田中雄二の「映画の王様」

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ノア・バームバック『イカとクジラ』

2022-10-30 10:26:51 | BIG ISSUE ビッグイシュー

『イカとクジラ』(05)(2006.8.18.聖路加ソニーピクチャーズ試写室)

 突然離婚した両親と彼らに振り回される息子たち…という4人家族をシニカルかつコミカルに描く。ウディ・アレンの線を狙ったスケッチドラマなのだが、ノア・バームバック監督の趣味や、独り善がりで思わせぶりな描写が多いため、登場人物の誰にも感情移入が出来ず、見ていてどうにも落ち着かない。親父役のジェフ・ダニエルズはこの役で“新境地開拓”なのだろうか。ウェス・アンダーソン絡みの映画はどうも苦手だ。


『ビッグイシュー日本版 第63号』(2006)


『ヤング・アダルト・ニューヨーク』
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/d79a4aa4f89c5dc2ae406393d233b5a8

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『ホワイト・ノイズ』

2022-10-30 10:05:57 | 新作映画を見てみた

『ホワイト・ノイズ』(2022.10.29.よみうりホール.東京国際映画祭)

 化学物質の流出事故に見舞われ、死を恐れる大学教授のジャック・グラドニー(アダム・ドライバー)が、妻バベット(グレタ・ガーウィグ)の秘密を知る。夫婦が“死”を身近に感じる環境下で、愛や幸福感といった漠然とした問題と向き合っていく。

 ドン・デリーロの同名小説を、『イカとクジラ』(05)『ヤング・アダルト・ニューヨーク』(14)のノア・バームバックの監督、脚本で映画化。

 人間には生まれたその時から、死への道を進み始めるという不条理がある。死への恐怖に取りつかれた夫婦の姿を、シュールに描いたブラックコメディー。

 全体的にはウディ・アレンやウェス・アンダーソンの諸作をほうふつとさせる。特に、夫婦がたどり着いた“楽観”に『ハンナとその姉妹』(86)のラストを思い出した。それにしてもドライバーはこういう映画にはぴったりの怪優だ。

 また、オープニングの騒々しい家族の日常風景の長回しはロバート・アルトマン風、事故後の家族の様子はスピルバーグの『未知との遭遇』(77)を思わせるところもある。

 東京国際映画祭の一環ということで、会場は外国人の観客も多く、彼らは頻繁に笑っていたが、正直なところ、何で笑っているのか分からないところもあった。こういう映画を見る場合は、言葉や生活習慣の違いが大きく作用すると改めて感じさせられた。

 とはいえ、この映画はNetflix製作の配信もので決して大作ではないのだが、こうして劇場で見ると、やはり「映画を見た」という気分にはなる。

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