シェークスピア(『蜘蛛巣城』57)、山本周五郎(『椿三十郎』62『赤ひげ』65『どですかでん』70)らがいるが、彼らに加えて、映画化はしていないがバルザックの影響が大きいことに触れていた。

 『隠し砦の三悪人』(58)『七人の侍』(54)を例にして、菊島隆三、小国英雄、橋本忍、そして『デルス・ウザーラ』(75)『乱』(85)の井手雅人との“共同脚本”の執筆の様子を生原稿などで再現しているコーナーには興味深いものがあった。

 谷口千吉監督の『銀嶺の果て』(47)など、他の監督たちに脚本を提供した作品を見ると、改めて監督としての黒澤明のすごさを知らされる思いがした。

 また、エドガー・アラン・ポーの『赤死病の仮面』の映画化を試みた『赤き(黒き)死の仮面』はぜひ見てみたかったと思った。

 昔、『全集・黒澤明』(岩波書店)というシナリオ集を買い集めて、6巻全て持っていると思っていたら、その後7巻が出て、そこには『黒き死の仮面』も収録されているという。不覚。


 ところで、常設展示に、1991年に広島県の民家の蔵から可燃性の35㎜フィルムが発見された伊藤大輔監督、大河内傳次郎主演の『忠治旅日記』(27)を映すコーナーがあり、思わず見入ってしまった。

国立近代美術館フィルムセンター→国立映画アーカイブの10年
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/5ceb3483aa8859baad9430f066fd6770


 帰りに東京駅前で、鉄道の父・井上勝像をパチリ。これは2代目だという。ちゃんと東京駅の方を向いているんだなあ。ちなみに、井上の墓は、死後もなお鉄道を見守っていたいという本人の意向に沿って、東海道線と山手線に挟まれた北品川の東海寺大山墓地にある。

 東京駅構内のステーションギャラリーでは、「鉄道と美術の150年」を開催中。これも見に行かねば。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「BSシネマ」『突破口!』

2022-10-18 06:58:38 | ブラウン管の映画館

『突破口!』(73)(1976.10.27.水曜ロードショー)

 仲間とともにニューメキシコの小さな町の銀行に押し入ったチャーリー(ウォルター・マッソー)は、まんまと大金をせしめて逃走する。しかし、それがマフィアの隠し金だったことから、チャーリーは殺し屋に命を狙われることに…。

 ドン・シーゲル監督が描くスリリングな犯罪アクション映画。コメディ俳優のイメージが強かったマッソーが、この映画を皮切りに、『マシンガン・パニック』(73)『サブウェイ・パニック』(74)とシリアス路線を開拓した。

 マッソーのほか、アンディ・ロビンソン(チャーリーの相棒)、ジョン・バーノン(組織のボス)、ジョー・ドン・ベイカー(組織の殺し屋)、ウィリアム・シャラート(保安官)、ノーマン・フェル、といった“70年代脇役天国”の男たちに、ジャクリーン・スコット(チャーリーの妻)、フェリシア・ファー(ボスの情婦)、シェリー・ノース(街の写真屋)という渋い女優たちがからむのも楽しい。

 当時、こういう脇役たちのことを調べるには、『傍役グラフィティ』と姉妹編の『女優グラフィティ』が大いに役立った。映画を見終わった後、この本で、彼ら、彼女らのことを確かめるのが楽しみだった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする