田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

「古畑任三郎」(日本映画専門チャンネル)

2022-10-23 11:17:19 | テレビ

 日本映画専門チャンネルでやっていた「古畑任三郎」第一シリーズ(94)を見始めたら、以前見ていたのに、途中でやめられなくなった。今さらながら面白い。

 田村正和は、初めは古畑を演じることに逡巡していたようだが、これが代表作の一つになったのだから、今泉役の西村雅彦も含めて、改めて、俳優業は水物だと思わされたし、俳優たちが三谷脚本のドラマに出たがるのも分かる気がした。

 このドラマシリーズは、「刑事コロンボ」から想を得ている。だから、「このシリーズは、最初に犯人や犯行の経緯をばらしてしまう、いわゆる倒叙法を用いているから、後はコロンボがどう犯人を追い詰めていくかが見どころとなる。しかも、犯人は必ず最後にはコロンボとの腹の探り合いに敗れる。だから、どんなに巧みに完全犯罪を試みても、結局は「殺人は割に合わない」というところに落着する」という、以前書いた文の「コロンボ」の部分を「古畑」に代えても成り立つ。

 そして、これも「コロンボ」同様に、犯人役にそれなりの俳優を配して、古畑=田村との丁々発止のやり取りを見せる。「コロンボ」の影を感じさせながら、ラストの退場シーンなどに、舞台劇を思わせるあたりが三谷幸喜の真骨頂だ。

 今回のラインアップは、
「動く死体」犯人は歌舞伎俳優(堺正章)
「笑える死体」精神科医(古手川祐子)
「殺しのファックス」推理作家(笑福亭鶴瓶)
「汚れた英雄」将棋棋士(坂東八十助)
「ピアノ・レッスン」ピアニスト(木の実ナナ)
「殺人リハーサル」時代劇俳優(小林稔侍)
「殺人特急」外科医(鹿賀丈史)
「殺人公開放送」超能力者(石黒賢)
「矛盾だらけの死体」政治家秘書(小堺一機)
「さよなら、DJ」ラジオディスクジョッキー(桃井かおり)
「最後のあいさつ」警視(菅原文太)


「古畑任三郎ファイナル・フェアな殺人者」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/8e2be5c38d6929c58e817cec74829f87

「刑事コロンボ 殺人処方箋」「構想の死角」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/f90b6e6acb4d17511e098cb619965c43

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ビデオ通話で西部劇談議『フォート・ブロックの決斗』

2022-10-23 10:19:12 | 駅馬車の会 西部劇Zoomミーティング

 今回のお題は、先日NHK BSで放送された『フォート・ブロックの決斗』(58)。初めて見た。

 貧乏から抜け出すため、故郷を離れ、雇われカウボーイとしてフォート・ブロックの街にやって来きたラット(ドン・マレー)は、大牧場の経営を夢みる野心家だった。

 地元の顔役イエフ(リチャード・イーガン)の持ち馬との競走で勝利したラットは、祝賀会で知り合ったキャリー(リー・レミック)と親しくなる。

 やがてラットは、キャリーに借りた金を元手に牧場を作って成功し、銀行家(アルバート・デッカー)の姪(パトリシア・オーエンス)と結婚。上院議員選挙に推されるまでになるが…。

 原作は『シェーン』(53)の脚本を書いたA・B・ガスリー・Jr。監督はジャンルを問わない映画を撮ったリチャード・フライシャー。主題歌をランディ・スパークスが歌っている。邦題に偽りあり。「決斗」など出てこない。原題は「These Thousand Hills」だ。

 上昇志向が強いニックに『バス停留所』(56)のマレー、カウボーイ時代の相棒にスチュアート・ホイットマン、娼婦の純情を示すキャリーにレミック、典型的なお嬢さまのオーエンス、そして不敵な笑顔が印象的な敵役のイーガン、他に、カウボーイ仲間のロイヤル・ダーノと、渋い面々だが、配役がなかなか面白い。

 「昔は女が悩みの種だったが、今は女がいないのが悩みだ」など、面白いセリフもある。

 ただ、カウボーイ時代はまだいいのだが、成り上がっていくラットを演じるには、マレーは役不足という感じがした(ちょっとジム・キャリーに似ている)。

 今回のトークでは、キャトルドライブのシーンだけを見ると大作っぽいのだが、これはどうやら『たくましき男たち』(55)から頂いたものらしいということを知らされ、ラットの生き方や心情の描き方に無理がある、共感できないという声も上がった。

 多分、原作はもっと人物描写を深く描いていると思われるが、それをそのまま映画にすると、最近の映画のように複雑で長くなり、とても96分では収まらない。だから、これはこれでいいのかもしれないとも思った。

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